第101話 試験の町へ
「いやあ、やっぱり王都はなかなか遠いのう」
大きく背伸びをしながら、セイがぼやく。
「わたしも、もうへとへとだよ……」
ミミも荷物を抱えたまま肩を落とした。
前回と同じく交易の町 《ラースト》を経由し、王都へ到着したのは昇格試験前日の昼過ぎ。
石畳の大通りには人があふれ、行き交う馬車と客引きの声が絶え間なく響いていた。
「相変わらず、人が多いわね」
リアナが周囲を見回す。
「リアナよ。今回はポーチを盗まれるでないぞ」
「わ、分かってるわよっ! でも……心配してくれてありがと」
軽口を交わしながら、リアナは腰元のポーチへ手を添えた。
「では、どうしますか? とりあえず自由行動ということで、王都を楽しみます?」
エリシアは声を弾ませ、あちこちへ視線を向ける。
久しぶりの王都に、興奮を隠しきれない様子だった。
「エリシアよ。楽しむのはよいが、まずはギルドで昇格試験の申請じゃ」
「あっ、はい。そうでした……。自由行動はその後ですね」
「エリシアちゃん、今回も楽しみにしまくりだね!」
ミミがくすっと笑う。
「ふふ……分かります?
王都に来るのも本当に久しぶりなので、街が変わっていないか見て回りたくて」
「いいねー。わたしも付いてっていい?」
「もちろんです。一緒に回りましょう」
二人は顔を見合わせ、早くもこの後の予定を話し始めた。
「ねえ、セイ。私たちはどうする?」
少し離れた場所で、リアナが尋ねる。
「そうじゃのう。王城は前回見たし、目ぼしい場所も大体回っとるからのう」
「じゃあ、私、中心街に行ってみたいんだけど」
「ああ、ええんじゃないか?」
「ほんとっ? じゃあ約束ね」
(……うぬっ。ワシも一緒、ということか)
内心で小さくうめきつつ、セイは咳払いをする。
「了解じゃ。とはいえ、まずはギルドじゃ、ギルド! おぬしたち、浮かれすぎて目的を忘れるでないぞ」
「「「はーい」」」
三人の返事が見事に重なった。
王都アストリオ中央大通りから少し西――ギルド王都支部。
堂々たる石造りの建物には、今日も多くの冒険者がひっきりなしに出入りしている。
中へ入ると、前回と変わらぬ熱気とざわめきが迎えてくれた。
依頼掲示板の前には人だかりができ、受付カウンターにも長い列ができている。
「王都のギルドは、いつ来てもすごい賑わいじゃのう」
列に並び、しばらく待って順番が回ってきた。
「こんにちは。王都ギルドへようこそ。ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」
「マリナさん、お久しぶり!」
ミミが身を乗り出すように声をかける。
「あっ……キラキラ☆おひさま団の皆さまじゃないですか!?
前回と雰囲気がずいぶん変わっていて、すぐには分かりませんでした……」
「えー、ほんと? わたし、強そうになってる?」
ミミは嬉しそうに胸を張る。
「はい。皆さま、以前よりずっと勇者様一行らしくなられたと感じます」
その言葉に、仲間たちは顔を見合わせた。
「ところで、今回はCランクの昇格試験を受けに来たんじゃが」
セイが一歩前へ出る。
「はい。妹のカレンから伺っております。
前回同様、必要事項はすでに共有されておりますので、代表の方の署名だけお願いいたします」
「うむ」
差し出された申込書へ、セイがさらさらと署名する。
マリナはそれを受け取り、奥へ書類を回した。
「これで申請は完了です。
試験の詳細につきましては当日に改めてお知らせしますが――」
マリナは資料へ目を落とす。
「Cランクからは、実際の討伐依頼を複数のグループで行います。
勇者様一行であれば問題ないと思いますが、Cランク相当の危険を伴いますので、十分ご注意ください」
「分かった。気を付けよう」
◇
ギルドを後にした四人は、試験終了日まで滞在できる宿を探すため、再び通りへ出た。
「ねえ、今回はさ。ちょっとお金もあるんだし、いい宿を探してみない?」
リアナが期待を込めて提案する。
「いいですね。外で食べ歩くのも魅力的ですが、宿のおいしい料理を味わいながら、ゆっくり過ごすのも素敵です」
エリシアの言葉に、皆が自然とうなずいた。
通りを少し外れた先で、四人は思わず足を止める。
「……なんじゃ、ここは」
年季の入った木造の門構え。
派手さはないが、一目で老舗と分かる落ち着いた佇まいだった。
門の奥には手入れの行き届いた中庭が広がり、澄んだ池の中央には見事な松が一本、堂々と枝を広げている。
「うわ……すご……」
ミミは思わず見入った。
「静かで……品がありますね」
エリシアも感心したように中庭を眺める。
「ねえ、ここにしようよ、セイ!」
リアナはパーティ用の財布の中身をちらりと確認し、小さくうなずいた。
「お金は……何とかなるでしょ。たぶん」
そう言うと、えいっとセイの背中を押す。
四人はそのまま宿の中へ足を踏み入れた。
磨き上げられた床に、ほのかに漂う木の香り。
ほどなくして、落ち着いた雰囲気の女将が姿を現し、深く一礼する。
「ようこそ、松の宿へお越しくださいました。
長旅でお疲れでしょう。どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
「部屋は二つお願いしたい。ワシと――」
セイが言いかけたところで、ミミが間髪入れずに口を挟む。
「えー、セイも一緒でよくない? ねっ、リアナちゃん?」
「えっ……あ、はい。
ミミさんとエリシアさんが良いのなら、私は全然……」
エリシアはにこりとほほ笑んだ。
「ええ。せっかくの良い宿ですし、皆さんで一緒のお部屋にしましょう」
「やったー!」
ミミが両手を上げて喜ぶ。
「じゃあさ、じゃあさ……今晩は寝かさないからねー!」
「おい。明日は昇格試験じゃぞ。朝も早いんじゃから――」
「大丈夫よ、セイ。
ミミさん、いつもそう言うけど、結局寝る時間はお子様並みに早いんだから」
「なっ……!」
ミミは一瞬言葉に詰まり、次の瞬間には頬をぷくっと膨らませた。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】26(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】51
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/世界法則書き換え/時間停止/魅了体質/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵/ホーリーブースト/空間転移
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定16歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:アストラクロスのローブを装備。徒歩移動でへとへと
- 補足:マリナに以前より「強そう(勇者の一行らしく)」なったと褒められご満悦中
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:大好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:シルクノートの胸当てを装備。徒歩移動で体調万全(適度な運動大事)
- 補足:中心街へ行く「約束」を取り付けテンション爆上がり中
・エリシア(元聖女様/25歳)
- 好感度:けっこう高め
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:アストラクロスのドレスを装備。王都散策を楽しみにしすぎ
- 補足:やっぱり王都へは空間転移できたのでは? というツッコミはしないでおいた
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