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その狐は平穏な日常を冀う  作者: ちゃも
《第1章》
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14.調査 関東地区編

任務は急ピッチで進められる。次に3人が出向いたのは関東地区だ。ここの隊長とは3人ともすでに知り合いである。この3年間で代替わりはしていないため関東地区隊長は浅間俊のままだ。


実は私が妖狐隊に所属する前までの所属先はここ、関東地区だ。学園で飛び級試験を受けて以来の再会だったが、向こうも私のことはよく覚えてくれていたみたいで、ずいぶんと気にかけてもらった。主に体調面で。自分で言うのもなんだが、なぜ学園内で異例の3年間分の飛び級をして最年少で選抜試験を受けるに至った私が東北地区や中部地区のような精鋭部隊に配属されなかったのか。その理由はそこにある。


私の”歌”の能力はとてつもなく強い反面、その扱いにくさも尋常ではないことはもうみんなわかっているだろうけど、実は私の場合はそれだけではない。先々代、先代の”歌”の能力者はそんなことはなかったらしいのだが、私は生まれつき気管支が弱いのだ。幼いころからの訓練のおかげで激しい動きをしても気管支に影響が出ることはほとんどなくなったが、”歌”による消耗についてはそうもいかなかった。歌を何時間も歌い続けると気管支が狭まり、喘息のような症状が出てしまうのだ。コントロールすれば問題はないが万が一の場合が怖いということで、全地区の中で一番面積が狭くかつ病院がたくさんある関東地区に配属されたのだ。


東北地区での、どこにいるかわからないから気をつけろという忠告を忘れたわけではないが、正直私はここにはいないと思っている。だってもともと私が所属していた場所だ。1か月間とはいえ、誰かが乗っ取られていたらすぐ気づけるくらい濃い関係を築いた自覚がある。さあ、いざ拠点へ!!

***


今回は送り迎えをしてくれる事務員さんはいない。あんな密室空間でその事務員さんが万が一にも乗っ取られでもしていたら反応できずにやられてしまうかもしれない。それだけは避けなければいけないので私たちの移動手段は電車と徒歩だ。やってきたのは茨城県北西部。相変わらず規模の大きい拠点だがそれでも東北地区ほどではない。入り口近くまで行くとすでに人が立っていた。


「よう!久しぶりだな!」

「浅間さん!」


お久しぶりです!と駆け寄っていく。久しぶりと言っても2週間と少し程度だが。


「浅間、さん・・・?」

「・・・まじか。」


・・・うん。そうだよね。私も学園を出て初めて会ったとき2人と同じ反応をしたよ。


「おう。久しぶりだな!元気にしてたか!!」

「いや、ムッキムキだなおい!!!」


私たちに手を抜いていたとはいえ飛び級試験の際に負けたと感じた浅間さんはこのままではだめだと思い自分の長所と短所を改めて見つめなおし、長所は徹底的に伸ばし、短所は克服に挑んだそうだ。その結果が、これ。浅間さんの長所である圧倒的”力”を最大限使うために体を鍛えなおしたのだそうだ。学園であったときからすでにマッチョだったのに今ではそれを超え、もはやゴリラの領域だ。実際にあの時よりも格段にパワーは上がっており、浅間さんのゴリラパンチは一度受けたら防御をしたはずなのにしばらくあざが消えなかった。


はっはっは!そうだろう!!といって自慢の筋肉をキラキラ目を輝かせる2人に見せびらかしている浅間さんをじっと観察する。・・・うん。この人は乗っ取られてない。いつもの浅間さんだ。あんなに自分の筋肉筋肉について人に語れるのはあの人しかいないだろう。


熱心に浅間さんの筋肉自慢話を聞いている2人に声をかける。


「祥太と昼斗はそこまでになんなくていいからね。」

「え~!!俺も筋肉つけたいんだけど。」

「僕も、ちょっと興味ある・・・!」


祥太はともかく昼斗が興味示すとは。あんたファッションモデルの息子だろうが。ボディービルダーでも目指すのか?


「筋肉は重いんだよ?祥太も昼斗も素早く動かないといけないし、何より昼斗は遠距離攻撃することのほうが多いでしょうが。」


私の言葉に確かに・・・。と頷く2人を見てよし、と顔を浅間さんのほうに向ける。


「応接室までお願いします。」

「辻本も俺のここの筋肉の、」

「いりません。時間ないので早く行きましょ。」


辻本が酷い・・・。とめそめそ泣きまねをしている筋肉ゴリラを軽く押すと私たちは応接室に向かって歩き始めた。


「なあ、あんな人だったか?浅間さん。」

「飛び級試験の時はだいぶ猫かぶってたみたいだよ。」


***


応接室のソファの上、私たちは資料に目を通す。


「特に変わった事例はありませんね。」


一通り読み終えてそう浅間さんに聞くと、深い頷きが返ってくる。


「ああ、俺も虎からの報告聞いてから戦闘員全員を確認したがそれらしいやつはいなかった。それにアガペーのやつらの強さもこっちで対応できる範囲内だ。」


関東地区の戦闘員全員を大事にしてくれている浅間さんの言葉だ。信用していいだろう。


「だが、一つ、気になることがあってな。」

「・・・なんでしょう。」

「虎のやつ、全地区の隊長全員を集めての緊急オンライン会議をやって今回のその宣戦布告の件を報告してたんだが、1人少し気になったやつがいてな。」


気になったって言ってもほんの少し違和感感じる程度だったしほかのやつらは何も言ってなかったから俺の思い違いかもしれないが・・・。と頬をかきながら言う浅間さんにそれでもいい、教えてくださいと迫る。


「うお、わかったって。言っとくけど俺の思い違いの可能性は高いからな。・・・中部地区の隊長なんだが、変態度がいつもよりましだったんだよ。」


「「「・・・・・・・・・は?」」」


***


曰く、中部地方の隊長は自分よりも強いと認めた相手には厄介オタクになるそうでその対象がいる前回の会議の際、厄介オタクの言動はしていたがそれが少しいつもの勢いより弱めだったのだそうだ。と言っても腐っても隊長格。かなり重要な案件だったこともありいつもの変態ブームもなりをひそませていた可能性もあるらしい。いや、なんだよそれ。厄介オタク・・・。自分が興味の対象になるかはわからないが積極的には関わりたくない。でも、これも任務だ。やるしかない。


「う~ん。それは実際行ってみないと何ともいえねぇな。」

「そうだね。僕らは会ったことないからその言動から見分けられるかはわからないけど、こっちには祥太がいるんだ。」


昼斗の言う通りだ。こちらには”情報解析”の祥太がいる。どれだけ人を乗っ取るのがうまくても祥太の目はごまかせない。


「なら、安心だな。まかせたぞ、妖狐隊。」

「「「はい!!」」」


そうとなったら急いで中部地区に向かわなければ。挨拶をしてからその足で中部地区行きの電車に乗り込む。電車内で仮眠をとって休憩したらきっとあっという間だ。

更新が遅くなってすみません。リアルが忙しくなってきまして・・・。今後もこのように予告なく数日、数週間投稿できない日があるかもしれませんが、亀ペースでも完結までこぎつけるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!!!

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