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原潜大和・武蔵、転移す ―信長と、未来を変える―  作者: ゲンタ
第4章 アメリカ編

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第103話 嫁が乗っていなくても——守ってくださいよ

大和・発令所。


通信長の宮本が——にやりと笑って田村の方を見た。

「田村艦長——伊賀の花嫁殿はいかがですか」


田村は咳払いをした。

「そ、その——あんなに若い娘が嫁に来てくれるとは思わなかったのだ。藤林殿の親戚の娘らしい。年増で済まないと言っていたが——早川くんと、そう変わらぬ年頃でな」


「早川さんに言いつけますよ」


「お前、それはだめだろ」


「冗談ですよ。ところで——たまには武蔵の方に行かれなくて大丈夫ですか」


「な——そ——そういうことを言うんじゃない」


田村は天井を見上げた。

「お前だって——堀殿の親戚の娘さんだろ。まだ子供らしいじゃないか」


「まだ何にもしませんよ、子供ですから。でも、この時代では普通に嫁入りする年齢なのだそうです。ただ——武家のお嬢さんは礼儀正しすぎて、接し方がいまいちわからなくて」


「わかるぞ、それは。俺たちの時代の女性とは、勝手がまるで違うからな」


田村は腕を組んで頷いた。

「とにかく——武蔵には嫁がいっぱい乗っているんだ。何かあったら、大和は身を挺してでも守らねばならん」


「嫁が乗っていなくても——守ってくださいよ」


「そりゃあ、そうだが」


発令所に——一斉に笑いが起きた。


宮本はふと思い出したように言った。

「ところで——早川さんは、どうするんですかね。織田殿のご子息の——どなたかから、縁談が来ていたと聞きましたが」


田村は答えた。

「きっぱり断ったそうだ」


発令所のメンバーが——一斉に田村を見た。


宮本が、予想通りだという顔で続けた。

「まあ——そうでしょうね。あの早川さんが、この時代のお嬢さん然として振る舞う姿なんて、誰にも想像できませんから」


少し間を置いて、宮本はにやりと笑った。

「それなら——松永さんあたりが、案外お似合いなのでは」


田村は首を振った。

「松永はだめだ」


「なぜですか。いいひとですよ」


「あいつは、レールガンと結婚している」


発令所が——どっと笑いに包まれた。


笑いが収まったところで、宮本が思い出したように言った。

「そういえば——由良湊にいた頃、竹中殿と早川さんが、熱心に話し込んでいるのを見たことがありますよ」


「竹中殿と?」


「はい。竹中殿は——奥方とは、離縁されたと聞きましたし。あちらも学者肌ですし——案外、お似合いなのではと思ったんですが」


田村は、少し考えてから首をひねった。

「いや——あれは、恋愛っぽい雰囲気は、まったくなかったな」


「そうなんですか」


「二人とも、目を輝かせて——なにやら、難しい図面を挟んで議論していたぞ。まるで学者同士の論争だ。あの様子じゃ——色恋の入り込む隙間なんて、なさそうだったぞ」


「竹中殿が『この起点をずらせば、もっと精度が上がるのでは』と言うと、早川さんが目を丸くして『それ、実は前から気になっていたんです』なんて盛り上がっていてな」


「傍で聞いていた俺には、半分も理解できなかったが——二人は、飯を食うのも忘れて話し続けていたよ」


宮本は、思わず吹き出した。

「それは——もう、完全に同好の士ですね」


「だろう? あれを恋愛と呼ぶのは、無理があると思うぞ」


宮本は苦笑した。

「それは——それで、お似合いなのかもしれませんよ」


発令所に、また小さな笑いが広がった。


田村は苦笑しながら——モニターに目を戻した。

(司令が武蔵にいるからって気が緩みがちだな)

(いや、緩んでいるのは——俺か)


「——全員、持ち場に戻れ」


「はっ——!」

笑いながら——全員が動き出した。


***


天正十年(1582年)三月上旬。


武蔵・発令所。


北沢はモニターの景色をじっと見つめた。

桐山の方を振り返った。

「サンフランシスコ湾についたのかな。どう思う」


「ゴールデンゲートブリッジはありませんが——到着したと思います」


「あれは、たぶんエンジェル島だろうな」


「だと思います」


「桐山——藤林殿と海神《わだつみ》丸に乗り込んで、サンフランシスコ湾に入っていってくれ。無線機も一つ持っていけ、連絡が取れるように」


「はっ」


「海神《わだつみ》丸は——エンジェル島の周辺に停泊させよう。湾内でも屈指の水深があり、風も穏やかだ。島影に隠れる形にもなるゆえ、万一の際にも守りやすい」


「大和に繋いでくれ」


田村が通信に出た。

「こちら大和。司令、やっと到着しましたね」


「田村——お疲れ様だった。海神《わだつみ》丸を、ここまで事故なく導いてくれた。見事でした」


「いえ、村上水軍の連中が、よくやってくれましたから」


「教え子ですからね。後ほどしっかり褒めてあげてください」


北沢は続けた。

「だが、まだ安心できないぞ。これから海神《わだつみ》丸には、警戒しながら湾の奥に進んでもらう」


「承知しました」


北沢は続けた。

「大和は明日にでも、アメリカ大陸の西岸沿いをパナマあたりまで南下して——スペインの船が、どこまで北上してきているか、確かめてきてほしい」


「了解です。さっそく準備にかかります」


「武蔵はゴールデンゲート入口に残り、緊急時に備えることにする」


田村が確認した。

「もしも、スペインのガレオン船から攻撃を受けたら——どう対処しましょう」


北沢が答えた。

「偵察してくるのが主な目的だが、危険を感じれば沈めてかまわない」


「承知しました」


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