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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

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第90話 見事な最期であった

摂津国。敗走する毛利軍。


吉川元春は馬を進めながら、後ろを振り返った。

有岡城が——遠ざかっていた。

(羽柴秀長殿よ——見事な最期を遂げられよ)


その時——。

ドォン——!

突然、轟音が響いた。


元春は思わず馬を止めた。

行軍する毛利軍の中央に——黒い閃光が走った。


ズドォォォン——!

轟音とともに地面が抉れた。


土砂と砂埃が——空高く舞い上がった。

衝撃波が四方に広がり——周囲の兵が次々と吹き飛んだ。


「な——なんじゃ——!」


「逃げろ——!」


毛利の兵が——四方八方に散り始めた。


元春は暴れる馬から飛び降りた。

(徳川や北畠で起こった爆発は、これか)


元春はしばらく、黒い煙が立ち上る空を見上げていた。

音もなく、姿もなく、ただ雷のごとき一撃だけが、天から降ってくる。

人の技とは、到底思えなかった。


(これは——織田に逆らうな、と。神仏が——そうおっしゃっておられるのか)


横で——小早川隆景が立ちすくんでいた。

その顔から、血の気が引いていた。


隆景は震える声で口を開いた。

「兄上——これは、人の力を超えたものにございます」


「わかっておる」


隆景は、声を絞り出した。

「神仏の加護がある者には——勝てませぬ。織田に——下りましょう」


元春はしばらく黙っていた。

脳裏に、勇ましく戦ってきた、これまでの記憶がよぎった。

だが——今この目で見た光景の前では、その記憶さえ色褪せて見えた。


やがて——ゆっくりと頷いた。

「とにかく、吉田郡山城まで戻ろう。重臣たちとも相談せねばなるまい」


煙が——静かに空に溶けていった。

それを見上げる元春の胸に、抗いようのない諦念が、静かに広がっていった。


***


翌朝。

武蔵・ドローン操縦室。


東の空が、白み始めていた。

モニターには——瀬戸内海が映し出された。


朝日を受けた海面が——きらきらと光っていた。

戦国時代の瀬戸内海は——恐ろしいほど穏やかだった。


操縦士・木村一飛曹がモニターを確認していた。

「映像——乱れも異常もなし。順調に飛行中であります」


中島二飛曹がモニターを覗き込んだ。

「それにしても——穏やかな海ですな」


「戦国時代ですからな」


「このまま行けば——江田島の上を通りますね」


木村が目を細めた。

「江田島か——懐かしくありますな」


「木村殿は、江田島に行かれたことがおありですか」


「呉に向かう途中で、何度か上空を飛んだことがあります。あの赤レンガの兵学校が見えると——なんとも言えぬ気持ちになったものですよ」


中島が頷いた。

「自分も一度だけですが、行ったことがあります」


しばらく——二人はモニターを見つめていた。


やがてドローンが——広島上空に差し掛かった。

「広島上空——通過します」


広島出身の中島が、じっとモニターを見つめた。

緑の山々が——朝の光の中に広がっていた。


中島が呟いた。

「転移する前に——B29が広島に向かいましたね」


木村は黙っていた。


「あれから——どうなったのでしょうか」


木村が小声で答えた。

「自分も、気になっていました」


周りでモニターを見ていた操縦士たちは、そのことを思い出したようで、誰も口を開かなかった。


木村が続けた。

「だからこそ——この国の未来を変えねばならん」


中島は頷いた。

「しっかりと、任務を果たしましょう」


「承知!」

モニターの中に——吉田郡山城の輪郭が映り始めていた。


***


吉田郡山城。


木村はモニターを見つめた。

「まだ朝が早いからか——城の外には人の姿は見えませんね」


中島が落ち着いた声で言った。

「ほとんどの兵が有岡城に向かったのでしょう。城内は——がらんとしています」


「山全体が城ですな。本丸は——あの山頂の所ですかな」


「そうですね。石垣と土塁に囲まれています。茅葺きの御殿と——見張り用の櫓が見えます」


「よし——本丸に向けて一発」


木村が照準を合わせた。

「照準——完了」


「発射」


シュッ——。

ミサイルがすっと飛び出した。


一瞬の後——。

ドォン——!

本丸の建物が——炎を上げた。


茅葺きの屋根が吹き飛び、木材が四方に散った。

見張り用の櫓が——傾いた。

石垣の石が、山の斜面を転がり落ちた。


「本丸——着弾確認」

「次——大手門を頼むぞ」


中島が照準を合わせた。

「照準——完了」

「発射」


シュッ——。

ドォン——!


山麓の大手門が——木材を四方に飛ばしながら吹き飛んだ。

土煙が——朝の光の中に高く舞い上がった。


「大手門——破壊確認」


木村は言った。

「引き上げましょう——これで毛利の心が折れてくれるといいですね」


攻撃型ドローンが——向きを変えた。

朝の光の中に——吉田郡山城から煙が上がっていた。


***


有岡城を囲む織田陣営。


夜明けの光が——城の周囲を照らしていた。

信忠と光秀の兵が——有岡城を取り囲んでいた。


大手門の前には——明智光秀が、明智家の精鋭を率いて陣を張っていた。

光秀はじっと城を見つめていた。

(羽柴秀長——どう出る)


兵たちの間にも、いつもとは違う張り詰めた気配があった。

ただの謀反ではない。


主君に、長きにわたり毒を盛り続けた——それが、羽柴という家であった。

光秀の心には、静かな怒りが満ちていた。

(上様に、あのような手を使うとは——武士の風上にも置けぬ所業よ)


光秀は、腰の刀に手をやった。

(手加減はせぬ。これは——正義の裁きぞ)


***


有岡城・羽柴軍。


羽柴秀長は残った千の兵を見渡した。

「皆のもの——ここまでよく付いてきてくれた」


秀長は将兵の顔を見回した。

「金ヶ崎では——酷い目に遭うたのう。その方たちが頑張ってくれねば、兄者も儂も生きてはおらなんだ。このとおり感謝する」


誰も口を開かなかった。


「羽柴の意地を見せつけてやるぞ。相手は明智光秀——相手にとって不足なし」


秀長は刀を抜いた。

「思う存分——暴れるが良い」


「おおーっ——!」

鬨の声が——有岡城に響いた。


「いくぞ——!」


***


ギィィ——。

大手門が——ゆっくり開いた。


千の兵が——光秀の精鋭に向かい、一直線に走り出した。

「鉄砲など不要。刀と槍で勝負じゃ」


刀と刀。槍と槍。

ワアアアア——!


鬨の声が——朝の空に響き渡った。

ガキン——ガキン——。


刀がぶつかり合う音が——続いた。

明智の精鋭は——手強かった。


しかし羽柴の兵も——一歩も引かなかった。

死にに来た者の強さだった。


***


一刻が過ぎた。

戦場が——静かになり始めた頃。


「羽柴秀長——討ち取ったり——!」

その声が——朝の光の中に響いた。


明智の陣から——どっと鬨の声が上がった。

光秀は静かに馬上で目を閉じた。


(秀長——見事な最期であった)


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