4.会議
19時、会議の開始時間だ。
あれからもう一度資料の隅から隅まで読み終えた私は18時ちょうどに運ばれてきた夕食に舌鼓をうち、15分前にはもう自室のパソコンの前に座って待機していた。ミーティングルームとは、オンライン上で行うオンライン会議の場の名称で現存するいかなるコンピューターウイルスもはじく超高性能なツールだ。実はこのツールの作成者は祥太だ。祥太は学園に入学したときからインターネットや情報関係に強かったが、学園に入ってしばらくしたころ、目を見張るほどの成長をした。学園の卒業試験間近にそのツールを完成させ、全地区の戦闘員に作戦会議の際にはこれを使えと上層部がツールを配布したときにはかなり驚いたものだ。実際、戦闘員の存在をよく思わない警察などからの作戦会議の盗聴の問題に手を焼いていたらしいので祥太は私も含め周りからたくさんの称賛を受けたが天狗にならず、今でもそのツールや各地域の情報管理の状態を改良している。そんな真面目で向上心が強くて仲間重いな祥太だから私も安心して背中を任せられるのだ。
ピコンと音がしてミーティングルームにメンバーの顔が映る。
「おっす~。」「お疲れ様。」
といつも通り軽い口調の祥太と、私たちにもいつだって礼儀を忘れずに話してくれる昼斗の声がした。
「いよっす。おつかれ~。」
そんな二人に私も挨拶を返し、んじゃ、始めますか。と早速会議の内容に入る。
「まずはこれね。」
そう言って私は画面の前に狐のお面を差し出した。
「うわ、本物。すっげ~。」
と間髪入れずにどこかキラキラした目でお面を見つめ、感想を言う祥太に、昼斗も同意するようにうなずく。
「・・・本当にすごいね。レプリカは学園の中で見たことがあるけど、本物はやっぱり迫力が違うな。」
「ね。”妖狐隊”に選出されたっていう実感がわくよ。夕飯食べ終わった後くらいに上層部直属の部下が届けに来て。明日二人にも渡すね。」
画面の向こうからしげしげとお面を観察する祥太と昼斗に同意しながら私も感想を述べる。そう、狐のお面だ。最強の戦闘員集団がなぜ「妖狐隊」と呼ばれるのか。その理由はこのお面にある。基本妖狐隊のメンバーはこの狐のお面をつけて戦う。お面なんかつけていて戦闘の邪魔なんじゃないかって?これがそんなことはないのだ。このお面には村一番の結界師の一族「結城家」が施した特殊加工がされており、このお面をつけると顔の周りに結界が張られ、お面をつけている側の人はお面の存在を認識しづらくなり、逆にお面をつけていない側の人にはそんな効果はなく、お面の存在を認識できるようになっている。だからお面をつけていてもつけていない状態とほとんど何も変わらないのだ。この結界がどんな仕組みでそんな効果を生み出しているのかは私にもわからない。一度結城家の当主に尋ねたことがあるが、結城家当主だけが知ることができる秘密なのだそうで教えてもらえなかった。
わざわざお面をして顔を隠す必要があるのかと慰問に思うかもしれないが、その理由は単純。私たち戦闘員の存在はあまり公にできないのだ。戦闘員は国の陰として生きる存在。昔でいうところの忍者のようなものだ。実際には忍者は特殊能力を持たない陰を生きる者のことなので特殊能力を持つ戦闘員は忍者とは少し違うが。だから通常任務も、国の重要人を陰から護衛したりこの国を害する存在の制圧を敵にばれないように行ったりと姿を見せないものばかりなのだ。本当にごくたまにだが暗殺任務を依頼されることもあり、そのせいで光側で活動する警察とは仲が最悪だ。しかし基本陰で活動する戦闘員とは異なり、「妖狐隊」は陰に隠れて任務を遂行することはない。いや、正確に言うとできない。敵が段違いに強いので一般人に存在を見せないということに気を配っていられるほど余裕がないのだ。だからせめてお面をかぶり、素顔を見せないことで誰かに見られても人物を特定できないようにした。敵に襲われそうになっている一般人を守り、敵を倒す存在がいつも狐のお面をかぶっていたことと、助けた後はすぐにその姿を消すことから人々は狐面の集団を「妖狐」と呼ぶようになった。それが村にも伝わり最強の遊撃部隊は次第に「妖狐隊」と呼ばれるようになる。これが遊撃部隊が「妖狐隊」と呼ばれる所以だ。幸い一般人に戦闘員と村の存在はばれることがなく、妖狐の話題も妖狐隊が解散すると次第に薄れていったが、村では伝説のように語り継がれ、今でも人気を誇っている。
「んで?敵さんが、あー。なんだっけ。アガペー?だっけ。そいつら、今回もじいちゃんの世代の時みたいな姿してだっけ。つか、なんでアガペー?前の時と同じで悪魔でよくね?」
本当に祥太の言うとおりだと思う。前、つまり私の祖父たちが戦った相手は「悪魔」と呼ばれていたのだ。悪魔には人間の姿をしているもののよく伝承にあるような2本の黒い角がついている。資料に載っている今現在現れている奴らも昔の記録と違わず2本の角がついているようだ。なら、なぜ上層部は名前を変えたのか。奴らが昔のそれとはまた別のものとでもいうのか。
「そう、それ。調べてみたんだけど、アガペーって古代ギリシャ語で”愛”っていう意味らしいよ。」
「愛ぃ?何それあいつらと真反対な名前じゃねーか。」
昼斗の発言にますます疑問が深まったというように祥太が首をかしげる。愛、なんでそんな言葉が奴らに。
「まあ、考えてても仕方ない。次移るよ。まず、この資料の2ページ目なんだけど・・・」
疑問は残るが、今考えても解決するようなものではないだろう。脳みそがくさったやつらが考えていることなんてわかりやしない。だからさっさとアガペーの目撃情報の確認に話題を移すことにした。
なんだか懐かしい気分だ。学園にいたころよく3人で集まっては学園から課された課題に意見を出し合って取り組んでいた。最初は同い年だったこともあり私と祥太の2人で行動していたが、気づいたら2つ年上の昼斗と3人で行動することが増えた。学園が始まって以来の天才だともてはやされていた私たち3人においそれと近づこうとする人がいなかったこともありそれ以来ずっと3人で行動していた。けれど学園の生徒たちとは違い、今年の4月に史上最年少の12歳で入隊した私と祥太とそれに近い14歳で入隊した昼斗に各地域の戦闘員たちは興味津々で、入隊してから1か月、それぞれの地域に配属されてからは彼らの相手をしていたこともあり任務の定期報告でしか会うことはなくなっていた。
特殊能力とは神から授かりし力とも言われており、その言葉通り科学的に証明できない”妖力”という特殊なエネルギーを生まれながらに刻まれた自分の技に変換して出力することができる力のことだ。特殊能力の系統は家系によってきまっていて、個人差はあるものの、その系統から大きく逸脱することはない。いわゆる「相伝」というやつだ。”歌”の特殊能力を持つものが作詞、作曲した曲をどれだけ完璧に歌い上げることができるかで発揮できる攻撃力の強さが決まり、またその曲調や歌詞、リズムによって攻撃の仕方が多様に変化する非常に扱いづらいが使いこなすと近中遠距離のオールラウンダーとして最強の戦力になる”歌”の特殊能力を持つ私、そして敵のあらゆる情報を読み取り、”解析”して的確に弱点を見極め最短距離で急所を狙う情報処理のエキスパート、”情報解析”の特殊能力を持つ祥太、最後に雷、雨、強風など”天候”を座標を指定して自由自在操ることができる”天候操作”の特殊能力を持つ昼斗。私たち3人もそれぞれ十鬼家(母、辻本琴音の実家)の”歌”、石黒家の”情報解析”、天羅家の”天候操作”の相伝を継いでいる。が、その相伝の能力が代を重ねるにつれ弱くなってきている今の世代と反対に私たち3人は先祖返りとでもいうように強くその能力が出ている。生まれ持った才能だろうとねたまれようとへこたれなかった私たちは互いに高めあって努力を重ねた。その結果が妖狐隊に選出という結果につながっているのだろう。
資料の確認はつつがなく終わり、さらに詳しい情報を集めるため明日から各地区に調査しに行くことに決め、万全な状態で明日を迎えるためにも無駄話もせずにお疲れと互いに挨拶をして会議を終了させた。
小説投稿初心者なのでキーワード設定でどれを設定すればいいのかわからない状態です。もしこれは外したほうがいいんじゃない、またはこれ増やしたほうがいいんじゃないというご意見ございましたら教えていただけると嬉しいですm(_ _"m)




