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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第2章 太平洋戦争編

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第27話 我らはこの国に、どこまで関わりますか

マリアナ諸島。サイパン島基地。

第21爆撃集団司令部。


ルメイのもとに報告が入ったのは、出撃から数時間後のことだった。

「司令、東京方面より緊急報告です」


ルメイは顔を上げた。

「どうした」


「編隊が——引き返してきています。撃墜された機体は確認できただけで五十機以上。さらに増える可能性があります」


ルメイは立ち上がった。

「何だと。日本の防空能力はないに等しいはず。新型の高射砲か? 新型の戦闘機か?」


「それが——わかりません。正体不明の兵器で、次々と撃墜されたと。さらに無線が一斉に機能しなくなったと報告があります」


「無線が——だと!」


「はい。しかも——日本の戦闘機が、進路で待ち伏せていたようです」


ルメイは地図を見つめた。

「つまり、爆撃計画が漏れていたということだな。これは大問題だぞ」


「大至急確認します」


「でなければ、戦闘機で待ち伏せなどできないはずだ」


ルメイはしばらく黙っていた。

腕を組んだまま、地図を見つめ続けた。


「日本が新兵器を開発したというのか」


参謀が続けた。

「日本にそのような技術なんか——」


「絶対ない。私もそう思う」


ルメイが続ける。

「しかし——実際に五十機以上が落とされた。これは事実だ」


参謀は黙った。

「日本にいるスパイに情報を探らせろ。それと——次の出撃は一時停止だ。状況が判明するまでは動けない」


「了解しました」


ルメイは窓の外を見た。

マリアナの空は、青かった。

(何が起きている——)


***


久々の大勝利に、大本営も、横須賀鎮守府も、お祭り騒ぎになっていた。

空母を次々と撃沈され、出番もなく国内でくすぶっていた戦闘機部隊はなおさらだ。

B29を撃墜した興奮が、飛行場全体を包んでいた。


その夜、原潜大和と武蔵は、正式に独立友軍として認定された。

名称は——海神わだつみ独立艦隊。

海の底から現れた艦隊にふさわしい名だと、北沢は思った。


***


武蔵・大会議室。


主要メンバーが集まった。

北沢(司令)、田村(大和艦長)、中村(武蔵艦長)、橘(KI重工技術責任者)、鶴田(KIホールディングス財務担当)、松永(レールガン・CIWS開発責任者)、早川(ドローン開発責任者)、桐山(北沢の参謀)。


北沢が口を開いた。

「この時代の日本と、どう向き合い、どう力を貸していくべきか——皆の意見を聞きたい」


橘が即座に言った。

「原爆投下だけは絶対阻止しましょう」


桐山が続けた。

「日本を核保有国として公表する、という手があります。核を持っているとわかれば、アメリカも迂闊に原爆を投下できなくなるはずです。報復を恐れますから」


田村が首を振った。

「いや、それはそれで危険だ。核を持っていると知れば、アメリカ本土に打ち込め、という声が軍の中から必ず出る。それに——公表した瞬間、逆にアメリカが先制で叩きに来る可能性もある」


北沢は眉をひそめた。

「核兵器を保有していることは——簡単には伝えられないな」


田村が続けた。

「梶原長官や豊田司令長官なら、感情的にはならないでしょう。しかし強硬派の将校たちは——核があるなら使え、と言い出すに決まっています」


桐山が頷いた。

「同感です。公表すれば、我らの手を離れて暴走しかねません」


北沢はしばらく黙っていた。

やがて、静かに言った。

「では——核の存在は、当面伏せておく。核を使わずに、この国を救う道を探そう」


***


中村が口を開いた。

「現実的な問題についても話しておく必要があります。アメリカ軍と戦うとして、我らの兵器の補給はどうしますか。魚雷、レールガンの弾、ドローンのミサイル、CIWSの弾——」


松永が答えた。

「魚雷はなんとかなりそうです。レールガンの弾は金属の塊ですから、この時代の技術でも製造できるでしょう。ただし、CIWSの弾薬とドローンのミサイルは難しいですね」


早川が続けた。

「ドローンの機体そのものも、小さな損傷なら3Dプリンターで補修できます。ただし武蔵に積んである材料が尽きれば——それで終わりです」


桐山が頷いた。

「つまり、弾を補充できるレールガンを主体に戦うしかない、ということになりますね。CIWSは温存し、敵戦闘機への緊急対応にだけ使う」


北沢は言った。

「アメリカの艦艇を片端から撃沈していけば、いずれ向こうも停戦する気になってくれるかもしれないかな」


田村が首を振った。

「すべての艦艇を沈められればそうなるでしょう。ですが、こちらが無傷のままそれをやり遂げられるとは思えません」


橘が言った。

「現実を申し上げます。この艦が一度損傷すれば、まともな修理はできません。搭載兵器も同様です。無傷のまま勝ち続けることなど、まず不可能でしょう」


橘は続けた。

「補給も修理もできないまま戦えば、アメリカ軍との戦闘は長引くほど我らに不利になります。つまり——長期戦は、我らには耐えられません」


***


田村が続けた。

「もう一つ、別の問題があります。日本軍を勝たせすぎると、停戦どころか『このままアメリカ本土を占領してしまえ』と言い出す者が出てくるかもしれません。歴史を見れば、戦況が良くなった時ほど、人は冷静さを失うものです」


鶴田が続けた。

「私が気になるのは、逆の面です。日本軍が我らを必要としている今のうちに、停戦後の日本をどういう国にするか——約束を取り付けておくべきだと思います。戦況が好転してしまえば、政府は我らの言葉に耳を貸さなくなります」


桐山が首を振った。

「しかし、国家のあり方にまで我らが介入していいものでしょうか。そもそも、介入できるとも思えません。戦後のGHQにそれができたのは、日本を完膚なきまでに叩きのめしたからです。我らが今の日本にできることと、してはならないことは、分けて考えるべきです」


桐山は北沢を見た。

「司令——我らはこの国に、どこまで関わりますか」


北沢はしばらく黙って考えていた。

「確かに、桐山の言う通りだ。我らがやっていいのは——停戦までだろう。未来を知る者として、助言はできる。しかし、決めるのは——この時代の日本人だ」


***


桐山が聞いた。

「我らが、日本優位な状況を作り出したら、政府はアメリカと停戦の交渉を始めるという約束は絶対させないといけませんね。その約束をさせた上で、今度は、どういう状況になれば、アメリカは停戦に応じるかを話し合っておきたいですね」


田村が答えた。

「アメリカは合理的な国家です。この戦いを続けることが割に合わないと判断すれば——必ず交渉に応じるでしょう」


「割に合わない、とは」


「二つ考えられます。一つは、これ以上空母や戦艦を失えば、太平洋での戦力を立て直すのに、長い時間と莫大な費用がかかると思わせること。もう一つは、アメリカ本土への攻撃によって国内世論が停戦に傾き、このままでは大統領選に負ける——そう思わせることです」


桐山が続けた。

「レールガンで、アメリカ本土の港を破壊するのは可能です。しかし世論がどう動くかは予測できませんよ。むしろ、戦争の継続に火がつくかもしれません」


「そうですね。アメリカ本土の攻撃はやらない方が良さそうですね。彼らに、このまま戦争を継続しても、勝てる見込みがなく、失うものだけが増えていく——そう理解させればいいはずです」


北沢が頷いた。

「空母をほとんど失えば——太平洋の制海権が揺らぐ。そうなれば、アメリカは交渉のテーブルに着かざるを得ないでしょう」


***


桐山が聞いた。

「それでも、停戦交渉に応じない場合は、どうしますか」


北沢はしばらく黙っていた。

「テニアン島の原爆施設を叩く。原爆を使えなくすれば——アメリカの切り札が消える」


「それでも、応じなければ」


北沢は少し間を置いてから答えた。

「日本政府がどう受け止めるか、正直気が重い。だができるなら使いたくない手だが——核の存在を示すしかないだろう」


「示す、とは」


「いずれにせよ、戦後は核を保有した米ソによる冷戦になる。そこに、日本もまた核を持って加わる——それをアメリカに示すことになる」


田村が言った。

「核が、最終的な交渉の道具になるということですか」


「そうだ。使わずとも、持っているという事実そのものが、交渉の力になる」


司令室が、静まり返った。


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