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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第2章 太平洋戦争編

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第24話 これが、我々の未来か

横須賀鎮守府庁舎・会議室。


「では、日本が辿る未来について説明させていただきます」

松永がiPadを操作した。


壁に映像が映し出された。

梶原をはじめ、将校たちは身を乗り出すようにして映像を見つめた。

睨みつけるようだった。


しばらくして、将校の一人が声を絞り出した。

「民間人を——こんなにもたくさん」


誰かが続けた。

「子供まで……」


中島中佐が拳を握りしめた。

「畜生め」


映像が切り替わった。


有馬大佐が唇を噛んだ。

「戦艦大和が……沈むのか。そんな馬鹿な——あの不沈艦大和だぞ」


別の将校が呟いた。

「しかし……今の戦況を考えれば——」


その言葉は、最後まで続かなかった。

映像が切り替わるたびに、会議室の空気が重くなっていった。


梶原は映像から目を逸らさなかった。

ただ、その手が——テーブルの上でかすかに震えていた。


やがて。

中島中佐が、低い声で言った。

「その原子爆弾は——東京には落ちなかったのでありますか」


松永が答えた。

「広島と長崎の二ヶ所だけです。しかし——もし停戦が遅れていれば、東京にも投下される計画があったとされています」


会議室が、完全に静まり返った。

梶原は映像が消えた壁を、しばらく見つめていた。


やがて口を開いた。

「これが、我々の未来か」


***


「これで終わります。暗幕を開けてください」

久我と島田が素早く立ち上がり、暗幕を開けて回った。


会議室に、冬の光が差し込んできた。

将校たちは、誰も口を開かなかった。


梶原がゆっくりと北沢を見た。

「北沢司令、日本を——助けていただけるでしょうか」


北沢は答えた。

「そうしたいと思っています。しかし——ある確認をしてからでないと、なんとも申し上げられません」


梶原が続けた。

「日本政府としては、可能な限りのお礼をすると思いますが」


「そういうことではないのです」


北沢は松永を見た。

「松永、簡単に説明してくれるか」


「はい」


松永は立ち上がった。

「歴史を変えようとすると、我らも消えてしまう可能性があるのです」


会議室がざわめいた。


「ただし、過去と未来が一直線ではなく、選択や出来事によって世界が分岐し、複数の世界が並行して存在するという考え方があります」


将校たちが松永を見た。


「つまり——我らが飛ばされたこの過去が、我らがいた未来と繋がっていない可能性があります。もしそうであれば、この世界でなにをしようとも、我らが消えてしまう可能性はないと考えられます」


松永が続けた。


「それを確かめる方法があります。一つは、我らの乗員の先祖がこの世界に存在するかどうかを確かめることです。ですが、その前にこの場で確かめてみたいことがあります。現在の閣僚名簿と私どもの記録との照合です」


梶原が命じた。

「閣僚名簿を持ってこい。重要だから一字一句間違えのないものだぞ」


***


久我が島田に目配せをした。

島田が小さく頷き、会議室を飛び出した。

廊下に足音が遠ざかっていった。


梶原が松永に目を向けた。

「ところで——そちらの記録は持ってこられているのですか?」


「この小型計算機の中に保存されています」


有馬大佐が身を乗り出した。

「この小さな板の中に——でありますか? 見せていただいても構わないですか」


「どうぞ」


松永はiPadを有馬大佐に渡した。

有馬が恐る恐る手に取った。


「軽い……」


「このように——文字を大きくすることもできます」


松永が操作してみせた。

有馬の目が丸くなった。


「なるほど。これは便利なものですな」


「映像も見られます。先ほどご覧いただいたものも、この中に入っています」


将校たちがざわめいた。


「音楽も聴けます」


松永が操作した。

会議室に、ベートーヴェンの音楽が流れ始めた。


有馬大佐が呟いた。

「音がいいですな。雑音が全くない。蓄音機とは比べ物にならない」


しばらくして、別の将校が口を開いた。

「これは、持ち歩けるのでありますか」


「電車の中でも、船の中でも大丈夫です」


「誰もが欲しくなりますな」


会議室に、小さな笑いが起きた。


中島中佐が首をかしげた。

「しかし——電気のコードが付いておらんが、どうやって動いているのですか」


「電池です。小型で長時間使える電池が、この計算機の中に組み込まれています」


「電池というと——大きくて重いものしかないが」


「数十年のうちに、ここまで小型化・軽量化しましたか」


将校たちが顔を見合わせた。

「数十年で……」


「この電池の開発には、未来の日本人も関わっているのですよ」


「さすが、我が子孫たちだな」


そのとき。

廊下から足音が近づいてきた。


ドアが勢いよく開いた。

島田が息を切らして立っていた。

頬が赤く、肩で息をしていた。


「同じ物を五枚、持って——まいりました」


閣僚名簿を差し出した。

久我が受け取り、梶原に渡した。


松永も一枚受け取り、梶原を見た。

「では——壁に、私どもの記録にある閣僚名簿を映し出します。一緒に確認しましょう」


プロジェクターが壁を照らした。

松永が操作すると、閣僚名簿が映し出された。


梶原が受け取った名簿と、壁の映像を見比べた。

将校たちも、壁と手元を交互に見た。

しばらく、誰も口を開かなかった。


有馬大佐が言った。

「軍関係は——一致しておりますな」


中島中佐が続けた。

「しかし……文部大臣の名前が違う。内務大臣も——」


梶原は壁の映像をじっと見つめていた。

「同じではないようだな。だが——全く違うわけでもない」


北沢が言った。

「大きな流れは同じ。しかし細部が違う。これが——我々がいた世界と、ここが別の世界である証拠になります。ただし念のため、後ほど我らから名簿を出しますので、先祖がいるかどうか調べていただけますか」


梶原は頷いた。

「わかった。大急ぎでやらせよう。先祖がいなければ——この時代の日本に、ご助力いただけるのですな」


「もちろんです」


梶原はしばらく黙っていた。

やがて、深く頭を下げた。


「日本国民のために、よろしくお願いいたします」


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