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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第1章 近未来編

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第5話 六年の結実

それから六年が経った。


熊野灘・KI海洋資源開発研究所 地下ドック。


紀伊半島の南端から沖へ十数キロ。黒潮が運ぶ青黒い海に、その島はひっそりと浮かんでいた。周囲を岩礁に囲まれ、漁船すら近づかない。


地上には白い研究棟が建ち並び、深海探査船が岸壁に係留されていた。

潮風にさらされた「KI海洋資源開発研究所」の看板は、すっかり島の風景に溶け込んでいた。


政府の視察団が何度か訪れ、そのたびに最新の探査成果を見せた。

補助金は毎年入った。誰も地下の施設には気づかなかった。


しかし島の地下には、別の世界があった。

エレベーターで三十メートル下に降りると、巨大な空洞が広がっていた。


天井から吊るされた作業灯が白く照らす中、二隻の巨大な艦が浮かんでいた。

全長二百五十メートル。排水量四万五千トン。

海底トンネルが外海へと続いている。


AIが設計し、大型ロボットが建造した原子力潜水艦。

一隻は戦闘艦・大和。もう一隻は工作母艦・武蔵。


完成の日、橘は地下ドックの通路を歩きながら、二人の技術者と並んでいた。


一人は松永剛、四十二歳。レールガンの開発責任者だ。元防衛省技術研究本部。

無口で、自分の作ったものへの愛着が人一倍強い男だった。


もう一人は早川奈緒、三十五歳。ドローンシステムの開発者だ。小柄だが発想は誰より速く、現場では常に三手先を読んでいた。


橘は大和の艦体を見上げながら、松永に声をかけた。

「レールガンの旋回設計はどうなった」


「さすがに高速旋回はできません。ただし上下左右にゆっくり動かせます。戦闘機のような高速機動目標にはそもそも追いつけません。ですが——直線的に移動する程度の動きであれば、レールガンでも十分に命中させられます」


「どうやって、そこまで正確に狙う」


「大和に搭載したEO・IRセンサーとズームカメラの映像を、AIがリアルタイムで解析します。目標がどれだけ小さく映っていても——形や動きのパターンから艦種を推定し、追尾し続けます。映像の中での位置の変化と、レーダーによる距離データを組み合わせれば——目標の正確な位置と移動速度が算出できます」


「艦の揺れは問題ないのか」


「ジャイロスコープで艦の動揺を常に検知し、砲の姿勢を自動で補正しています。艦がどれだけ傾こうと、砲身は狙った角度を保ち続けます」


「どこまでの距離なら狙える」


「センサーは水面近くに設置されていますから、見通せる距離には限りがあります。十キロから十五キロ程度が、確実に狙える範囲です」


「威力はどの程度だ」


「初速はマッハ6を超えます。護衛艦なら一発で仕留められる威力です」


「昔の戦艦の分厚い装甲だと、どうだ?」


「バイタルパートは貫けないかもしれません。ですが操舵や甲板を潰せば、動けなくできます」


「対空はどうなっている。レールガンでは難しいだろ」


「CIWSを搭載しています。レーダー連動のガトリング型。毎分数千発。戦闘機でもミサイルでも射程内に入れば落とせます。レールガンと違って高速旋回できる。空の脅威はこちらに任せてください」


「それで、艦体への収め方はどうなっている」


橘が確認するように聞いた。

松永は少し表情を緩めた。この話になると、この男はいつもそうだった。


「セイルの両側に格納しています。潜航中は船体に収まっていて、外からは見えません。ですが、浮上と同時に自動展開します。ハッチが開くと、砲身が起き上がる。常時即応です」


「レールガンは」


「甲板格納型です。浮上すると甲板のハッチが開いて砲身が上昇する。展開まで三十秒。潜航中は完全に格納されているので、ソナーに余計な反応を与えません」


「船体をできるだけ滑らかに保つ。それが原潜の基本だからな」


「そうです。浮上したときだけ牙を出す方式です」


橘は頷いた。

何度聞いても、この男の説明は無駄がない。


橘が早川に目を向けた。

「ドローンは、何種類だったな」


早川は少し前に出た。

「三種類です。攻撃型、偵察型、レールガン照準のためのレーダー型です」


この女は、自分の作ったものの話になると目が変わる。


「まず攻撃型から説明します。概ねこのサイズです」

早川は両手で大きさを示した。


「全長およそ一・二メートル。翼を広げると二メートルほど。ガソリンエンジン搭載です。速度は時速二百キロ。航続距離は六百キロ——遠距離の目標にも対応できます」


「搭載ミサイルは」


「アメリカ海軍が開発した世界最小クラスの誘導ミサイルを参考に設計しました。全長六十四センチ、重量二・三キロですが——炸薬と成形炸薬技術は二〇XX年代のものです。この大きさでも、同サイズの旧世代ミサイルの数倍の貫徹力があります。これを四発搭載できるよう改良しています」


「攻撃能力はどうだ」


「旧来のミサイルの数倍の貫徹力があります。甲板を丸ごと吹き飛ばすことはできませんが——直撃すれば、鋼板を貫いて内部にまで損傷を与えられます」


「操舵室やエンジンも狙えるということか」


「はっ。装甲の薄い部分を正確に狙えば——貫通して内部を破壊できます。四発同時に撃ち込めば、確実に機能を止められます」


「自爆型にはしなかったのだな」


「自爆ドローンは採用しませんでした。原潜に搭載できる台数は限られますから。このドローンは攻撃後に帰還させて回収し、整備して再使用します」


「偵察型はどうなっている」


「攻撃型と同じ機体を使っています。ミサイルの代わりに——EO・IRセンサーと五十倍光学ズームカメラを搭載します。可視光と赤外線を切り替えながら、艦種を識別できます。夜間はサーマルカメラに切り替わり、暗闇の中でも識別可能です」


「搭載しているEO・IRセンサーと、五十倍光学ズームカメラは揺れると思うがどうなのだ」


「EO・IRセンサーと五十倍光学ズームカメラは、三軸ジンバルに載せています。機体がどれだけ揺れても——センサーは目標を捉え続けます」


「位置はどうやって把握する」


「GPSの他に、慣性航法装置——INSを搭載しています。加速度計とジャイロセンサで自機の動きを常に計算し続けます。出発点の位置を入力しておけば——GPSが使えなくても、自機の位置を常に把握できます。映像は暗号化して送信します」


「レールガンの照準を合わせるための、レーダードローンとはなんだ」


「マルチコプター型です。ホバリングに特化した設計で——最大風速三十メートルを超える強風でも安定して飛行できます。偵察型と同様、EO・IRセンサーと五十倍光学ズームカメラおよびレーダーを搭載しています」


「速度と航続距離は」


「巡航時速八十キロ。最大百二十キロ出ます。航続距離は百キロ。滞空時間は約六時間。高度は最大三千メートルです」


「レールガンとの連携の仕組みはどうなっている」


「目標の捕捉方法は、大和と同じです。レーダードローンの位置は大和が追い続けます。十五キロ以内であれば、大和からドローンの位置を正確に測れます」


「そうすると大和のレールガンの射程を二倍にできるわけだな」


「そうです。ドローンが十五キロ先まで進み、そこから十五キロ先の目標を捉えれば——大和は三十キロ先まで正確に狙えます」


「わかった。最後の調整を頼む」


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