第66話 次なる目的地の途中
北へ向かう街道――ヴァルネッタへの途中。
穏やかな空気の中、馬車はゆっくりと山道へ入っていった。
空はすっかり昼の色に変わり、木々の影が流れるように揺れている。
木漏れ日が車輪の軋みに合わせて揺れ、心地よい揺れが眠気を誘った。
――だが、その静けさは怒声で破られた。
「止まれぇッ! 動くんじゃねえ!」
道の先から、粗末な革鎧を着た男たちが飛び出し、進路を塞いだ。
手にしているのは刃こぼれした剣。見るからにガラの悪い街道荒らし――盗賊だ。
「おおっ、定番イベント来たのう!」
セイが無駄に嬉しそうに身を乗り出す。
「嬉しそうに言わないの!」
リアナが呆れつつツッコミを入れ、腰の剣を抜いた。
「へっ、女もいやがる。こいつはいい値で売れそうだぜ」
盗賊の一人が下卑た笑みを浮かべる。
「しかもとびきりの上玉だ。おい、売り飛ばす前に少しばかり『お相手』してもらおうじゃねえか」
薄汚れた歯を見せて笑う男に、リアナの目がすっと細くなる。
「……そんなに相手をしてほしいの? いいわ、相手してあげる」
言い終わるより早く、リアナの足が地を蹴った。
一閃。鋭い金属音とともに、盗賊の剣が宙を舞う。
「ひ、ひぃっ!?」
「なんだこいつら……ただの旅人じゃねえぞ!」
盗賊たちが一歩、二歩と後ずさる。
「そうじゃ、ワシらは冒険者じゃ! おぬしらの相手ではないぞ!」
セイがふんぞり返って勝ち誇る。
「うるせぇっ! てめえら、まとめてやっちまえ! お頭ぁ、出番だ!」
叫びに応じて、茂みの奥から巨漢が姿を現した。
頭と呼ぶに相応しい体格。背丈は二メートル近く、片目に眼帯。肩には巨大な斧を担いでいる。
「へっ、女もガキもまとめて荷物だ。動くな、殺すぞ」
野太い声が森に響く。
「あら。動くなって言われると、逆に動きたくなるのよね」
リアナは笑みを崩さない。
「リアナ、ほどほどにな。やりすぎるなよ!」
「わかってるって!」
頭目が咆哮とともに斧を振り上げ、間合いを詰めて襲い掛かる。
木の葉がざわめき、地面を揺らす猛攻――
しかし、リアナの動きはそれを遥かに凌駕していた。
音もなく懐へ潜り込み、剣が閃く。
次の瞬間、頭目の動きが止まり、巨体が膝から崩れ落ちた。
「……っが……!」
砂煙を上げ、地面に突き刺さる大斧。
その光景に、残った子分たちは顔色を変え、蜘蛛の子を散らすように森の奥へ逃げ去っていった。
リアナは剣を軽く振り、冷ややかに問いかけた。
「――まだ続ける?」
「ま、待て! まいった、もう勘弁してくれ!」
血相を変えた頭目が両手を上げて必死に懇願する。
セイが歩み寄り、腰に手を当てて顔を覗き込んだ。
「おぬし……さっき気になることを言っておったな。子どもを攫ってはおるまいな?」
「ぎ、ぎくっ!」
その反応に、セイの目が細まる。
「『ぎくっ』と言葉で言うやつは初めて見たわい。じゃが、図星のようじゃな」
逃げ場を失った頭目は、観念したように肩を落とす。
「……解放する。ガキたちは返すから、見逃してくれ……」
「あたりまえじゃ! では、その子どもたちのところまで案内してもらおうか」
「……わ、わかった……こっちだ。案内する……」
頭目は青ざめた顔でうなずき、ふらつく足取りで歩き出す。
セイが軽く手を上げ、リアナたちが後に続いた。
◇
森の奥へ進むにつれ、空気がひんやりと湿っていく。
足元で枯れ枝がぱきりと音を立てた。
たどり着いたのは、大岩の影に隠されるように建てられた掘っ立て小屋だった。
扉は板きれで、鎖が掛けられていた。
「開けい」
セイの促しに、頭目は震える手で鍵を差し込み、鎖を外す。
扉がきしみを上げて開くと、その暗がりから、か細いすすり泣きが聞こえてきた。
「……ひどい」
リアナが駆け寄り、膝をつく。
中には、縄で縛られた三人の子どもたちが身を寄せ合っていた。
怯えた目がこちらを見上げる。
「もう大丈夫よ。怖い思いをさせてごめんね」
リアナはそっと手を伸ばし、縄をほどいていく。
ロープの跡が赤く残り、皮膚には血がにじんでいた。
そのとき、ミミが静かに手を差し出す。
指先から淡い光がこぼれ、子どもたちをやさしく包み込む。
「……《癒しの手》」
緑の光が傷口を包み、痛みや疲れを溶かしていく。
擦り傷が癒え、赤く腫れた跡がゆっくりと薄れていった。
「もう痛くないよ」
ミミが微笑むと、子どもたちはぽかんとしたあと、泣き笑いのようにうなずいた。
リアナはその様子を見届け、頭目へと視線を向ける。
「この子たちは……どこから連れてきたの?」
頭目は汗を滲ませ、しどろもどろに答えた。
「い、いや……お前らと同じく山の中で見つけたんだ。どこの子かなんて分からねぇ。
ただ、東の方――ヴァルネッタのほうから来たから、そこの子じゃねえかと……」
リアナがセイに目を向ける。
「セイ、どうする?」
「当然、ヴァルネッタへ連れて帰るとしよう。幸い、わしらの次の目的地でもあるしのう」
子どもたちはミミのそばで小さく手を握り合い、ようやく安心したように息をついた。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】39
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。体力ばっちり
- 補足:盗賊にとらえられた子供を、少し前の自分と重ねてしまっている。「絶対に家に連れて帰ってあげる」と心に決意
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。盗賊相手では特に疲労はないみたい
- 補足:ふつうの対人戦闘であれば負けない!そう思えるほどの自信が芽生えたらしい
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。体力ばっちり
- 補足:今回はほとんど出番がなかったけど、前回一番頑張ったからと言い聞かせている
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