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第109話 それぞれのお休み

 ルキア村から東へ延びる街道――リアナの実家へ向かう馬車の中。


 車輪が石を踏むたび、馬車ががたん、と小さく揺れる。

 扉の隙間から入り込む風も、すっかり冷たくなっていた。


「リアナちゃんのお家って、お兄さんがいるのは聞いてたけど……お父さんとお母さんもいるんだよね?」


 ミミが首をかしげる。


「いえ、父はいますが……母は、私が小さいころに亡くなりました」


「そうだったんだ……」


「ちょうど、騎士を目指そうと心に決めたころでした」


「へぇ……。リアナちゃんのお母さんなら、きっとすごくきれいな人だったんだろうね」


 ミミの素直な言葉に、リアナはふっと柔らかく微笑んだ。


「ふふっ、ありがとうございます。写真、見ますか?」


「えっ、あるの?」


「はい。ちょっと待ってくださいね」


 そう言って、リアナは腰のポーチから一枚の写真を大切そうに取り出した。


「これが、私の母です。こっちが小さいころの私。

 思い出はたくさんあるのに……写真は、もうこの一枚しかなくて……」


 写真の中では、凛とした女性が幼いリアナの肩を優しく抱いている。


「うわぁ……リアナちゃんにそっくり。きれいっていうより、可愛いお母さんって感じだね」


「そうですか? 私からすると、いつも凛としていて……悪いことをすると、ものすごく怒られて。でも……甘えたいときは、とても優しくしてくれて……」


 言葉が途切れる。

 懐かしむように目を細め、瞳がわずかに潤んだ。


「あれ……すみません。少し、感傷的になってしまいました」


 ミミはそっとリアナの肩に寄り添った。


「大事な思い出だもんね」


「はい。母の写真と、母が使っていた指輪は、こうしていつも持ち歩いているんです。

 なんだか……見守ってくれている気がして」


「うん。絶対、見守ってくれてるよ。だってリアナちゃん、ちゃんとまっすぐ育ってるもん」


「ありがとう、ミミさん。そう言ってもらえると……本当にそうなんだって、思えます」


 リアナは写真を大切にしまうと、穏やかな笑みを浮かべた。


 そんな二人を乗せて、馬車はリアナの実家があるアストリア地方の町――《エルミナ》へと進んでいく。


 ◇ ◇ ◇


 ルキア村飲食街――ミミとリアナが実家へ帰った、その夜。


 細い路地の奥に、ひっそりと佇む小さな居酒屋。

 暖簾をくぐると、木の香りと香ばしい料理の匂いが漂ってきた。


「ルキア村は、規模の割に居酒屋が多いのう」


 セイは席に腰を下ろし、店内を見回す。

 壁には手書きのメニューが並び、暖かな灯りの下では村人たちが楽しそうに食事をしている。


「そうですね。村といっても冒険者の方々がいらっしゃいますから、こういうお店は自然と繁盛するのでしょう」


「しかし、エリシアよ。こんな美味い店、よく見つけたな」


 セイは感心した様子でグラスを掲げる。


「ふふふっ。皆さんがお部屋に戻られた後、こっそり市場調査に出かけてるんです」


 エリシアは、少し得意げに笑った。


「なるほど。夜にたまに出かけてると思ったら、そういうことだったか。しかし、この店は酒だけでなく、料理もうまいのう」


「いま一番評判のお店なんです。地元の人も、遠方から来た冒険者も、皆さんがお勧めしているみたいですよ」


 しばらく二人は、料理や酒を口に運びながら楽しげに会話を続けた。


 やがて、ふとエリシアが口を開く。


「そういえば、セイさん。元々の世界ではおじいちゃんだったと伺いましたが、向こうの世界の人たちは心配していませんか?」


「そうじゃのう。向こうのワシはもう隠居して、余生を孫娘と楽しく過ごすくらいじゃったし、その芽衣も、いつまで『おじいちゃん』って近づいてきてくれるか分からんしの。

 そもそも息子たちがおるから、心配することもないわい。……その点では、よっぽどミミのほうが心配じゃな」


「ふふふっ、セイさんらしいですね」


「一応、聞いてみてもいいですか?」


「なんじゃ?」


「私は心配じゃないですか?」


「まあ、エリシアはおっとりはしとるが、しっかり考えを持っとるし、もう大人じゃしのう。ワシが心配することもなかろう」


「ふーん。なんだか、ちょっと寂しいですが……。

 じゃあ、リアナさん……は?」


「リアナか。あやつは最近、何を考えとるかよう分からんようになってきたな。

 前はなんか、やけに突っかかってきたんじゃが……元気がなくなったというか、なんというか……」


「……なるほど。リアナさんが元気ないのは、セイさんのそういうところでしょうね」


「なんじゃそれ。どういう意味じゃ?」


「さあ、何でしょうね?」


「お、おぬし、最近ちょっと意地悪くなってきたな」


「あー、そういうことを言う人には、絶対教えてあげませんっ!」


 そんなやり取りをしながら、二人はその夜、めちゃくちゃ飲んだ。


 そして翌朝――当然のように、二人そろって二日酔いに苦しむことになるのだった。


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】26(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】53

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。しっかり休暇とって体力万全

 - 補足:リアナの実家にいきなり行っても大丈夫か、少しだけ不安


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:大好き

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:シルクノートの胸当てと可憐な細工の髪飾りを装備。しっかり休暇とって体力万全

 - 補足:ミミと一緒に帰省して、何をしようか色々と考えまくり中


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。体力はばっちりだが、二日酔いで頭が痛い

 - 補足:セイと一緒に飲み歩きのプランをいくつか計画中

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

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