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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第4章 アメリカ編

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第115話 気になるのは、操船技術だ

マニラ湾。

海神《わだつみ》丸・甲板。


海神《わだつみ》丸が——単縦陣を組んで、スペイン艦隊に向かって進んでいた。


武吉は、腕を組んで甲板に立っていた。

(湾内は——微風だ)

(外輪を目一杯使えば、海神《わだつみ》丸はガレオン船の三倍の速さで走れる)


風だけに頼る敵とは、そもそも足の速さが違う。

(海神《わだつみ》丸の大砲の実用射程は——四百メートル)

(対して、イスパニアの大砲の射程は——せいぜい百から二百メートルというところか)


——ならば、四百メートルを保ったままなら、こちらだけが一方的に撃ち込める。

(単縦陣ですれ違いざまに撃ち合う戦い方であれば、負けることはないはずだ)


桐山殿に教えていただいた、あの丁字戦法。

敵の前を横切り、こちらの全砲門を、敵の一点に集中させる戦い方。

(あれを——試してみたい)


だが——気になるのは、操船技術だ。

(我らの腕は——スペイン艦隊と同等なのか。それとも、遥かに下なのか)


三年間の訓練を、信じるしかない。

武吉は、短い間に、考えを巡らせていた。


***


マニラ湾。

イスパニア旗艦・甲板。


司令官エスコバルはじっと前方を見た。

「司令——見慣れない艦隊がこちらに向かってきます」


「何隻だ」


「十隻ほどです。外輪がついた見慣れない形状の帆船。砲も搭載しています」


エスコバルは眉をひそめた。

「戦闘用意——!全艦帆を上げろ。砲の準備をさせろ。乗組員に銃を持たせろ」


「了解しました——!」


艦隊が大急ぎで動き出した。

「もたもたするな——!」


艦がゆっくりと動き始めた。

エスコバルは単縦陣を組ませた。

「どこの馬鹿か知らんが——無敵・イスパニア艦隊の名を知らないのか」


「敵艦隊、向きを変えて、こちらの正面に向かってきます」


「距離はどのくらいだ」


「まだ、千メートル以上離れています」


「単縦陣での撃ち合いでもするつもりなのか」


エスコバルは首を傾けた。

(馬鹿なのか。短距離で撃ち合えば、双方が穴だらけになって終わりだぞ)


「もうすこし、様子を見る」


「了解しました」


***


海神《わだつみ》丸・村上武吉。


武吉はじっと前方を見た。

「距離をとって砲撃するだけでは——我らの実戦経験にはならん。我らの操船技術も見極めねばならぬ」


「はっ——!」


武吉は続けて命じた。

「大砲——いつでも撃てるようにしておけ。単縦陣で、やつらの進行方向の左をすれ違うような進路で進め。敵の先頭艦との距離が八百メートルのところで、丁字戦法を仕掛ける。手旗信号で全艦に知らせろ」


「はっ——!」


手旗信号が——次々と後続の艦に送られた。


「距離九百メートルです。松永殿にいただいた距離計で計測しました」


「近づくまで、待て」


距離が縮まっていった。

「八百五十——」


「八百——!」


「左に回頭——!」


海神《わだつみ》丸が——イスパニア艦隊の前をT字に横切り速度を落とした。

砲手は、砲台を回転させるレバーを回しながら、砲を敵艦に向けた。


敵艦が距離を詰めてきた。

「距離五百」


武吉が命じた。

「目標、先頭艦!」


「距離四百」


武吉が命じた。

「撃て——!」


ドォォォン——!ドォォォン——!ドォォォン——!

ライフリング砲が——一斉に火を噴いた。

紡錘型の砲弾が——まっすぐに、先頭のイスパニア旗艦に飛んでいった。


***


イスパニア旗艦・エスコバル。


「このままでは、敵艦隊と衝突してしまうではないか」


ドォォォン——!

砲弾が——甲板の手すりを吹き飛ばした。


「何だ——!」


「砲弾が当たっただと——!」

エスコバルは目を剥いた。


ドォォォン——!

砲弾が——船腹に穴を空けた。

浸水を始めた。


(四百メートルも先から、狙って砲弾を撃っているのか——!)

(そんなことが——できるのか)


ドォォォン——!

砲弾が——船腹に再度命中。

そこからも浸水が始まった。


「艦が止まりました。このままでは後続艦が衝突します」


「左に回頭して、いったん離脱せよと伝えろ」


「了解しました」


ドォォォン——!

砲弾が——船腹に再度命中。

旗艦は沈没した。


後続艦は、あわてて進路を変えて逃げ出した。


***


海神《わだつみ》丸・村上武吉。


「単縦陣で追うぞ。逃げるスペイン艦隊と四百メートルの距離をとって並走する」


「はっ——!」


逃げるスペイン艦隊の三倍の速度で海神《わだつみ》丸が追いかける。

すぐに追いついて、並走する。


武吉が命じた。

「撃て——!」


ドォォォン——!ドォォォン——!ドォォォン——!

ライフリング砲が——一斉に火を噴いた。


砲弾が——第二船、第三船、第四船の船腹に穴を空けた。

浸水が始まる。


ドォォォン——!

砲弾が——再度、船腹に穴を空けた。


沈没を始めた。

やがて——五隻すべてが、マニラ湾に沈んでいった。


「五隻——全艦沈没確認しました」


武吉は静かに海を見た。

(負ければ潔く死ぬ——これが海の戦《いくさ》というものだ)


武吉は北沢に連絡した。

「五隻——全艦沈没させました」


北沢はしばらく黙っていた。

「……ご苦労様でした」


武吉は静かに空を見上げた。

「田村殿の訓練——無駄ではなかったな」


マニラ湾の空が——青く澄んでいた。


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