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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

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第92話 この辺りの港を——使わせていただきたい

浜松城の沖合三十キロメートルの海上。


北沢は田村の方を向いた。

「田村——レーダードローンを飛ばせ。レールガン用意」


「はっ——ただちに」


モニターの映像が——レーダードローンからの映像に切り替わった。

上空からの安定した映像が——鮮明に映し出された。


徳姫はモニターに顔を近づけた。

「空の上から——城を見ることができるのですね」


「そうです。上空を飛んでいるドローンからの映像になります」


「空を——飛べるのですか」


「詳しくは、後で桐山に聞いてください」


田村がズームした。

城の中まで——はっきりと映し出された。


「天守はないみたいですね。本丸と城門——どちらを先にしますか」


「本丸からだ。続けて城門」


「照準——完了」


「撃て」


ズドォォォン——!

モニターの中で——本丸の建物が炎を上げた。

木材が四方に飛び散り、土煙が高く舞い上がった。


「本丸——着弾確認」


「続いて城門——撃て」

ズドォォォン——!

城門が——木材を四方に飛ばしながら吹き飛んだ。


「城門——破壊確認」


徳姫は——モニターを見つめたまま、動かなかった。

(この船は——いったい、どこの船なのでしょう)


しばらくして、驚いたように口を開いた。

「この船は——城など、いとも簡単に壊せる力を持っているのですね」


徳姫はしばらく黙って考えていた。

(この船に、織田家は勝てるのだろうか)


北沢は心配そうな徳姫を見た。

「徳姫様——ご安心ください。我らは織田殿の敵にはなりません。約束します」


徳姫は北沢を見た。

「北沢殿——妾にできることがあれば、なんなりとお申し付けください」


北沢は小さく笑った。

「今は——ゆっくりお休みください。桐山、船室にご案内してくれ」


「はっ」


「大阪湾に戻る——田村、大阪湾に進路を取れ」


「はっ」


大和はゆっくりと進み始めた。


***


大和・船室。


桐山に案内され、徳姫は割り当てられた船室に入った。

侍女が、登久姫を抱いたまま、恐る恐る後に続いた。


「こちらでお休みください」


桐山が壁の小さな出っ張りに指を触れると——天井の明かりが、ぱっと灯った。


徳姫は、思わず声を上げた。

「な——」


「灯りでございます。この突起に触れるだけで——点いたり、消えたりいたします」


「火も使わずに——」


徳姫は、恐る恐る近づき、同じ場所に触れてみた。

明かりが、ふっと消えた。

再び触れると——また灯る。


徳姫の顔に、驚きと、隠しきれない興味が浮かんだ。


「もう一つ、ございます」

桐山は、壁のもう一つの装置を指し示した。


「風が出ます。夏は涼しく、冬は暖かい風が」


ふわりと、温かな風が流れ出した。

徳姫は、思わず手をかざした。

「これは——まことに、暖かい」


侍女も、恐る恐る手を伸ばし、風に触れた。

二人は、しばらく無言で、その風を浴び続けていた。


桐山は、微笑ましそうにその様子を見ていた。

「ゆっくりお寛ぎください。何か御用があれば——この箱に向かって、お声がけください」


***


天正六年十二月中旬。

千宗易の屋敷。


信長と北沢は、宗易の茶を楽しんだ後——いつもの小部屋に移動した。

小部屋で、信長、堀、北沢、桐山の四名が向かい合って座った。


信長が深く頭を下げた。

それを見て、堀も慌てて頭を下げた。


「此度は——まことに世話になり申した」


信長は続けた。

「有岡の戦では、危うい命を助けていただいた。それだけではない。敗走する毛利軍への一撃、吉田郡山城、そして浜松城への攻めまで——次々と力を貸していただいた」


信長は再び頭を下げた。

「このとおり——感謝してもしきれぬ」


「それにしても——羽柴殿は、本当に長い手をお持ちでしたな」


信長が答えた。

「徳川、信雄まで、動かしてみせましたからな」


北沢は少し間を置いて続けた。

「おそらく——武田、北条、上杉にも、手を回していたはずです。有岡で羽柴・毛利軍が有利となれば、織田殿を後ろから突かせる——そういう手筈だったのでしょう」


信長は、苦い顔で頷いた。

「奴の恐ろしさは——敵に回して、初めて思い知り申した」


北沢は尋ねた。

「羽柴、毛利、徳川は——それぞれ、どうなりましたか」


「羽柴は——有岡城にて、最後の意地を示し申した」


信長は続けた。

「徳川は、浜松城を壊されて震え上がり、降伏いたした。処遇はこれからでござるが——所領のほとんどを召し上げることになりましょう。毛利も、似たようなものになるはずです」


「お役に立ててよかったです。ところで北条、武田、上杉の状況はいかがですか」


「武田と上杉は——臣従しそうだが、北条は渋っておるようです」


北沢は少し考えた。

「小田原城は、誰にも落とせぬと思い込んでいるのでしょう。これから——小田原城を叩いてきましょうか」


信長が穏やかに言った。

「いえ、さすがにそこまでは——。武田と上杉が臣従すれば、北条も諦めるはずです」


「それも、そうですね」


「北条が臣従すれば——残るは九州と奥羽と陸奥のみ。残りは小粒な大名ばかりでござる。後は信忠と明智に任せられます」


「茶を楽しむ時間が増やせそうですね」


信長はにこやかに笑った。

「ところで——この度のお礼がしたい。ご希望の領地はございますか」


北沢は桐山を見た。

「であれば、桐山——お見せしてくれ」


桐山は懐から地図を取り出した。

いつもの手書き風の地図だった。

信長と堀が身を乗り出した。


北沢は地図の一点を指した。

「領地というか、この辺りの港を——使わせていただきたい」


堀が言った。

「そこは——紀伊国・由良湊《ゆらのみなと》でございますな」


信長はしばらく地図を見つめていた。

「由良湊か——雑賀衆が壊滅した今、あのあたりは空白じゃ。構いませぬ」


信長が不思議そうに尋ねた。

「して——由良湊で何をされるおつもりか」


北沢は穏やかに答えた。

「大きな船を作ろうと思っています」


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