第71話 元の世界
「五階層、そこには“墓室”がある。魔王四天王――バロルが眠る場所だ」
「やっぱり……魔王案件じゃないのよーっ!」
レオナードの言葉に、リアナのツッコミが広間へ響き渡る。
「もはや、ご都合というよりお決まりになってきてしまったのう……」
「いや、そんなお決まりいらないんだけどっ!」
半泣きで抗議するリアナの隣で、エリシアが「やっぱり勇者パワー……引きが違います」と感心したように頷いていた。
そんな反応をよそに、セイはレオナードへ視線を向ける。
「魔王四天王バロル……ということは、この前のネクロスの主じゃな」
レオナードが意外そうに眉を動かした。
「ネクロスを知っているのか?」
「ああ。この前、知り合いの村の墓地を荒らしておったからな。軽く懲らしめてやったわい」
レオナードは豪快に笑う。
「はっはっはっ……さすが勇者セイ。ネクロス程度では相手にもならなかったか」
「まあ、こちらには優秀な聖女もおるからの」
「セイ! あんまり手の内をペラペラ喋らないの!」
リアナに小声でたしなめられ、セイは「うぬ、すまんすまん」と頭を掻いた。
受け取った地図を広げると、自分たちの地図の記入済みエリアはほぼ一致していた。
目指すべきは、まだ白紙のままになっている二階層の未踏破区域だ。
レオナードも、三階層へ続く広間までは同行するらしい。
巨体が歩くたびに石畳が鈍く震え、周囲の空気まで重く揺れる。
その威圧感に、ミミは思わず肩を跳ねさせた。
「うわぁ……歩くだけで地面揺れるんだけど。ほんとラスボスって感じ!」
レオナードは少し申し訳なさそうに鼻を鳴らす。
「これでも抑えているつもりなのだがな」
――だが、というか、やはりというべきか。
どれだけ奥へ進んでも、魔物の姿は一向に現れなかった。
「……変ね」
リアナが警戒するように周囲を見回す。
「変ではなかろう。魔物どもも、レオナードの気配に怯えて出てこれんのじゃろう」
セイの言葉に、ミミが頬を膨らませて抗議する。
「レオンさんがいたら、魔物調査にならないよ!」
レオナードは困ったように笑った。
「これは悪いことをしたな。申し訳ないが、我が三階層に降りた後に調査をしてくれたまえ」
「そうだね。これじゃ全然調査にならないもん」
口を尖らせるミミに、リアナが慌てて割って入る。
「ミミさん、もう少し言い方を……!」
だが、レオナードは気にした様子もなく肩をすくめた。
「構わん。正直な子は嫌いではない」
やがて、巨大な広間の入り口が見えてくる。
そこでレオナードは足を止めた。
「では――勇者セイよ。また会おう」
そう告げたあと、一瞬だけ振り返る。
「ダルセナ様は、貴様との“約束”を心の支えにしている。……早く思い出してやることだ」
その一言を残し、レオナードの巨体は闇の奥へ消えていった。
遠ざかる蹄の音だけが、しばらく石壁に反響している。
姿が完全に見えなくなったあと、ミミがぽつりと呟いた。
「……やっぱり、このダンジョンってお墓なんだね」
「らしいの。まあ、ゲームでも王家の墓は大抵ダンジョンじゃしな」
セイが肩をすくめる。
「でもさぁ、ダルセナって人とセイが知り合いって、やっぱ意味わかんないよね」
ミミは腕を組み、うーんとうなった。
「約束って何? どういう関係? もしかして、昔助けたとか?」
「……さあな」
セイは苦笑して首を振る。
「ワシにもわからん。ただ――あやつが嘘を言っておるようには見えんかった」
「うーん……なんかモヤモヤするー」
ミミが頬を膨らませる。
その空気を変えるように、リアナがぱんと手を叩いた。
「ほ、ほら! せっかく地図もあるんだし、早く調査終わらせちゃおう?」
エリシアも穏やかに頷く。
「そうですね。答えはきっと、いずれ分かります。今は任務を優先しましょう」
その言葉に、一行は再び歩き始めた。
二階層の調査は順調だった。
レオナードから渡された地図は驚くほど正確で、通路の歪みや部屋の位置もほとんど誤差がない。
出現する魔物も少なく、脅威度は一階層と大差なかった。
おそらく、本当に危険なのは三階層以降なのだろう。
一通りの確認を終え、地図へ印を書き込み終わったところで、セイが短く告げる。
「……よし。今回の調査はここまでじゃな」
リアナが記録符を閉じながら顔を上げる。
「この地図、どうする?」
「ワシらが持っていても仕方ないからな。
未探索の部屋にあった宝箱から見つけた――そう言ってギルドへ渡せばよかろう」
「了解」
リアナが頷き、一行は来た道を戻り始めた。
先頭では、ミミとエリシアが楽しそうに話している。
声までは聞こえないが、弾む身振りと穏やかな笑みを見る限り、内容はなんとなく想像できた。
きっと依頼が終わったあとの食事の話か。
あるいは、次に泊まる宿の話だろう。
セイは少し後ろを歩きながら、その様子をぼんやり眺めていた。
そこへ、軽い足音とともにリアナが隣へ並ぶ。
少しの沈黙のあと、彼女はぽつりと口を開いた。
「ねえ、セイ。……もしもの話なんだけど」
リアナは視線を落とし、歩幅を少しだけ緩める。
「もし“元の世界に戻れる”ってなったら……セイは、どうする? 戻っちゃう……のかな」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】41(+1)
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(セイとダルセナの関係に興味津々)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。とりあえず元気いっぱい
- 補足:レオナードにも物怖じしない大胆さを見せる
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(元の世界へ戻れるとしたら?と精一杯の勇気を見せる)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。魔物調査で少しだけ疲労
- 補足:今回の依頼も魔王案件だったことに既視感しかない
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。魔物調査で少しだけ疲労
- 補足:リアナの揺れる心情を静かに察し、さりげなくフォローを入れる
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