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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

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第54話 『堺に——名医現る』でいきましょう

武蔵・大会議室。


藤林は、まだ本調子ではない体を、ゆっくりと椅子に落ち着けた。

脇腹を少し気にした様子で、小さく息をついていた。


才蔵が小声で聞いた。

「藤林様、無理をなさらず——」


「案ずるな。座っているだけだ。話を聞くくらいはできる」


藤林は姿勢を正した。

昨日より、幾分か顔色は良くなっていた。


北沢は全員を見渡した。

「我らの目的は——まずは戦国時代を終わらせること。次に先の世の日本人が幸せに過ごせるようにすることだ。幸いこの世界もパラレルワールドのようだ、歴史を変更させてもらうつもりだ」


参加者から声が上がった。

「同意します」


「賛成します」


「そのために大和と武蔵を作ったのですから」


北沢は藤林に目を留めた。

「藤林殿、大丈夫ですか。無理はしないでください」


「問題ない。傷口は塞がっておる。あとは体力が戻るのを待つだけだ」


北沢は頷いた。

「無理はなさらず、辛ければいつでも席を外してください」


「かたじけない」


北沢は続けた。

「ありがとう。であれば、まず——この国の覇者に最も近い存在の織田信長という人物を確かめる必要がある」


桐山が言った。

「苦心して尾張を統一している時期ならまだしも——すでに権力者となっている織田殿に、どうやって近づくのですか」


北沢は藤林を見た。

「藤林殿、織田殿についてなにかご存知ですか」


藤林は少し間を置いた。

「儂は長くこの仕事をやっておりますので——織田様については、元服前からどのような人物なのか、よく耳にしておりました」


「どのような方ですか」


「判断力、行動力、頭の良さ、天運——すべてを持っておられる方です。私利私欲のない志をお持ちかどうかは、儂には断言できません。ただ——最近、少し様子がおかしいという話を聞いたことがあります」


「様子がおかしいのですか。権力を握った者が、自らの権力を奪われるのではという猜疑心から、変わってしまうことはよくあります。もちろん、別の原因の場合もありますが」


藤林は少し考えてから言った。

「そうであれば——しっかりと調べる必要がありますな」


「織田殿が、我らが助力すべき人物なのかどうかの判断は重要です。よろしくお願いします」


北沢は続けた。

「近々起こる大きな流れですが——弥助の話によれば、年の暮れが近い頃、毛利が本願寺に兵糧を運び込もうとする動きがあるみたいです」


「織田殿が助力するに足りる人物であると判断できれば——村上水軍と戦うことになる九鬼水軍を助力しようと思います」


藤林が心配そうに言った。

「この船は二隻だけと聞きました。大軍で押し寄せる村上水軍を——相手に戦えるのですか。毛利・村上水軍合わせて数百隻もあると聞いておりますぞ」


田村が誇らしげに答えた。

「相手にできるかどうか、ではありません。どう手加減するか——それが難しいくらいです。本気を出せば、半刻もあれば全滅させられるでしょう」


藤林は少し間を置いた。

「この船の力は——それほどのものなのですか」


北沢は言った。

「我らが持つ力は、この時代の人間にとっては強力すぎます。利用しようと近づく者もいれば、力を恐れて排除しようとする者も出てくるはずです。ですから——力はできる限り見せず、陰から助けるつもりです」


桐山が続けた。

「太平洋戦争の時代でも——似たようなことがありましたな」


「そうだ。だからこそ——どこまで見せるかは、どこまで信頼関係を築けるかにかかっている」


藤林が聞いた。

「北沢司令、太平洋戦争とは——なんですか」


「後で、桐山に聞いてください。藤林殿には、我らがどういう経緯でここに来たか——すべてお話しします」


北沢は続けた。

「ただし——そこまでの話は、藤林殿だけの胸に収めておいてください。我らのことを知る者が増えれば、増えるほど、先程の理由で危険が増しますので」


藤林は大きく頷いた。

「わかりました。言われるとおりだと思います」


***


桐山が言った。

「ところで司令、織田殿にどうやって近づくのか——なにか策をお考えですか」


松永が手を挙げた。

「九鬼水軍に、レールガンを見せてはどうでしょうか」


早川が続けた。

「ドローンもあります」


田中が頷いた。

「織田殿は、新しもの好きだったと思います。きっと見に来るはずです」


北沢は首を振った。

「二つとも——この時代の人間にとっては強力すぎる兵器だ。いろんな者が見ている前で、そんな強力な兵器を見せれば、収拾がつかなくなる。織田殿に取って代わろうとする者の思惑に、振り回される恐れがある」


松永・早川・田中が顔を見合わせた。

「それもそうですね」


「私は——村上医師に活躍してもらおうかと思っている」


村上が目を輝かせた。

「いいですな。退屈しておりましたからな」



北沢は笑った。

「『堺に——名医現る』でいきましょう」


桐山が静かに言った。

「なるほど。それなら織田殿に取って代わろうとする権力者たちは興味を持ちませんね。逆に織田殿は——新しいもの好き、興味を持つ可能性は大きいですね」


「そう思います。ですが、なんの病気を治せる名医にするかが問題です」


北沢は、少し間考えて続けた。

「武蔵に積んである医薬品を使えば——大概の病はどうにかなるでしょう。しかし、医薬品のストックは数が限られています。我らが必要な時にそれがない、というのは困ります。できれば——武蔵で製造できる薬で治せる病気にしたいですね」


村上が答えた。

「この時代に多い病気といえば——梅毒・破傷風・天然痘・麻疹・結核あたりでしょうか」


「それぞれ、武蔵で薬が作れるか、聞かせてください」


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