第103話 みんなの気持ち
松の宿――部屋に備え付けられた露天風呂。
外は冷え込み始めていたが、囲いの中は立ち上る湯気で白く霞み、どこか幻想的な雰囲気に包まれている。
夜気に混じって、木の香りと湯の匂いがほのかに鼻先をくすぐった。
湯船の縁にもたれたリアナは、小さく息を吐く。
肩まで湯に沈めると、じんわりとした熱が体の奥まで染み渡っていく。
「……ふう。あったまる……」
心地よい浮遊感に、うっとりと目を細めたそのとき。
「じゃあ、わたしも入っちゃおうかな。ごめんね、リアナちゃん」
軽やかな声と共に、ミミが湯船へと入ってきて――
なぜか、そのままリアナの上へ、ちょこんと腰を下ろした。
「……いやいや、ミミさん。なんで私の上なんですか?」
「だってさぁ、温泉のときみたいに広くないんだから、しょうがないよね?」
湯に揺られながら、ミミは悪びれもせず笑う。
「しょうがなくないです! 三人並んで座れるくらいには広いですよ!」
「へへ。そうかも。でもリアナちゃんの上、すごく柔らかくて心地いいんだもん」
「も、もう……からかわないで、のいてください」
「わかったよう。じゃあ……」
ミミはいったん腰を浮かせる。
ようやく退いてくれるのかと思った、その直後。
くるりと向きを変え、今度は向かい合う形で再びリアナの膝の上へ座り直す。
「ミミさん……怒りますよ」
「ご、ごめん。やりすぎた……」
さすがに観念したのか、ミミは名残惜しそうにリアナの隣へ移った。
そこへ控えめな足音。
湯船の縁に立ったエリシアが、少し遠慮がちに視線を向けながら声をかけた。
「ミミさん、おとなり……よろしいですか?」
「もちろん!」
エリシアはそっと湯に浸かり、ミミの隣へ腰を下ろす。
肩が触れ合いそうな距離で、エリシア、ミミ、リアナの三人が横一列に並んだ。
三人は自然と顔を上げ、湯気の向こうに広がる夜空を眺める。
「そういえばさ、リアナちゃん。わたし、聞き逃さなかったよ!」
「え? な、なんですか急に」
「セイに『わたしたちのお風呂、見なくていいの?』って聞いたときさ。頑なに大浴場へ行くって言ってたでしょ?」
リアナの肩がぴくりと揺れた。
「そのとき、リアナちゃん――『別にいいのに……』って言ってたよね?」
「えっ!? そ、そそ、そんなこと言ってないですよっ!」
必死に否定するリアナを見て、隣のエリシアも小さく頷く。
「あっ、それ、私も気になってました。
リアナさん、最近はセイさんへの気持ちを隠そうともしていませんよね」
「うっ……」
ぷしゅっと音がしそうな勢いで、リアナの顔が真っ赤に染まる。
肩をすくめたまま、湯を見つめて俯いてしまった。
「でもさ。そう言うエリシアちゃんはどうなの?
セイのこと、どう思ってるのか聞きたいなぁ」
今度はミミの矛先がエリシアへ向く。
「うーん……」
少し考えてから、エリシアは穏やかに微笑んだ。
「とても素敵な人だとは思っています。それがどういう気持ちなのかは、まだ分かりませんが……。
信頼できて、一緒にいると安心できる存在なのは間違いありません」
「うん。それは恋だね! 間違いない」
「えっ、エリシアさんもですかっ!?」
リアナが勢いよく顔を上げる。
「あっ、その反応! リアナちゃん、もう認めちゃったってことでいいんだね!」
「ふふっ。リアナさん、可愛いです」
二人に笑顔で詰め寄られ、逃げ場を失ったリアナは観念したようにため息をついた。
「はあ……まあ、ミミさんには前にも話したと思いますが……私はセイが好きです。大好きです」
あまりにも真っ直ぐな告白に、聞き出したミミのほうが「はわわわっ」と真っ赤になる。
エリシアも「まあ……」と口元に手を添え、照れたように微笑んだ。
「リアナさん。それなら、私たちはライバルということですね」
「ちょっと、エリシアちゃん! わたしも忘れないでよ」
「……はあ。ミミさんだけじゃなく、エリシアさんまで……」
湯気に包まれた露天風呂に、三人の笑い声が重なり、静かな夜へと溶けていった。
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▼ステータス情報
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:装備なし。露天風呂でまったり。気分も上々
- 補足:「同じ好きな人のことを話せる人が増えて楽しい」というポジティブ思考
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:大好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:装備なし。露天風呂でまったり。気分も上々
- 補足:エリシアにもライバル宣言され、すこし焦りだした様子
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:装備なし。露天風呂でまったり。気分も上々
- 補足:何だかんだでこういう会話が結構楽しくて好き
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