第65話 迷える魂に安らぎを
戦いが終わり、墓地には元の静けさが戻っていた。
崩れ落ちた墓標と、横たわるたくさんの骸骨。戦闘の痕跡がいたるところに残っている。
「もう平気だよ。ありがとう、リアナちゃん」
ミミが微笑み、軽く腕を振ってみせる。
「いえ、薬草をくださったカイルさんや《クリムゾン・ジャッジメント》の皆さんのおかげです」
リアナは深く頭を下げた。
カイルは安堵の息をつき、あたりを見回す。
「これで……終わった、ってことでいいんですかね?」
「うむ。おそらく、もう大丈夫じゃろう」
セイが頷いた、そのときだった。
「――いや、まだだ!」
ジンが鋭く声を上げ、カイルがびくりと肩を揺らして振り返る。
「えっ?」
「ご先祖様を……ちゃんと埋葬してやらないと」
ジンの視線の先には、戦いのあとに残る骸骨たちがあった。
「そうだね。この人たち、さっきの骸骨みたいなやつに操られてただけだもんね」
ミミが小さく頷く。
「さすがに元通りにはできない。けど――せめて、土に還してあげたいんだ」
ジンの言葉に、全員が黙って頷いた。
やがて、誰からともなく動き出す。
カイルとセイが土を掘り、リアナが折れた墓標を並べ直し、ミミが花を摘んで供える。
メリサは淡い火を灯し、夜の帳を静かに照らした。
そして最後に、エリシアが祈りの姿勢をとる。
「安らぎの光が、迷える魂の導きとなりますように――」
澄んだ声が夜の空気に溶け、風がそっと墓地を撫でていった。
こうして、カルナス村を騒がせていたアンデッド騒動は幕を閉じた。
◇
翌朝。
カルナス村の公会堂には、朝日が差し込んでいた。
「《キラキラ☆おひさま団》の皆さん、今回は本当にありがとうございました」
カイルが深々と頭を下げる。
「いやいや、そんな大したことはしとらん」
セイが肩をすくめた。
「いえ、Bランクだと驕ってた自分が恥ずかしいです。
今回改めて実力不足を痛感しました。セイさんたちがいなければ、今こうして無事でいることもなかったでしょう」
メリサが少し頬を染めながら口を開く。
「本当に……ありがとう。今さらだけど、あの“馴れ合う気はない”って言葉、撤回するわ。これからもよろしく」
ジンが穏やかに笑い、うなずいた。
「ご先祖様も、これでやっと安らかに眠れると思う。ありがとう」
しばしの静寂ののち、カイルが封筒を差し出す。
「こちらが今回の報酬です」
リアナが受け取り、目を見開く。
「えっ、こんなに……いいんですか?」
「Bランク報酬には遠く及ばないが、村人たちが少しずつ出し合ってくれた金だ。受け取ってくれ」
ジンが穏やかに言う。
「ありがとうございます」
リアナが深く頭を下げた。
カイルが続ける。
「今回の件、ギルド依頼ではありませんが――“魔王”という言葉が出てきた以上、報告義務が生じます。こちらでギルドに報告しておきますので、皆さんは次の目的地へ進まれてください」
「助かる。恩に着るぞ」
セイが頷く。
「では、私は村長に報告に行ってきます」
カイルが席を立ち、公会堂を後にした。
その背中を見送りながら、メリサがぽつりと呟く。
「できれば、このまま一緒に旅を続けたいんだけどね……」
「メリサちゃんがいたら、怖いものなしだね! でも……カイルさんが、ねっ?」
ミミが悪戯っぽく笑う。
「な、なによそれ! なんでカイルの名前が出てくるのよっ!」
メリサが顔を真っ赤にして狼狽える。
「あたりまえじゃろう」
セイが腕を組み、わざとらしく真面目な顔で言った。
「ひと様のパーティーメンバーを引き抜くなど、ご法度中のご法度じゃからな」
「そ、そうよねっ、うん! もちろん分かってるわよ!」
メリサは慌てて頷き、そっぽを向いてごまかす。
だが、ミミがそれを許さない。
小首を傾げながら、無邪気な追い打ちをかける。
「なに? メリサちゃん、カイルさんがなんだったの?」
「も、もうっ! なんでもないってば! バカっ!」
メリサは耳の先まで赤くして声を張り上げた。
その様子に、ジンが苦笑しながら口を挟む。
「あっ、そうだ。馬車の手配もしておいた。村の入り口に準備できてるはずだ」
「ジンさん、お金は――」
リアナが尋ねると、ジンは軽く手を振った。
「もちろん頂くさ。ただ、報酬からすでに引いてあるから心配するな」
「何から何まで、本当にありがとうございます」
リアナが再び深く頭を下げる。
ジンは穏やかに微笑み、手を挙げた。
「――また会おう」
「おう。狭い世界じゃ、またどこかの依頼でな」
セイが笑い返し、一行は次の目的地へと進み出した。
◇
カルナス村を出て北へ向かう街道。
車輪の音がリズムを刻む中、リアナが地図を広げた。
「次の街は《ヴァルネッタ》。砦を兼ねた軍事拠点の街よ」
「軍事拠点ってことは、戦争があるの?」
ミミが首をかしげる。
「いえ、今この世界で目に見える戦争は起きてません。
ただ、ヴァルネッタの周辺にダンジョンがあって、そこから発生する魔物に備えているってことみたいです」
リアナの説明に、セイが目を輝かせた。
「なにっ!? ダンジョンとな! 転生ファンタジーの一番人気のジャンルではないか!」
「セイがまたよく分からないこと言ってる……」
ミミが呆れたようにため息をつく。
エリシアは頬に指を当て、穏やかに続けた。
「でも、ダンジョンって古代文明の王族の墓とも伝えられています。
そこに魔物が発生しているというのも、気になりますね」
「魔物発生は今に始まったことじゃないから、魔王復活とは関係なさそうだけどね」
リアナが冷静に補足する。
「うう……ダンジョンか! ワクワクが止まらんのう!」
セイは身を乗り出し、北の空を見つめて拳を握りしめる。
「セイ、言っとくけど――ダンジョンには行かないわよ!」
リアナがぴしゃりと言い放つ。
「えっ、なぜじゃ!?」
「さっきの依頼の報酬で、次の街までの旅費は十分にあるからよ」
「じゃがじゃが、セリオットといえば平原の宿場町じゃろ!?
そこでお金が尽きたらどうするんじゃ! ヴァルネッタでダンジョン関連の依頼をこなして稼いでおいたほうが良いのではないか?」
「うーん……それも一理あるわね」
リアナが腕を組んで考え込む。
「そうじゃろうそうじゃろう! やはりダンジョンに行かねばならん!」
セイが嬉しそうに頷く。
「でも、あんたが行くと、どうせまた魔王関連事案になるんじゃないの?
奥に潜んでた魔物が“魔王四天王でしたー”なんてオチ、もうこりごりよ」
「ありえそうですね」
エリシアが微笑みながら頷く。
「間違いない」
ミミも間髪入れずに同意した。
セイはうなだれ、馬車の床に崩れ落ちた。
「なんじゃこの信頼のなさは……」
その言葉に、馬車の中には再び笑い声が広がった。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】39
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(メリサとカイルのような関係に、ちょっとだけ憧れ)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。アンデッド戦で負ったキズは完全回復
- 補足:無邪気の皮をかぶった悪魔
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(戦闘におけるセイとの連携が、これ以上ないほど板についてきた)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。アンデッド戦での疲労はばっちり回復
- 補足:セイが魔王関連事案を引き当てる可能性に確信を持っている
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:けっこう高め(「悪霊退治は任せてください!」と、さりげなくアピール)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。アンデッド戦での疲労はばっちり回復
- 補足:今回いちばんの功労者。聖女パワーがさく裂している
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