第105話 サンドワーム討伐
「サンドワーム自体は、さっきレオンさんも言ってたように、Cランクなら十分討伐できる魔物なの。場合によってはDランクでも討伐できるくらいなんだけど……」
「じゃけど?」
セイに促され、リアナは表情を引き締めた。
「サンドワームが生息している場所には、必ずと言っていいほど――それを餌にする《サンドドレイク》がいるの。
サンドドレイクともなれば話は別。Bランクでも苦戦する相手になるわ」
その会話の最中だった。
足元が微かに震える。
砂が、もり……もり……と不自然に盛り上がり始めた。
「来たぞ――サンドワームだ!」
レオンの叫びと同時に、《シルヴァーエッジ》が戦闘態勢へ移る。
次の瞬間、砂を突き破って巨大なサンドワームが姿を現した。
――だが。
「……おかしいわ。振動が止まらない。
もう一匹……それも、もっと大きい……!」
リアナの言葉を裏付けるように、地鳴りがさらに激しさを増す。
直後、サンドワームのさらに下から、獲物に食らいつくかのように砂を割って《サンドドレイク》が姿を現した。
しかも、明らかに規格外の巨体。
叩きつけるような衝撃とともに、グラムの身体が宙を舞う。
「グラムっ!」
レオンの叫びも虚しく、グラムは地面へ叩きつけられた。
肩から腰にかけて裂けた傷口から、鮮血が噴き出す。
「レオン! まずいよ……グラムが……!」
「リィナ、グラムを頼む! こいつは僕が引き受ける!」
即座に指示を飛ばし、レオンが前へ出る。
セイも瞬時に状況を把握し、声を張り上げた。
「ミミ、エリシア! リィナを支援せい!」
「うん、分かった!」
エリシアは一瞬だけサンドドレイクへ視線を向け、言いかける。
「でも……私の力なら、ドレイクを――」
「うむ。おぬしの力なら討伐も難しくはなかろう。じゃが、その後はどうじゃ? 魔力切れで立ってもおれまい。今はグラムの命が最優先じゃ。
――絶対に死なすな」
「……はい」
短く応じると、エリシアは治療へ専念した。
セイは前を見据え、リアナへ声をかける。
「リアナ、ワシと一緒にサンドドレイクを討つ。いけるか?」
「もちろん」
「レオン、おぬしも問題ないな?」
「誰に聞いてるんだ? 当たり前だ!」
「行くぞ!」
鋭い号令とともに、三人が砂を蹴る。
「《加速支援》」
セイの身体が羽のように軽くなる。
リアナもまた意識を集中させ、淡い光をその身にまとった。
レオンが真っ先に斬り込む。
渾身の一撃――しかし、刃は火花を散らすだけで、岩のような鱗に弾かれた。
「ぐっ……!? なんだ、この質量は……!」
「レオン、深追いするな! リアナ、ワシらは左右から回り込んで援護じゃ!」
「了解!」
リアナが鋭く踏み込み、横腹へ一閃。だが、その刃も硬い鱗に阻まれる。
「……硬っ。なに、これ……」
直後、丸太のような尻尾が空気を切り裂いて振り抜かれた。
「リアナ、伏せろ!」
「しまっ――」
間一髪で防いだものの、衝撃は殺しきれない。
リアナの身体は大きく弾かれ、砂の上を転がった。
「大丈夫か!?」
動揺したレオンの隙を、サンドドレイクは逃さない。
振り上げた前脚が、無防備なレオンへ振り下ろされる。
「くそっ……間に合わない……!」
死を覚悟したその視界へ、セイが飛び込んだ。
振り下ろされた前脚を、両腕で受け止める。
凄まじい力に身体が軋み、足元の砂が深く抉れた。
「なんちゅう怪力じゃ……。もう一発は受けきれん。早く離れろ」
「あ、ああ……助かった」
レオンは急いで後退し、体勢を立て直す。
「よし。このまま三人で削り取っていくぞい」
――だが、その直後。
サンドドレイクは低く唸ると、巨体を沈めるように砂へ潜った。
「っ、潜った!?」
足元の砂が波打つ。
姿は見えないが、地中を移動しているのが分かる。
「来るぞ、足元に注意せ――」
言い終わるより早く、背後の砂が弾けた。
突き上げるような衝撃。
辛うじてかわしたものの、鋭い爪がセイの脇腹をかすめ、血が滲む。
「くっ……!」
間を置かず、今度はリアナの足元から砂が噴き上がり、尻尾が腕をかすめた。
「きゃっ……!」
完全には防ぎきれず、リアナも腕に浅くない傷を負う。
姿を現しては一撃を加え、すぐに砂へ潜る。そして、また別の場所から襲いかかる。
その繰り返しに、三人の体力は確実に削られていった。
「……このままじゃ、じり貧だな」
息を整えながら、レオンが吐き捨てる。
セイは短く息を吐き、砂の動きを睨み据えた。
「……そうじゃな。姿を現した瞬間、ワシが《威圧》でひるませる。
効くかは分からんが、その隙に三人で一気に叩くぞ」
「……なるほど。一点突破だな」
レオンが剣を握り直し、頷く。
「効いてくれないと恨むわよ」
リアナも剣を構え、覚悟を決めた。
再び、足元の砂が不自然に盛り上がる。
「来るわよ……!」
「頼む! 効いてくれ――《威圧》」
空気が一気に重くなり、サンドドレイクの動きがわずかに鈍る。
「……完全には止まらんか」
「問題ない! この隙を突く!」
レオンが高く跳び、頭上から剣を振り下ろす。
弾かれはしたものの、その一撃でドレイクはわずかに頭を下げた。
セイが《加速支援》を重ね、風のような速さで顎下へ潜り込む。
魔力を込めた短剣を、渾身の力で突き上げた。
「これで、どうじゃ!」
硬い感触。だが、刃は確かに食い込んでいる。
「これで、決まって!」
雷撃をまとったリアナの剣が、稲妻の尾を引いて振り下ろされる。
それに合わせるように、セイも力を込めて下から短剣を突き上げた。
「うおおおおっ!」
短剣はサンドドレイクの喉元を貫き、巨体は絶叫とともに崩れ落ちた。
砂煙が高く舞い上がり、地響きが砂丘を揺らす。
やがて巨体は動きを止め、砂の上に横たわった。
「……終わった」
「やったわね、セイ! レオンさんも」
砂丘に静けさが戻る。
その中で、レオンは倒れ伏すグラムへ視線を向けた。
「……」
様子を見たセイが声をかける。
「大丈夫か?」
「ああ……冒険者をやってるんだ。覚悟はしてるつもりさ」
そう言いながら、ゆっくりとグラムのもとへ歩み寄る。
その視線の先で、リィナが小さく首を横に振った。
「……」
代わりに、エリシアが状況を伝える。
「傷は、何とか塞ぎました。でも……血を流しすぎたみたいで、意識が戻らないんです」
「……つまり、死んでは……いないんだな?」
喉を鳴らし、レオンが確認する。
「はい。命はつなぎ止められています」
その答えを聞いた瞬間、レオンの肩から力が抜けた。
「死んでない……死んでない……」
何度も言い聞かせるように呟き、深く息を吐く。
「……よかった。本当によかった。生きてさえいれば、何とかなる」
気丈に振る舞ってはいたが、内心では相当気を張っていたのだろう。
セイはリアナへそっと耳打ちした。
「……何とかなるのか?」
「ええ……冒険者の中には、ほんの一握りだけど、どんな状態でも回復できる人がいるって聞いたことがあるわ。その人たちにお願いできれば……グラムさんも、きっと助かるはずよ」
「そうか……それなら、よかった」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】26(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】53(+2)
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。グラムの回復に結構な魔力を消費して疲弊
- 補足:リィナを全力サポートして回復に専念。命を大切に
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:大好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。サンドドレイクの攻撃により浅くないキズが多数
- 補足:ギルド試験といえど、通常の討伐依頼と同様のリスクがあることを理解した
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。グラムの回復にほとんどの魔力を消費して疲弊
- 補足:自分の力の使い道を今回あらためて考えさせられた
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