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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第3章 戦国時代編

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第51話 お前は妙な奴らに拾われたものだな

伊賀・才蔵の住んでいた村。


才蔵は、かつて家族で住んでいた村の前に立っていた。

燃やされた家はそのままだった。


柱だけが残り、屋根は落ち、草が生い茂っていた。

村は廃墟となっていた。

(これが——我らの故郷か)


風が吹いた。

枯れた草が揺れた。


「才蔵……」

山の茂みの中から、小さな声が聞こえた。


忍びにしか聞き取れない、かすかな声だった。

才蔵は振り向いた。


茂みの中に、懐かしい顔があった。

中忍の市兵衛だった。


才蔵は手を振った。

茂みから、人影が出てきた。

「よく生きていたな」


「なんとかな。堺の松林で死にかけていたときに——助けてくれたお方がいてな」


「それは運が良かったな」


市兵衛の顔が曇った。

「某の村では――なんとか山に逃げ込むことができた。しかし、しつこい追手に次々と撃たれて……」


「そうか」


才蔵は遠慮がちに聞いた。

「おまえ——家族は」


「なんとか生きとる」


「そうか——良かった」


市兵衛が才蔵を見た。

「才蔵の方こそ、どうなんだ」


「大丈夫だ。子供もな」


「そうか——良かったな」


しばらく、二人は黙っていた。


才蔵が、憤りを滲ませながら聞いた。

「結局——どれくらい生き残れたんだ」


「正確にはわからん。しかし——数百は生き残ったと思う」


「上忍衆はどうなった?」


市兵衛は少し間を置き、沈んだ声で言った。

「生き残られたのは——藤林殿だけじゃ」


才蔵は目を閉じた。

「服部殿も、百地殿も——」


「そうなのか……」


風が吹いた。

廃墟の草が静かに揺れた。


しばらくして、才蔵は目を開いた。

「藤林殿は、今、どこにおられる」


「案内するが——かなり山奥じゃぞ」


「構わない。行こう」


***


伊賀・山中の庵。


深い山の中に、荒れ果てた庵が見えてきた。

「ここか」


「そうだ。しかし——怪我をされておられる」


「良くないのか」


市兵衛は答えた。

「あの時、脇腹を撃たれたのだ。弾は抜けてくれたが——傷口が塞がらないまま膿んでいる。山の中では薬もない。食料も十分ではない。体が弱りきっておられる」


「熱は」


「ここ最近、ずっと出ている」


「話はできそうか」


「できないことはないが——あまり長く話すと、負担がかかるからな」


「わかった」


才蔵は庵の前で一度足を止め、ゆっくりと中に入った。

薄暗い庵の中に、男が横たわっていた。


六十に届こうかという年齢だが——やつれていた。

しかし——目だけが、まだ鋭く光っていた。


「藤林様——才蔵です」


男がゆっくりと目を開けた。

「おお。才蔵、生きておったか」


「はい。なんとか」


藤林はしばらく才蔵を見つめた。

「儂はもう——長くは持たん」


「藤林様——」


「別れの挨拶にでも来たのか」


才蔵は首を振った。

「そうではありません」


才蔵は藤林の傍らに座った。

「堺近隣の松林で——某は刀傷が化膿して、死にかけておりました。その時、助けていただいた方がいるのです」


「それは、何者だ」


「それは、直接お会いになれば、おわかりになると思います。その者たちの仲間に——腕の良い医者がおります。某の傷を、あっという間に治してくれました」


藤林は才蔵を見た。

「儂の傷も——治せると言うのか」


「必ずとは言えませんが——このまま山の中にいるよりは、ずっと望みがあります」


才蔵は背負っていた袋から、通信機を取り出した。


藤林が目を細めた。

「なんじゃ、それは」


「この箱で——その方たちと話ができます」


才蔵は空を見上げた。

もう日が落ちていた。


「ちょうど、話ができる時間です」

才蔵は通信機を操作した。


「こちら才蔵です。北沢司令をお願いします」


しばらくして、声が届いた。

「北沢だ。連絡してくれたということは、伊賀に到着したのだな」


「はい。上忍の一人、藤林様とお会いすることができました」


藤林は、才蔵が一体何をしているのか、まったく理解できなかった。

ひたすら、才蔵がやっていることを見つめていた。

市兵衛も同様だった。


「それは良かった。藤林殿とお話はできたのか」


「いえ——怪我をされていまして」


「良くないのか」


「はい。化膿しており、熱も出ています」


しばらく沈黙があった。


「わかった。方法を考える。少し待ってくれ」


***


武蔵・大会議室。


北沢が、大会議室に中村と田村、桐山、村上医師を集めた。

「才蔵から連絡が入った。伊賀上忍の藤林殿が怪我をされている。化膿も進んでいる。場所は伊賀の山の奥だ」


田村が言った。

「ヘリで、武蔵に連れて来られればいいわけですね」


「それを、これから皆で相談したい」


桐山が続けた。

「夜間なら——ヘリを飛ばしても音は聞こえますが、なんのことだかわからないでしょう。武蔵のヘリには暗視カメラが搭載されていて、ライトを消して飛べます。着陸時だけライトをつければ——地上から見ても、光が一瞬見えるだけで済みます」


「でも、藤林殿の庵の場所は、夜間ではわかりにくいかもしれないな」


「才蔵に篝火を焚いてもらいましょう。ヘリの目印になります」


「村上医師も同行し、現地で藤林殿の状態を診ていただきたい」


村上が答えた。

「行きますよ。医者の仕事ですから」


田村が引き継いだ。

「往復の飛行時間は——約一時間です。夜が明ける前に戻れます」


「よし。それで才蔵に伝える。準備にかかってくれ」


***


武蔵・発令所


北沢が再び通信機を取った。

「才蔵、ヘリで迎えに行く。ヘリとは空を飛ぶ機械だ。庵の近くに——平で開けた場所はあるか」


才蔵は市兵衛に顔を向けた。

「聞こえたか? この近くに、そういう場所はないか」


市兵衛が答えた。

「庵から少し下がったところに——昔、小さい田んぼだった場所がある。そこなら、平で開けているぞ」


「司令、場所がありました」


「では、そこに篝火を焚いてくれ。ヘリの目印にする。医者も一緒に向かわせる。四半刻で到着するぞ」


「そんなに早くですか。とにかく、篝火を焚いておきます」


「才蔵、藤林殿を武蔵まで連れていく。藤林殿と一緒にヘリに乗ってくれ」


「わかりました」


「そこには、他に誰かいないか」


「市兵衛殿がおられます」


「心配するだろうから、藤林殿が堺に向かったことを、伊賀の者たちに伝えてもらってくれ」


才蔵は市兵衛を見た。

市兵衛は頷いた。

「わかった。任せろ」


通信が切れた。


「藤林様は助かるのか」


「きっと助かる」


「空を飛ぶ機械というのは、本当のことなのか」


「そうだ、とにかく某を信じてくれ」


藤林がじっと通信機を見つめていた。

「才蔵——」


「はい」


「あの箱の中の声は——何者なのじゃ」


才蔵は答えた。

「直接お会いすれば——おわかりになります」


藤林はしばらく黙っていた。


やがて決意したように言った。

「どうせ死ぬんだ——面白いことがあった方が良いか」


***


伊賀・山中の田んぼ。


篝火が、荒れた田んぼの中で揺れていた。

才蔵は空を見上げた。

(あの方たちは、空を飛ぶものまで持っていたのか)


暗闇の中から——低い音が近づいてきた。

次の瞬間——眩しいほどの光が降り注いだ。


強い風が、草を薙ぎ倒した。

才蔵は目を細めた。

(なんだ——これは)


光の中から、巨大な鉄の塊がゆっくりと降りてきた。


「こんな鉄の箱が、空を飛んできたのか」


市兵衛が思わず刀に手をかけた。

才蔵は市兵衛の腕を押さえた。

「大丈夫だ。某を信用しろ」


市兵衛は刀から手を離した。

しかし——目は、空から降りてきた鉄の箱から離せなかった。


ヘリのドアが開いた。

村上医師が飛び降りた。

「才蔵さん——藤林殿はどちらですか」


「こちらです」


村上は藤林の傍らに膝をついた。

手際よく傷を確認していく。

「これなら、なんとかなります。急ぎましょう」


才蔵は藤林に言った。

「藤林様——あれに乗ってください」


藤林は鉄の箱をじっと見た。

「あれにか」


「はい、面白いことがあった方がよいのでしょ」


藤林は笑った。

「わかった——乗ろう」


市兵衛が才蔵の袖を引いた。

「才蔵——本当に大丈夫なのか、あれは」


才蔵は笑った。

「大丈夫だ。某も初めて乗るがな」


「なに――初めて乗るだと」


「あれに乗るのは初めてだが、それよりもすごいのに、すでに乗っておるからな」


ヘリが、夜空へ舞い上がった。

市兵衛は、光が消えるまで、ずっと空を見上げていた。


やがて——暗闇に戻った空を見ながら呟いた。

「才蔵、お前は妙な奴らに拾われたものだな」


市兵衛は廃墟となった村を思い浮かべた。

(吉なのか凶なのか——わからん。しかし、今よりは、ひどくなるまい)



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