第80話 大森林の入口
船着き場を離れた馬車は、再び街道を走り始めた。
川辺特有の湿った空気は次第に薄れ、代わりに冷たい森の香りが鼻をくすぐる。
――霧の大森林シルヴェリオン地方。
街道自体は整備されているものの、石畳の隙間には苔が広がっていた。
両脇には太い幹の木々が並び、その合間には巡礼者のための小さな祠や、古びた道標が点在している。
御者台の後ろから、エリシアがセイへ声をかけた。
「……この辺りから、空気が変わってきましたね。大森林の縁に近づいている、ということでしょうか」
「うむ。霧の大森林シルヴェリオン地方――名に違わぬ場所じゃな」
セイはそう答え、軽く手綱を引いた。
「うぅ、なんだかゾクゾクするね……。ただ寒いだけじゃないっていうか」
「ここまで来れば、目的地もそう遠くない。ノキア村ギルドで受けた依頼、《消えた巡礼者の捜索》も、いよいよ本番じゃ」
「うん、そうだね……」
巡礼の途中で消息を絶った者たち。
彼らが向かった先は、霧の大森林の奥にある街――ベランド。
「ノキア村からは長い道のりだったけど、ここまで来ればもうひと踏ん張りだね!」
ミミが前のめりになって声を弾ませる。
「はい。ランベルクを越えれば、その先は大森林です。準備はランベルクで済ませておかないと」
リアナが荷物を確認しながら言った。
「でもでも、ベランドも大森林の中にある街なんでしょ? 巡礼者が多いなら、道もそれなりに整ってるんじゃないかなあ」
「……そうだと、いいのですけどね」
エリシアが静かに応じた。
やがて、木々の合間に石造りの建物が見えてくる。
森を背にするように築かれた街――ランベルクだ。
「見えてきたぞ……ランベルクじゃ」
街の入口を抜けると、森の気配はすぐに遠のいた。
代わって耳に届くのは、人々の話し声や商人の呼び声。
食べ物の香りも漂い、街は想像以上の賑わいを見せていた。
「思っていたより、賑わっていますね」
エリシアがわずかに表情を和らげる。
「よかったぁ……。もっとこう、霧だらけでシーンとしてるの想像してました」
リアナが胸を撫で下ろす。
「リアナちゃん、怖がってたの?」
「だ、だって! 森で人が消えてるんですよ!? ちょっとくらい怖いでしょ!」
「まあ、問題があるのはベランドのほうじゃろうしな。物流や人の行き来を考えれば、この街への影響はまだ少ないのじゃろう」
実際、通りで目につくのは冒険者や地元の住民ばかりだった。
白装束の巡礼者は、ほとんど見当たらない。
通り沿いの店先で、エリシアが店主へさりげなく尋ねた。
「最近、巡礼の方は少ないのですか?」
「ああ……そりゃあな」
店主は肩をすくめ、ため息混じりに続ける。
「噂が広まっちまってるんだよ。巡礼者が、森で消えたって話さ。信心深い人ほど、怖がって来なくなっちまってる」
「なるほどのう……状況は、想像以上に深刻なようじゃな」
セイは小さく呟き、店主に礼を言ってその場を離れた。
「まずは、宿を取らないとですね」
エリシアが言うと、ミミが大きく頷く。
「うん! ふかふかのベッドで、はやく横になりたいよ」
宿は街の中央にある、古いながらも手入れの行き届いた建物だった。
一行は部屋に荷物を置くと、そのまま一階の食堂へ向かう。
木製のテーブルに並べられたのは、焼いた肉と温かなスープ、黒パン。
派手さはないが、歩き続けた身体には十分すぎるご馳走だった。
「はあ……生き返る……」
ミミは椅子に腰を下ろすなり、湯気の立つスープを覗き込んで目を細める。
「こういうのが一番だよね。森の手前って感じ!」
「どういう感じなんですか、それ……」
リアナが苦笑する。
「えーっとね、冒険前のごはんって感じ! なんだかいいよね」
「はい。……こうして皆で一緒に食べるからこそ、おいしいって感じます」
「おっ、リアナちゃん、いいこと言うね! うんっ、わたしのお肉一枚あげちゃうよ!」
「なっ、ミミさん! からかわないでくださいっ」
ミミに茶化され、思った以上に恥ずかしかったのか、リアナは照れた様子で箸を取った。
ひと通り食べ進めたところで、エリシアがふと手を止める。
「……どうかしました?」
リアナが首を傾げる。
「あ、いえ。その……少し気になっていたことがありまして」
一度みんなの顔を見回してから、セイへ視線を向けた。
「あの……"最後のカケラ"のことなのですが」
落ち着いた調子で、そのまま続ける。
「ノキア村では、大精霊様でも察知できないほど遠くにある、というお話でしたよね。もしそれがベランドにあるのなら……ここまで来れば、さすがに察知できるのではないでしょうか?」
「ああ……そうじゃったな。部屋に戻ったら、一度呼び出してみるか」
もし本当に、この近くに“最後のカケラ”があるのなら――
それはきっと、この森で起きている異変とも無関係ではないはずだ。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】41
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。食事を終えて元気いっぱい
- 補足:船の旅も意外と楽しかったけど、森も結構好き
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。少し照れ気味。
- 補足:ミミに茶化されて照れるも、そういうのが意外と好きかもと自覚……
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。体力は万全
- 補足:最後のカケラが近づいてきたことで、次は自分の番であることに少し不安
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