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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

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第98話 ここが——我らの新天地になります

武蔵・大会議室。


会議には、いつものメンバーに加えて村上武吉も参加している。


北沢が口を開いた。

「ポルトガルがマカオ、スペインがマニラまで進出していると聞いて——織田殿も、この国の危うさを、肌で感じ取っておられるようですね」


桐山が頷いた。

「良い流れかと」


北沢は、そこで村上武吉の方を見た。

「これからは——村上殿にも、こうして会議に加わっていただきます。なにか、お考えのことはありますか」


武吉は少し姿勢を正した。

「畏まりました。実は——一つ、お願いがございます」


「なんでしょう」


村上武吉が口を開いた。

「由良湊では、我らの船を蒸気船と呼んでおります。そろそろ——船に、正式な名を頂戴したいのですが」


北沢は少し考えた。

「そうですね。藤林殿の部隊が——海神《わだつみ》衆。であれば、蒸気船は——海神《わだつみ》丸、というのはいかがでしょう」


武吉の目が輝いた。

「海神《わだつみ》丸——それはいい。ぜひ、その名を頂戴したい」


武吉は、しばらくその名を噛みしめるように黙っていた。

田村の指導のもと、必死に操船の練習を繰り返してきた日々が、脳裏をよぎった。


こうして会議の一員として席を与えられ、船の名まで授けていただいた。

やっと——一人前として認めていただいた。そう思うと、胸の奥が熱くなった。


「これで——我らの船にも、誇るべき名がつきました」

武吉の声は、わずかに震えていた。


「北沢殿の——配下として、これからも励む所存にございます」


「これから海神《わだつみ》丸には、大いに活躍してもらわねばなりません、よろしくお願いしますね」


「はっ」


***


「では、先に進みます。橘さん——海神《わだつみ》丸ですが、何人乗せられますか」


「単純に乗組員を百名とし、石炭三十トン、三ヶ月分の食料と水、農具や種を積むだけなら——百名から百五十名を乗船させることができます。ただし——食料を何ヶ月分積むかによって、乗せられる人数は変わります」


「なるほど——条件の設定しだいということですね」


少し間を置いて、北沢は続けた。

「ややこしい計算は——鶴田さんに、お任せしましょう」


「そうですね」


北沢は頷き、話を先に進めた。

「橘さん——現時点では、何隻完成していますか」


橘は、誇らしげに答えた。

「二十隻です」


「二十隻とはすごいですね。よくぞ、作っていただきました」


「うち十隻は、織田殿から頼まれた船です。九鬼衆に乗り込ませるらしいです」


「九鬼衆も訓練を頑張っていましたからね。まさか——いきなりマカオやマニラに乗り込んだりはしないと思いますが」


桐山が言った。

「それに関しては、まずは琉球まで何度か往復するようです。由良湊から琉球まで——蒸気補助を使えば三〜四日で着きますから」


「なるほど——訓練航海ですね」


「ですが——織田殿が、訓練航海に参加するとおっしゃっています」


北沢は思わず苦笑した。

「やはり、そうなるだろうな——」


「武将たちも乗船を希望している者が多いようです」


「武将たちは、物見遊山というより、ここで海軍に乗り換えておかないと、仕事がなくなると思っているかもしれませんね」


北沢が穏やかに笑った。


***


壁の世界地図を——北沢は差し示して言った。

「これから向かうアメリカ大陸の現状について——簡単にまとめておきます」


全員が地図に顔を向けた。

「これからお話しする地名や国名は——すべて、先の世で呼ばれていた名前を使います。この時代には、まだ存在しない土地の名も多くございます。地図を指しながら進めますので、場所と名前を覚えておいてください」


北沢が、指し棒を使い、地図の場所を示しながら説明を続けた。

「まずメキシコについてです。もともと、ここにはアステカ帝国という国がありました。スペインが——六十年ほど前に、この国を滅ぼしています。今は『ヌエバ・エスパーニャ』という名の植民地になっています。首都はここ、メキシコシティです」


官兵衛が聞いた。

「ずいぶん大きな国を滅ぼしたものですね。アステカ帝国とは、どのような国だったのですか」


北沢は地図で範囲を示しながら説明した。

「支配地域は広く、この辺り一帯になります」


北沢は続けた。

「スペインの軍隊が——疱瘡《ほうそう》という病を持ち込みました。この地の人々には、まったく免疫がなかったのです。あっという間に疫病が広がり——人口の大半が命を落としました」


「それほどの数が——」


「はい。戦う以前に——兵を集めることすらできなくなったのです。かつては強大な軍勢を誇っていた国も、疫病により統治する仕組みそのものが崩れ、まともに抵抗できないまま、あっという間に滅ぼされてしまいました」


半兵衛は、そんなことがあるのかという顔で驚いた。

「病で国が滅んだのですか——」


北沢は地図の別の場所を示した。

「この場所にあった、南米のインカ帝国も同じです。疱瘡《ほうそう》は、わざと持ち込んだ可能性もあります。それから、ポルトガルは、ここ、ブラジルを植民地にしています」


北沢は説明を続けた。

「今のアメリカ大陸は——スペインが圧倒的に強い。メキシコ、中米、カリブ海、南米西岸と、ほぼスペインの支配下にあります。ただし——我らが目指す北アメリカ大陸のこの辺りは、まだどこの国も本格的に手をつけていません」


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