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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第4章 アメリカ編

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112/122

第111話 そのやり方が通用しない相手がここにいる

天正十年(1582年)四月上旬。

大和・発令所。


アカプルコを後にした大和は——アメリカ大陸に沿って南へ向かった。

まもなく、パナマ沖に到着する。


田村は静かにモニターを見た。

「パナマ港——ガレオン船五隻確認。松永、アカプルコと同じでいくぞ」


「はい」


パシュッ——パシュッ——。

夜の港に——五隻がゆっくりと沈んでいった。


「パナマ——完了しました」


松永が確認した。

「要塞の砲台は潰さなくてもいいのですか」


「船がなくなれば、海に向いた砲台は無用の長物だ」


「なるほど」


「次はグアヤキルだ」


***


エクアドル・グアヤキル沖。


十キロメートル沖合に、大和は潜望鏡深度で停船していた。

田村はモニターを見た。

「地形と地図を確認してくれ。グアヤキルで間違いないか」


「間違いありません」


半兵衛がモニターの画面を覗き込んだ。

「この建物は、造船所ですな」


「記録によれば——グアヤキルは、ガレオン船を建造・修理する基地になっている。大陸西側で最大の造船所。マニラガレオンもここで造られたと記録されている。したがって、この造船所は破壊しておく必要がある」


官兵衛が静かに頷いた。

「なるほど——兵站を断つのですね」


「その通り。ここを残しておけば——また新しい船が次々と造られてくる」


田村は松永を見た。

「今度は、通常のレールガンでいく。深夜、造船所から人がいなくなったところで——建物を木っ端微塵に破壊するぞ」


松永は頷いた。

「承知しました」


***


深夜——。


グアヤキルの造船所は——静まり返っていた。

レーダードローンの映像に——建造途中のガレオン船の骨格が映し出されていた。


木材がうず高く積み上げられていた。

大量の帆布と綱も見えた。


「人の気配は——ありません」


「撃て」


ズドォォォン——!

閃光が走った。


造船所の建物が——一瞬で炎を上げた。

木材が四方に飛び散り——土煙が高く舞い上がった。


「もう一発——」


ズドォォォン——!

建造中のガレオン船の骨格が——炎に包まれた。

帆布と綱が——一瞬で燃え上がった。


「もう一発——」


ズドォォォン——!

造船所全体が——炎の海になった。

夜空を——赤い炎が照らした。


しばらくして——町の方から叫び声が上がる。

「火事だ——!」

「造船所が——燃えているぞ——!」


大和の姿は、暗闇の海に溶けていた。


松永はじっとモニターを見つめていた。

「グアヤキル造船所——破壊完了しました」


官兵衛は感慨深げに言った。

「有岡城での戦いを思い出しました。ずいぶん遠くまで来たものです」


田村が言った。

「次はカリャオだ——出発せよ」


***


ペルー・カリャオ沖。


数キロメートル沖合に、大和は潜望鏡深度で停船していた。

田村は、港の様子をモニターで眺めていた。


カリャオの港が広がっていた。

石造りの倉庫が並び——スペイン人と思われる兵士たちが歩いていた。

港には——四隻のガレオン船が停泊していた。


「あれは、掘り出した銀をパナマまで運ぶ船だな」


半兵衛が言った。

「ここが——カリャオですか」


「リマの外港。南アメリカ大陸最大の港だ」


官兵衛が静かに続けた。

「竹中殿——カリャオとリマはどんなところだったか覚えていますか」


「記録された資料に書いてあった——五十年前まで、ここにはインカ帝国があった」


「インカ帝国——思い出してきました」


「日本の何倍もある大帝国。先の世の国名で言うと——ペルー、ボリビア、エクアドル、チリ北部まで支配していた。人口は約千六百万人——」


官兵衛が聞いた。

「そんな大きな国が、簡単に滅びるものでしょうか」


「わずか百八十人のスペイン人が——滅ぼした」

発令所が静まり返った。


田村が言った。

「たったの百八十人——。それにしても、竹中殿——記録された資料が、すべて頭に入っているのですか」


半兵衛は小さく笑った。

「興味を持ったところだけです」


官兵衛が聞いた。

「どう、滅びたのですか」


「疱瘡《ほうそう》が広まって人口が激減していたところに——スペイン人がやって来る。インカ皇帝を捕らえ、莫大な身代金の金銀を受け取った後に——処刑。四十九年前のことです」


半兵衛はしばらく黙っていた。

(アステカと同じだ——疱瘡で国が滅んだ)

(百八十人で千六百万人の国を滅ぼした——疱瘡という病がなければ、そんなことは不可能だったはず)


「アステカと同様——ここでも都合よく疱瘡が蔓延するとは。大いに怪しいですな」


官兵衛が続けた。

「スペインの強さは——戦の強さではなかったようですな。感心しないやり方です。同じことをされたら、日本もひとたまりもありませんな」


田村が言った。

「そのやり方が通用しない相手が、ここにいる。夜になったら——カリャオも片付けてやる」


***


大和・発令所。


田村が言った。

「北沢司令に繋いでくれ」


北沢が通信に出た。

「今、どの辺りだ」


「司令、大和の現在位置は、ペルー・カリャオ沖です。今晩、攻撃を行います」


「もう、ペルーに着きましたか。さすがに、大和だけだと早いですね」


「カリャオ港の攻撃の後ですが、マゼラン海峡を回って大西洋に出れば、ポルトガルの拠点港、ブラジルのサルバドール沖を通過します。ポルトガルの船はどうしますか」


「もちろん沈めてください」


「了解しました」


「サルバドールを叩き終わったら——また連絡してください。こちらは——今、ちょうど赤道付近です。これから西に向かいます」

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