15.調査 中部地区編1
中部地方の拠点は長野県の山奥だ。山奥にあるのは私たち戦闘員の故郷である村を想像させるが、さすがに村ほど規模は大きくない。が、なかなか大規模な拠点がそびえたっている。
「初めてきたけど、東北と同じくらいでけぇな。」
中部地区は東北地区と同じく広い範囲を少数精鋭で守っている。精鋭たちがのびのびと訓練できるよう、ほか地区と比べて拠点は大きめだ。
今までは事前にそれぞれの隊長にいついつにそちらに伺います、というメールを上層部伝手で送っていたが、今回は関東地区からそのままの足で中部地区に上陸するという電撃訪問を行っている。もちろん上層部には連格したがまだ妖狐隊が中部地区の拠点に来るという情報はあちら側にわたっていないだろう。メール1つを送信するだけでもハッキングの心配をしないといけないとかでいろいろ面倒なのだそうだ。だから今回は拠点入り口にてお出迎えの人もいない。いや、電撃訪問した私たちも悪いけど、それもそれで困る。入れないんだけど。
仕方ないから少し待つことにした。ここの拠点、というかどこの地区の拠点もそうだと思うけど基本的にインターホン的な呼び出しできるものがないからこうなったら気長に待つしかない。
「どうだろうね。浅間さんの杞憂ならいいんだけど。」
本当に昼斗の言う通りだ。正直民間人に被害が出る前に倒してしまいたい気持ちは強いが、隊長クラスが乗っ取られているとなるとかなり危険だ。できれば浅間さんの勘違いであってくれ。
遠くから、正しくは拠点の中から駆け足が聞こえてきた。
「お、来たみたいだな。」
祥太がそういった直後、拠点の扉が勢いよく開く。
「お、おま、たせ、しました・・・!」
「!!すみません。突然の訪問で。」
「急がせてしまって申し訳ありません。」
「ああ、その点ではこっちの落ち度だ。すみませんでした。」
メールを受け取ってかなり急いできてくれたのだろう、息切れしながら扉を開けてくれたその人に謝罪をする。
「いえ!!とんでもない。とりあえず応接室までご案内します。」
あ、自分この地区の副隊長をやっております、平田といいます。そう言って私たちに笑いかけてくれたこの人はどこか困ったように眉を下げた。
***
「その、応接室にお連れしても隊長はまだ来れないと思うんですが・・・。」
先ほどの困った表情はそういうことか。申し訳ありません、と軽く頭を下げる平田さんに焦って口を開く。
「いえいえ、私たちも急に押し掛けたようなものですから。むしろこちらがすみません。」
そりゃそうだ。隊長だって暇じゃない。急に押し掛けても対応できないだろう。
そうしている間に応接室に到着した。
私たちにソファに座るよう促すと平田さんは少しお待ちください、すみません。と頭を下げて足早に応接室から出て行った。
「・・・。」
「どうしたの?なんかあった?」
祥太が今さっき平田さんが出て行った扉をじっと見つめているのに気付いた。
「いや、なんか違和感っつうか・・・?」
「「!!!」」
何か気になることがあったらしい。
「どんなことでもいい。教えて」
昼斗の真剣な声に促され祥太がつぶやく。
「・・・なんかほんとにかすかになんだが、混ざりものの気配がする、気がする。」
混ざりもの。
私たちに宣戦布告してきたやつが人の体を乗っとって活動しているかもしれない、というのはあくまで推測の域に過ぎない。浅間さんが感じた違和感を聞いたときにそれが一番可能性があると考えた。だが正直不思議だったのだ。なぜ浅間さんが違和感を感じることができて、一番近くで活動している副隊長や中部地区の戦闘員が気づかないのか。中部地区は精鋭が集まっている。もし自分たちの隊長が何者かに乗っ取られていたら真っ先に気づくだろう。だから浅間さんはただの勘違いかもしれないといったのだ。けれど、今の祥太の発言である可能性が一気に高まった。
「ここの拠点自体が乗っ取られているかもしれない。」
私のつぶやきに2人が考え込むようにして伏せていた顔を上げる。
「ああ、そうか。”拠点自体”の乗っ取り。確かにそれなら説明がつく。」
この地区の戦闘員個々に乗っ取るための術をかけるのはコスパが悪い。いくら何でも1日2日で人の思考の洗脳に近い乗っ取りという難易度が高くそれなりに時間がかかる術をここの戦闘員全員にするには時間がなさすぎる。でも、拠点自体にその術をかけてしまえば?拠点の中に入った人間に自動的に術がかかるように設定してしまえば。最初に莫大なエネルギーが必要になるだろうがそれさえクリアしてしまえばあとは待つだけ。祥太のいう”混ざりもの”はそれだろう。間接的に術をかけているから術のかかりは薄いが、あちらにとっては隊長の言動に対する違和感を感じる心さえ消してしまえればいい。
「拠点に術がかかっているなら、僕たちにもかかってるんじゃない?その洗脳。」
険しい顔で昼斗が尋ねる。
「かかってるだろうね。でも、私たちはすでに隊長が乗っ取られているのではないかという疑惑を持ってここの拠点に来たってこととまだ入ってそんなに時間がたってないこと、それに今はこのお面をつけてるでしょ。」
私はそう言ってつけていたお面をコンコンとたたく。このお面には結城家特性の結界が張られている。物理攻撃ではないが、たしかそういう類の攻撃にも多少耐性があったはず。
確かに。と頷く2人を見て、
「とにかく隊長と接触したとき私たちは何も気づいていない演技をしよう。どこまで通用するかわからないけど、あっちの出方をうかがいたい。あと、私たちの予想が当たっているかはわからないしね。」
2人から了承の声が上がる。
「!!足音だ。来たぞ。」
祥太から報告が入る。
コンコンという音がして失礼します。と声がした直後、応接室の扉が開かれる。中部地区隊長のお出ましだ。




