第55話 宿場町ドランベル
蜜閃三姉妹が去ると、広場には静けさが戻った。
甘い香りは未だ漂い、息を吸うたびに胸の奥をくすぐってくる。
「……あっ、そうだ。クリムゾンさんたち、大丈夫かな」
リアナがはっと顔を上げる。
「クリムゾン・ジャッジメントだよ!」
ミミがすかさず突っ込む。
「えっ、あ、はい……でも、まずは様子を確認しないと」
三人は駆け寄り、倒れている彼らの様子を確かめた。
肌は汗に濡れ、うっすらと赤みが残っている。だが呼吸は落ち着いており、命に別状はなさそうだった。
「魅惑の影響はまだ残っているようですが……しばらくすれば落ち着くでしょう」
エリシアが安堵の声を漏らす。
「三人の荷物、見つけてきたわよ」
リアナが抱えて戻ってくる。
「では、セイさんはカイルさんとジンさんを。私たちはメリサさんに服を着せてあげましょう」
エリシアが指示を出し、皆で手分けして動き出す。
服を着せている最中、ミミが小さな声でぽつり。
「でも、この三人……かなり、あてられちゃったのかな」
エリシアは一瞬ためらい、静かに頷く。
「メリサさんの様子を見る限りでは……そのようですね」
リアナは眉をひそめつつも、ふっと息を吐いた。
「ほんとに強い人たちなのに……こんなふうに、あっという間に……」
ミミはタオルを手に取り、メリサの頬を伝う痕をそっと拭う。
「大丈夫だよ。もう悪い夢は終わったから」
甘い瘴気の余韻を丁寧に拭い、服を着せ直していく。
全員の身支度が整い、場にほっとした空気が広がる。
その中で、セイが肩を回しながら呟いた。
「しかし……三人を運ぶのは骨が折れるのう。いったん馬車まで戻って、人を呼んでくるか」
セイは人を呼びに行き、協力を得て三人を慎重に馬車へと運び込んだ。
空を覆っていた雲は次第に切れ、やがて雨も静かに上がっていった。
◇
濡れた街道を車輪が軋み、馬のいななきとともに、馬車は再びランベルを目指して進み出す。
揺れる車内。
やがて、《断罪の焔刃》の三人がかすかに呻き、ゆっくりと目を開いた。
ミミとリアナが顔を寄せる。
三人は互いを見回し――不安げに、それでも生きていることを確かめるよう小さく頷き合った。
「……気がついたんですね。何があったか覚えていますか?」
エリシアが声をかけると、カイルは眉を寄せて首を振った。
「いや……森の奥に入ったあたりで、急に甘い香りがして……そこから先は覚えていない」
「わたしも同じ」
メリサが額に手を当てる。
「気づいたら馬車の中で……どうして?」
ジンも無言で頷き、三人の間に重い沈黙が広がった。
セイは短く息を吐き、落ち着いた声で答える。
「おぬしら、森の奥で倒れておったんじゃ。おそらく、あの甘い香りは瘴気じゃろう。それに当てられて倒れたんじゃな」
三人はしばし顔を見合わせ、納得したように頷いた。
ミミもリアナもエリシアも、あえて口を挟まなかった。
お互いのためにも、『知らないこと』が幸せかもしれない――そう思ったからだ。
「ところで――おぬしたちの目的地はどこじゃ?」
カイルは少し間を置き、口を開く。
「……《カルナス村》ってところです」
メリサが補足するように続けた。
「ギルドの正式な依頼じゃないんだけどね。最近、変な噂が流れてて、それを調べに行くの」
ジンが気まずそうに視線を落とす。
「……俺の故郷なんだ。最近、村の外で夜な夜なアンデッドが目撃されてるらしい……」
カイルが言葉を引き継ぐ。
「小さな村なので、ギルドもなく、依頼を出すお金もない。だから僕たちでなんとかしようと思って向かっているんです」
そう言って、やわらかく問い返した。
「で、セイさんたちはどちらに?」
「ベランドじゃ。シルヴェリオン地方にある」
セイの答えに、カイルが目を丸くする。
「それはまた遠いところですね。となると、ドランベルの次はカルディナへ?」
「ああ、そうじゃ」
「それはちょうどいい。私たちもカルディナまでは同じ道のりですので、そこまでご一緒しても?」
「かまわんよ」
セイが頷くと、ミミがうれしそうに身を乗り出した。
「よろしくね、カイルさん、ジンさん、メリサちゃん!」
「えっ……」
メリサは思わず頬を赤く染め、恥ずかしそうに俯く。
「どうしたの、メリサちゃん? いやだった?」
ミミが首をかしげて、純粋な目を向ける。
「い、いや……そうじゃなくて。……“ちゃん付け”で呼ばれたの、初めてだったから」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、なんて呼べばいい?」
「えっ……えーと……その……やっぱり、メリサちゃんで……」
しどろもどろに答えるメリサの耳まで赤くなっていく。
それを見て、カイルとジンは顔を見合わせ、からかうように笑った。
「へぇ……メリサにも、ちゃんと女の子らしいところがあったんですね」
「……あんたたち、後で覚えときなさいよ」
きりっと睨みつけられ、二人は慌てて口をつぐむ。
そんなやり取りを挟みつつ、馬車は石畳を抜け、やがてドランベルの街へとたどり着いた。
「さっきはカルディナまで一緒にと言ったが、わしらはここドランベルに二日ほど滞在する予定じゃ。都合が悪ければ、先に行ってくれて構わん」
セイの言葉に、カイルはすぐ首を振る。
「いえ、森でのこともありますし、我々も少し休みたいと思います。では二日後にまたご一緒させてください」
「ああ、ではまた二日後に」
「はい、二日後に」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】36
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。馬車に揺られながらも休養し、戦闘の疲れは少し回復
- 補足:持ち前の人懐っこさで、メリサをちゃん呼びで彼女の新しい一面を引き出す才能を見せる
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:黒を基調とした剣士風ドレスを装備。馬車に揺られながらも休養し、戦闘の疲れは少し回復
- 補足:《断罪の焔刃》のような実力者でもあっけなく翻弄される現実に、もっと頑張らなきゃと決意
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。馬車に揺られながらも休養し、戦闘の疲れは少し回復
- 補足:メリサの介抱で率先して動いたミミを見て、思っていたよりしっかり者だと見直した
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