16.調査 中部地区編2
入ってきたのは1人の女性だ。身長が高く、脚がすらっとのびていてスタイルの良さが際立っている。おまけに顔もいいときた。・・・この人が?厄介オタク気味の変態隊長???。・・・人は、見かけによらないらしい。
そんなことより、だ。いつもならここでお面を外して挨拶する。いくら任務中と言ったって相手は戦闘員だし、なんなら地位の高い隊長だ。礼儀はわきまえないといけない。だが今回ばかりはそうはいってられない。このお面を外した矢先、至近距離で洗脳をかけられでもしたらたまったものじゃない。
「初めまして。妖狐隊の辻本莉緒です。」
「同じく妖狐隊、石黒祥太です。」
「同じく、天羅昼斗です。」
無難に自己紹介すると向こうも返してくれた。
「これはご丁寧に。私は広瀬綾乃。中部地区の隊長よ。よろしく。」
浅野さんから聞いていたような雰囲気じゃない。いや、さすがに初対面だから隠しているのか?それとも本当に乗っ取られているのか?・・・私には判別がつかない。祥太、頼んだぞ。
ちらりと横目で祥太のほうを盗み見るとじっと広瀬さんを見つめている姿が確認できた。解析中か?でもそれにしては時間がかかってる。
「・・・?」
祥太がぎゅっと眉根を寄せて険しい表情をしたのをみて解析が失敗したことを察した。驚いた。あの祥太が解析できないとは。やっぱり本当に乗っ取られているのか。確証が欲しい。何か、手はないか。
「よろしくお願いします。まさか女性の方だとは思いませんでした。僕が以前所属していたところの隊長から中部地区の隊長は格闘技がとてもお得意だと聞いていたので。彼女ほどの近距離戦闘の実力者でも手合わせの際、毎回負けていると聞いていたものですから、驚きました。」
どう対応すべきか迷っている間に昼斗が対応してくれた。そうか、確かにあの情報ならいけるかもしれない。
「まあ、そうなの。確かに女性で”格闘”系の能力で上まで上がる人はほとんどいないものね。あなたの元所属先はどこなの?」
「近畿地区です。」
「ああ、近畿地区なのね。でもあそこの隊長も同じ女性なのだから”格闘”を専門としていて、より近接戦が得意な私が負けるわけにはいかないもの。」
・・・かかった。ああ、やっぱりこの人はすでに、
「・・・そうですか。残念です。」
乗っ取られている。
***
昼斗が座っている位置から予備動作なくナイフで攻撃にかかったが、それは少しかするだけで避けられてしまった。なんて反射スピード。
「・・・なんで、わかったんだい?かなり完璧な擬態だと思ったんだが。」
私たちにばれたことを悟ったらしい相手がようやく化けの皮を脱いだ。姿かたちや声は中部地区の隊長のまま、しぐさや口調が知らない男のそれになる。
「近畿地区の隊長は生物学上は男性ですので。隊長であるあなたが知らないはずがないでしょう?」
「!・・・男性?いや、会議の時は姿も声も確実に女性だったが。」
近畿地区の隊長の趣味は女装である。ただし中身は立派な成人男性だ。その女装という趣味をさらに広げ女性の声まで会得して、それを潜入や普段の任務に活かしてしまうのだからそこは尊敬してしまう。それくらい完璧にあの人は外から見ると”女性”に見える。ちなみに近畿地区の隊長が実は男性であるということを知っているのはごく一部である。だから昼斗はここの地区以外の人とたいして交流していないこいつはその情報を知らないと踏んで鎌をかけたわけだ。そして見事成功させた。
「・・・なるほど。さすがは”妖狐隊”。一筋縄ではいかないな。だが、なぜ私が中部地区の隊長ではないと最初から警戒していた?」
そうでないとお前らが洗脳にかかっていない理由を説明できない。そう言う相手にやはり最初からこちらが疑ってかかっていたことがばれていたことを悟る。
「とある筋から中部地区隊長の様子に少し違和感を感じると報告を受けまして。」
「・・・。なるほど、オンライン会議内でか。つくづく厄介なものを生み出してくれたな。」
するりと祥太に視線が向けられる。そんなところまで、把握されているのか。
相手が戦闘態勢に入ったのがわかった。それに合わせてこちらも警戒を高める。この応接室は広くない。どこかのタイミングで演習場か外のほうに出られればいいんだけど。いや、それだとここにいる戦闘員たちが危ない。じゃあ、どうするか。うまくいく確証はない。それでも、被害を最小限に抑えるためにここの空間を広げる!!私は思いっきり空気を吸って能力を発動させる準備に入った。




