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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

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第88話 殿——天下をお取りください

大和発令所。


北沢はドローンの映像を見つめながら言った。

「藤林殿と繋いでくれ」


「繋ぎました」


「藤林殿——織田本陣の爆発を見ましたか。動揺している隙を狙って、羽柴秀吉と毛利輝元を狙撃してください。討ち取れなくてもいい。傷を負わせれば十分です。狙撃後は黒田殿とともに、戦場を離脱してください」


「承知しました」


「次は——黒田殿に繋いでくれ」


「繋ぎました」


「黒田殿——藤林殿が、羽柴秀吉と毛利輝元を狙撃します。黒田勢は、秀吉を助けに行くと見せかけて近づき、秀吉の首を上げてください」


「承知いたした」


「ただし——首を上げたら、即座に離脱を。狙撃の後、周囲は騒然となります。長くとどまれば、黒田勢が窮地に陥りかねません。首を得次第、海神《わだつみ》衆とともに、速やかにお引き上げください」


「毛利輝元の首は——いかがいたしましょう」


「そちらまで手を伸ばす時間は、残されていないでしょう。秀吉の首のみで、十分です」


「承知しました」

通信が切れた。


***


羽柴・毛利陣営。


羽柴秀吉の陣と毛利輝元の陣は——混乱に包まれていた。

突然の轟音が二度、織田軍の方から響いてきたからだ。


続いて、土砂と砂埃が——黒い柱のように空高く舞い上がるのが見えた。

秀吉は、何が起こったのかわからないまま、じっとその様子を注視していた。


それは秀吉だけではなかった。

徳川と北畠の裏切りを、密かに知らされていた羽柴・毛利の主だった武将たちも——同じように呆然としていた。


秀吉は呟いた。

「なんだ——織田本陣の方で、いったい何が起きておるのじゃ」


輝元も大声で命じた。

「羽柴殿に使者を送れ。これは一体どういうことか——大至急、聞いてこい」


その時——蜂須賀正勝が、秀吉のもとへ駆けてきた。

「殿——徳川と北畠の陣が、崩れ始めましてございます。ここは、いったん姫路まで引かれますか」


前線で兵を率いる将たちからも、指示を仰ぐ使者が、次々と駆け込んでくる。

羽柴・毛利の両陣に——動揺が、波紋のように広がっていった。

秀吉も、輝元も、織田本陣近くで起きた異変の正体を、必死に見極めようと必死だった。


***


羽柴秀吉の陣の後方の林。


藤林が戦況を確認しながら、ゆっくりと手を上げた。

海神《わだつみ》衆の二十名が——銃床《じゅうしょう》を装着し銃身の延長をつけた南部十四年式を構えた。


「サイレンサーも忘れるな。見つからないよう二手に分かれて——秀吉と輝元を狙え」


「はっ」


***


羽柴秀吉の陣。


秀吉は物見台に立ち——じっと戦況を見つめていた。

蜂須賀正勝も横に立って、心配そうに織田軍の方を睨んでいた。


一方、海神《わだつみ》衆は身を隠しながら、秀吉に少しずつ接近していった。

気配を消して忍び寄るのは、忍びの得意とするところだ。


中忍が指示を出した。

「撃て」


乾いた音が連続した。

パス——パス——。

秀吉に向けて、十発の弾が飛んだ——その瞬間。


「殿——!」

蜂須賀が身を挺して飛び込んだ。


蜂須賀の腹に——弾が数発当たった。

「ぐっ——!」


蜂須賀が倒れた。

秀吉も肩と腕に弾を受けていた。


「な——なんじゃ——!」


海神《わだつみ》衆は、混乱に紛れて姿を消した。


***


毛利輝元の陣。


毛利輝元も戦況を確かめようと、慌てて物見台に上がっていた。

軍を引き上げるべきか、必死に考えていた。


パス——パス——。

乾いた音が連続した。


輝元は胸に——弾を受けた。

しかし、しばらくの間、立ったままだった。

やがて——静かに崩れ落ちた。


「輝元様——!」

「殿——!」


毛利の将兵が——一斉に輝元のもとに駆け寄った。

輝元は——動いていなかった。


任務を終えた海神《わだつみ》衆は、音もなく姿を消した。


***


羽柴秀吉の陣。


蜂須賀正勝が——地に倒れていた。

秀吉は正勝の傍らに膝をついた。

「小六——死ぬな」


正勝は薄く笑った。

「某はもうだめです……。殿——天下をお取りください」


秀吉の目に——涙が光った。

「小六——!」


正勝は——動かなくなった。

秀吉はしばらく正勝を見つめていた。


やがて——ゆっくりと立ち上がった。

「おのれ——信長」


秀吉は、破り取った袖で、傷口を縛った。

「なんのこれしき、戦場では気弱になった方が負ける」


家臣が駆け寄ってきた。

「殿——黒田職隆殿が、黒田勢を率いて参りましたぞ」


「職隆殿が——」


秀吉は、少し違和感を感じていた。

(黒田勢など、呼んでおらぬが)


「通せ」


黒田職隆が、黒田勢を率いて駆けてきた。

「殿——ご無事でございましたか」


秀吉は、努めて柔和な笑みを浮かべた。

「職隆殿——よう参られた。黒田家の忠義、しかと見届けたぞ。持ち場へ戻られよ」


職隆は首を振った。

「それは——できませぬ」


秀吉の目が細くなった。

その瞬間——職隆の目の色が変わった。


「羽柴殿——申し訳ござらぬ」

音もなく——刀が抜かれた。


「ぐ——!」

秀吉が崩れ落ちた。


「殿に何をする——!」


「裏切り者——!」


近くにいた羽柴の兵が動こうとした——。

黒田勢が、素早く職隆の周囲を囲んだ。


パス——パス——パス——。

押し殺したような、乾いた音が続いた。

羽柴の兵が、次々と倒れていった。


何が起きたのか、誰にも分からなかった。

官兵衛と二十人の海神《わだつみ》衆が姿を現した。


職隆が、秀吉の首を高く掲げた。

「羽柴秀吉を討ち取った。もはや勝敗は決まった——命が惜しくば、去るがいい——!」


羽柴の兵が——一人、二人。

やがて雪崩を打つように——我先にと戦場を逃げ去っていった。


「父上——ご無事で」


職隆は深く息をついた。

「官兵衛——これで良かったのか」


「こうしなければ、黒田家は生き残れませんぞ」


「そうだな——。これからどうする」


「海神《わだつみ》衆のもとへ——全力で逃げまする」


職隆は頷いた。

「皆のもの——走るぞ」


黒田勢が——海神《わだつみ》衆とともに姿を消した。


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