↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
108/113

第107話 最高の笑顔

 少し中心街から外れた宿を確保した一行。


「セイー! わたしとエリシアちゃんは、王都の最新スポットを見てくるね! 前回とどれくらい変わってるか、あとでじっくり教えてあげるから!」


「ふふっ、ミミさん、とっても楽しそう」


「いやいや、エリシアちゃんには負けるよー!」


 今にもスキップしそうな勢いで、二人は賑やかに宿を飛び出していく。

 セイはその背中を、やれやれといった表情で見送った。


「おい、あんまり遅くならんようにな!」


 やがて足音が遠ざかり、宿は急に静まり返る。


「ふう。あやつらがおらんと、急に静かになったのう」


 本でも読んでくつろぐか――そう腰を下ろしかけた、そのときだった。

 隣から、じり、と鋭い視線が突き刺さる。


「……なんじゃ。その目は」


 リアナはじっとセイを見つめたまま、低い声で言う。


「ねえ。約束……覚えてるわよね?」


「え? ああ……」


 一瞬きょとんとしたセイの表情が、はっと強張る。


「も、もちろんじゃ! 忘れるわけなかろう! 中心街! そうじゃ、中心街へ行く約束じゃったな!」


「なら、よし」


 リアナは満足そうに口元をゆるめると、手早く支度を整えて二人で宿をあとにした。


 ◇


 王都の中心街は、昼間から多くの人で賑わっていた。

 石畳の大通りには露店が立ち並び、焼き菓子の甘い香りと香辛料の刺激的な香りが漂っている。


「やっぱり、ものすごい活気ね……」


 隣を歩くリアナが、落ち着かない様子で辺りを見回す。

 そっと袖をつままれていることに気づき、セイは声をかけた。


「中心街まで来たのはよいが、目当ての店でもあるのか?」


「ううん、特には。でも……こうして二人で歩くだけでも、悪くないでしょ?」


「ふむ、確かにのう。前もこうして二人で王都を歩いたな」


「あ……ちゃんと、覚えてたんだ。ふふっ、ちょっと嬉しいかも」


 ぽつりとこぼれた言葉。リアナの瞳が、ぱあっと嬉しそうに揺れる。

 素直すぎるリアナの反応に、セイはつい顔をのぞき込んだ。


「なんじゃ、今日はやけに素直じゃな。雨でも降らねばよいが」


「ちょっと。怒るわよ? 私だって、いつもツンツンしてるわけじゃないんだから」


 軽口を交わしながら店先を眺めていると、王都名物の焼き菓子屋台の前でリアナが足を止めた。


「わあ……見て。限定って書いてある」


「ほう。おぬし、意外と『限定』に弱いのじゃな。案外、可愛いところもあるではないか」


「えっ!? ち、ちょっと、急になに言ってるのよ……っ」


 みるみる頬を赤く染めるリアナに、セイは首を傾げる。


「おい、本当にどうしたんじゃ。熱でもあるのではないか?」


「う、うるさいわね! バカっ!」


 結局、一つだけ買い、二人で分け合うことにした。


 焼き立てを一口かじったリアナは、ぱっと表情を輝かせる。


「おいしい……!」


「どれ、ワシにも一口くれ」


「…………。……ん」


 半分を渡すのかと思いきや、リアナは一瞬だけ視線を泳がせる。

 そして意を決したように、自分がかじったばかりの焼き菓子を、そのままセイの口元へ差し出した。


「ほ、ほら……! さっさと食べなさいよ! 恥ずかしいんだから……っ!」


 不意打ちの「あーん」に、セイは一瞬固まる。

 だが、あまりにも必死なリアナの表情を見て観念し、そのままぱくりとかぶりついた。


「……うむ。確かにうまいな」


「でしょ?」


 真っ赤な顔のまま、リアナは誇らしげに、そして最高に嬉しそうに笑った。


 甘い余韻を残したまま歩いていると、ふいにリアナの足が止まる。

 そこは、色とりどりの布花や小粒の宝石をあしらった髪飾りが並ぶ雑貨の露店だった。


「……わあ」


 思わず漏れた声には、隠しきれない嬉しさがにじんでいた。

 リアナは吸い寄せられるように露店をのぞき込み、瞳を輝かせる。


「なんか、こういうのって……見てるだけで嬉しくなっちゃうのよね」


 その言葉どおり、足取りまで軽い。

 手に取っては戻し、また別の髪飾りを眺める。その仕草一つひとつが楽しそうだった。


(……そこまで気に入ったのなら)


 少し後ろで見守っていたセイは、小さく息をつくと露店へ歩み寄る。


「店主、これをもらおう」


「えっ!?」


 リアナが振り向くより早く、セイは代金を差し出した。


「まいどあり! 彼女さんへのプレゼントかい?」


「……まあ、そんなところじゃ」


 店主の冷やかしを軽く受け流し、小さな包みを受け取る。


 そして、そのままリアナへ差し出した。


「……ほれ」


 包みの中に入っていたのは、先ほどリアナが一番長く見つめていた可憐な髪飾りだった。


「えっ……? ちょ、ちょっと待って。お金、どうしたの?」


「安心せい。へそくりじゃ。これくらいならワシも持っとる」


「で、でも……」


「おぬしが、あまりにも嬉しそうな顔をしておったからな」


 リアナは髪飾りに視線を落とし、ぎゅっと胸元で抱きしめる。

 やがてセイを見上げ、まっすぐその瞳を見つめた。


「……ありがとう」


 そこにあったのは、照れ隠しも強がりもない、心から嬉しそうな笑顔だった。


「ふん。リアナに似合うと思っただけじゃ。

 ……まあ、あとでミミやエリシアに文句を言われても面倒じゃ。あやつらの分も何か見ておくか」


 王都の喧騒の中、リアナは髪飾りを大切そうに抱きしめる。

 そして、歩き出したセイの後ろを、ぴったりとついていくのだった。


────────────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】26(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】53

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移


【同行者】

・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:アストラクロスのローブを装備。王都観光にうきうき気分

 - 補足:エリシアと嬉しそうに出かけて行ったのは、少しだけリアナに気を使ったのもあるらしい


・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:大好き(昔の些細なことも覚えていてくれて嬉しい)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:シルクノートの胸当てを装備。王都中心街でのほとんどデートで胸の鼓動がとまらない

 - 補足:買ってもらった髪飾りを大事にポーチにしまっておくか悩んでいる


・エリシア(元聖女様/25歳)

 - 好感度:好き

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:アストラクロスのドレスを装備。王都観光にうきうき気分

 - 補足:憧れの王都は、何度来ても飽きないようで、教会や祈祷堂をはしごしていた

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】やブックマーク、ご感想にて応援いただけると、泣いて喜びます。

次の話もぜひぜひ、よろしくお願いします^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。