第70話 勇者のチカラ
「……レオナード」
セイの低い声が、静まり返った広間に響く。
名を呼ばれた魔獣が、ゆっくりと振り返った。
「人間か……ここは、やけに人間の来客が多いな」
低く通る声。赤い瞳がわずかに光り、場の空気が重く沈む。
セイは剣の柄に手を添え、慎重に問う。
「おぬし……レオナードか?」
巨体の魔獣は、鼻で笑うように息を吐いた。
「そうだ。我は魔王四天王――ダルセナ様の右腕、レオナードだ」
その声が岩壁に反響する。
硬い蹄が石畳を打つたび、広間の空気がかすかに震えた。
レオナードは胸を張り、不敵に笑う。
「通称“レオン”とでも呼んでくれたまえ。……そのほうが馴染みやすいだろう?」
セイが目を細める。
「ではレオンよ、おぬしはなぜここにおる?」
「この墓標に少し用があってな」
レオナードは肩をすくめ、逆に問い返す。
「それより、貴様の名を聞こう」
視線がセイの背後――ミミとリアナへ向いた。
「……守護者がふたり」
セイは警戒を解かぬまま答える。
「ワシの名はセイじゃ。探索のために来ておる。争うつもりはない。
もし互いに目的が違うなら、通してもらえんかの?」
その一言に、レオナードの瞳が鋭く光る。
「――勇者セイ。まさか、このような場所で会えるとは」
その声が、広間の空気を凍らせた。
リアナは瞬時に剣を構え、ミミが息を呑む。
エリシアは胸の前で手を組み、祈りの姿勢を取った。
セイは一歩前に出る。
「……戦うしかないのか?」
「いやいや、何を言っている」
レオナードは豪快に笑い、両腕を広げた。
「ダルセナ様から言付かっているのだ。
もし道中でセイ様に会うようなことがあれば――その身に仕えろ、とな」
「はあ?」
セイが眉をひそめる。
「おぬし、魔王の配下ではないのか? なぜわしに仕える?」
「我が主はダルセナ様ただ一人。魔王などどうでもいい。
たとえ魔王に背く結果になろうと、ダルセナ様の命こそが我の正義だ」
その声には、確固たる信仰にも似た響きがあった。
セイはしばし黙し、やがて静かに息を吐く。
「……ダルセナのやつ、今回は助けられたわい」
レオナードはわずかに笑い、牙を見せる。
その笑みには、忠義と誇り、そしてどこか人間らしい温もりが滲んでいた。
「しかし――」
ゆっくりと視線を巡らせる。
「ダルセナ様の話では、守護者はひとりのはずだったが……増えたようだな」
「ああ。そうじゃ。で、おぬしらの探し物とは、こやつらのことか?」
「ふむ……他のやつらは魔王のためと“賢者のカケラ”を探しているが、我の探し物は違う」
「ほう。別の探し物とな?」
レオナードは一度口を閉ざし、やがて静かに続けた。
「ダルセナ様の命だ。我からは言えぬ……だが勇者セイになら、直接話してくださるだろう」
その名を聞き、ミミが目を輝かせる。
「ねぇ、ダルセナって――Dランク昇格試験のときの、すっごく綺麗で、すっごく怖いサキュバスの人だよね?」
リアナが頷く。
「そうです。あの時から私たちもすごく成長したはずなのに……配下のレオナードでさえ、前にして震えが止まりません」
エリシアが小さく息を吐く。
「今まで出会った他の四天王の眷属とは比べものになりませんね……正直、今すぐ逃げ出したいくらいです」
セイは三人の前に立つ。
「まあ、探し物についてはひとまずよい。他のことをもう少し聞かせてもらってもよいか?」
「いいだろう。我の知る範囲であれば、答えてやろう」
セイは一歩近づき、低く問う。
「なぜダルセナは、ワシのことを知っておる?
おぬしの言う“守護者”も、なぜか最初からワシを知っていた。どういうことじゃ?」
「なるほど……やはり、ダルセナ様の言葉は本当だったか」
レオナードは目を伏せる。
「勇者セイは――記憶を失っているらしいな」
「記憶を……? いや、ワシがこの世界に来たのは一年ほど前じゃぞ。
やつが封印された何百年も前に会っておるはずがなかろう」
「我は五百年前の戦いに加わっていなかったから、詳しくは知らん。
だが、ダルセナ様と勇者セイに深い縁があったのは確かだ」
「……だめじゃ、頭が混乱してきおる」
セイがこめかみを押さえる。
リアナが一歩近づき、そっと声をかけた。
「ねえ、セイ。今は無理に考えなくてもいいんじゃない?
レオナードも詳しくは知らないみたいだし、今度ダルセナに会った時に聞けばいいよ」
「……そうじゃの。今は整理できん。直接会って確かめるとしよう」
セイが頷くと、レオナードが続ける。
「それがよいだろう。その方がダルセナ様もお喜びになられる」
「うむ。そうしよう」
「あとひとつ。勇者セイよ、ダンジョンの探索が目的だと言っておったな」
「ああ、そうじゃ」
「この墓標は五階層構造になっている。――言っては悪いが、貴様らの力量では四階層までが限界だ。
それ以上進めば、命はないだろう」
「問題ない。今回の目的は二階層の地図作成と、魔物の脅威度・数の調査じゃ」
「なんだ、地図が欲しいのか?」
レオナードは軽く顎をしゃくる。
「なら、これを持っていけ」
「うおっ……これは五階層までの地図ではないか! 本当にいいのか?」
「ああ、そんなものはまた取りに行けばいいだけだ」
「取りに行くとは……どこへじゃ?」
「五階層だ」
レオナードの声が低く響く。
「そこには“墓室”がある。魔王四天王――バロルが眠る場所だ。
封印が解けたらしくてな。ダルセナ様から、様子を見てこいと命じられている」
リアナの眉がピクリと動く。
「やっぱり……魔王案件じゃないのよーっ!」
広間にリアナのツッコミがむなしく響いた。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】40
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(セイとダルセナの関係に興味津々)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。スライム戦で濡れた服も乾き、とりあえず元気はいっぱい
- 補足:レオナードの言う、セイの過去に興味が津々
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(元の世界へ戻れるとしたら?と精一杯の勇気を見せる)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。レオナードの威圧感で、じわりと疲労
- 補足:セイの過去を詮索させまいと必死。今回の依頼も魔王案件だったことに既視感しかない
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。レオナードの威圧感で、じわりと疲労
- 補足:自分も賢者のカケラを手にすると、こんなやつを相手にするのかとレオナード見ながら落胆
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