第45話 王城伝説と獰猛な香りの終着点
「お茶葉は我が家が特別に取り寄せましたものですの」
ナディア・グロウディーナはご機嫌に言って、侍女にお茶を淹れさせようと目配せをする。
「いえ、結構」
彼女の対面に座るルシアンは冷たく断る。
「私は自分の従者に淹れてもらった茶で充分です。
稀少な茶葉でしたら、ご友人の令嬢たちとご堪能ください」
にっこりと微笑むルシアンだが、その声には冷ややかな響きがあった。
ナディアは途端に不機嫌な顔つきになった。
「ご心配されますな。
グロウディーナ嬢にも同じお茶を用意いたしましょう。
時間も限られておりますゆえ、此度は我がクレインバール家のをお楽しみください」
悠然と構えるルシアンの笑みに、ナディアはぽっと顔を赤くした。
「そこまでクレインバール卿が仰るのでしたら、仕方ありませんわね」
「ありがとうございます」
ルシアンはやんわり頷くも、内心は暗雲が立ち込めていく。
(何か薬が盛られているかもしれないものに口をつけられるか)
それにしても、さっきから漂うこの甘い匂いが不快で堪らない。
本来、香とはもう少し典雅なものだと思っていたが、これは違う。
妖艶で獰猛。
頭の中に澱のようなものが降りてくる。
気を抜けば、たちまち意識が混濁し、酩酊状態に陥る。
「それであたくし、どうしても聞きたいことがありますの」
ナディアが朗らかな声音でルシアンに声を掛ける。
その声すら、どこかぼんやりとして、遠くから聞こえてくるように曖昧だ。
「一体何でしょうか?」
ルシアンは精一杯、平然を装った。
「三年前に起きた王宮テロ未遂事件ですわ」
ルシアンはひやっとした。
表情が固まった。
「ふふ。やっぱりそのお顔。
あったんですね、そんな大事件が」
ナディアは茶目っ気たっぷりに確信めいて笑った。
しまった。 完全に不意を突かれ、顔に出してしまった。
このお香のせいで判断力が鈍ったか。
ルシアンは内心で舌打ちをした。
「軍部からは緊急演習訓練なんてお達しが出ていたようですが、本当は違っていた。
実際はテロリストという恐ろしい者たちにこの国が襲われていたとか。
そうオークレー叔父様から伺いましたの」
含みのある言い方で、ナディアはオークレーに視線を投げた。
そのオークレーは鷹揚に何度も頷いた。
「なるほど。
オークレー次官が」
ルシアンは涼しげな笑顔を作りながら呟いた。
(まったく。
余計なことをしかしないな、このオヤジは)
ルシアンは姿勢を正し、ナディアを真っすぐ射抜くように見据えた。
たちまちナディアの頬が赤くなり、やけに含羞ある笑顔を向けてくる。
この女、何を勘違いしているんだ?
ルシアンはぐびっとお茶を飲んだ。
むせかえる香の匂い。
胃の奥がじわじわと熱を帯びる。
息を吸うたびに自分の呼吸音だけがやけに大きく響く。
「それにしても、なぜそのような話を知りたいのでしょう?」
気を取り直してルシアンは艶然と尋ねた。
「武勇伝だよ、クレインバール卿の武勇伝」
オークレーがもったいぶったようにして口を挟む。
「ほら、女性は意中の男性が活躍して手柄を立てた話が好きだろう?」
「はあ、そういうものですかね」
「そうだよ。是非とも彼女に聞かせてあげてくれ。
私も是非とも詳細を知りたくてね。
なんでも賊……敵国の工作員二名が友好国の魔術師に扮して王城に侵入したというじゃないか」
オークレーはしたり顔で饒舌に話し出す。
「しかも、対魔法使いに特化した鉄の塊の武器、拳銃も持ち込んだそうだね。
当時あれだけ厳しい持ち物検査を軍部主体でやっておきながら、なんというていたらく。
今後二度と起きないよう総務省とも連携を取りたくてね」
「それは門扉などの衛兵の件ですか?」
「ああ。あの当時と違って、すでに衛兵は総務省が管轄している。
軍部と文官が手と手を取り合って王城を護衛する。
素晴らしいことじゃないかね」
「ほう」
ルシアンは口を閉ざし、眩暈がする頭を必死で回転させる。
おかしい。
確かに、彼らが言うように三年前のあの事件は、国の根底を揺るがすうようなとんでもない行為だった。
工作員が王城に侵入したばかりでなく、旧離宮で呪術と魔法の小競り合いが続いた。
外部からも『秘密結社 黒の杖』が猛攻撃を仕掛けてきて、王宮魔術師と軍部全体で鎮圧したのだ。
だからこそ、軍部でもトップレベルに厳しい箝口令を引いた。
それが功を奏したのか、こんにちまで、王都はもちろん地域にいる領主たちにも知れ渡ることなく済んでいる。
それなのに、なぜこの男は蒸し返す?
しかも、さも軍部に不備があったかのような口ぶり――。
いや、彼は伝聞口調だ。
そう、この男は当時この国にまだいなかった。
じゃあ、誰かがこの男にあの事件のことを吹き込んだというのか。
一体誰が?
あの事件に関わった者は、王宮魔術師二十四人と軍部、それからごく一握りの人間。
妙な胸騒ぎがした。
いつしか動悸が激しくなり、不安が募る。
「これは困りましたなぁ」
ルシアンはあえて戸惑うような笑みを浮かべた。
「何がだね?」
オークレーが眉をひそめた。
「お二人とも、本当にそんな事件があったと信じているのですか?」
ルシアンは小さく「くっ」と笑った。
その笑い声のあまりの冷徹な響きに、オークレーとナディアはぎょっとした表情を見せた。
「いいですか、次官殿。
まさにそれは都市伝説ならぬ王城伝説ですよ」
「王城伝説?」
「はい、そうです」
オークレーの顔色が変わり、一瞬呼吸が止まるのが分かった。
しばし見つめ合って、ルシアンは苦笑した。
「お二人とも、もしもですよ。
そんな国家が転覆するような大事件があったとしましょう。
本当にお二人は真実を聞く勇気がありますか?
特にグロウディーナ嬢」
「どういうことですか?
クレインバール卿」
「考えてみてください。
万が一そういう大事件があって、我々が極秘扱いをしていたとしたら――。
その話を聞くあなた方は、一生他言しないという魔法契約書を交わしていただく形になります。
仮に他所で話せば、あなた方は契約に則り、身体の一部を失います」
身体の一部を失う。二人の顔色が変わった。
二人は互いに気まずそうに目配せし合って、視線を落とす。
(フン、そんなのは嘘だし、はったりだ。
実際、契約内容によるし、罪人でない貴族にそんな拷問のような契約は滅多に交わさない)
けれど、この二人はそんな詳細を知らない。まさに嘘も方便。
「まあ、実際、そんな事件はありませんでしたよ」
ルシアンは小馬鹿にしたように笑ってみせる。
「じゃあ、本当に王城伝説のひとつだったんですか?」
ナディアが尋ねた。
「ええ、もちろん。
どこかの誰かが面白おかしく広めたのでしょう。
だいたい、一体どこからそんな話を仕入れたんですか?」
「それは……ちょっとした知人さ」
オークレーが気まずそうに鼻の頭を掻いた。
「知人?
どういった?」
ルシアンは身を乗り出す。
「飲み仲間だよ。
――そうか、すなわち、素直な私はからかわれたんだな」
オークレーは口元に手を当て、自分に言い聞かすようにしみじみ呟いた。
(素直というよりは、単細胞の間違いだろ)
ルシアンは心の中で冷ややかにぼやきつつ、滑稽だとばかりに声を上げて笑った。
「あはは、その方に一杯食わされたんですね」
「そのようだ。
参ったなぁ」
オークレーは照れ笑いを浮かべた。
(よし、これでなんとか誤魔化せた)
プライドの高い彼のことだ、きっと騙されたことに自尊心が傷つけられ、二度とこの話を嗅ぎ回ることはないだろう。
とはいえ、誰がこのボンクラ次官にあの事件の話をした?
だいたいオークレー次官はお飾りだけの次官だし、彼の側近たちも魔法騎士団員としては下っ端。
昇進したとはいえ、最初から大した情報は持っていない。
もちろん、軍部としても彼ら一派に今後も詳細情報を与えるつもりはない。
それ以前に中堅以上の魔法騎士団員から避けられているから、情報収集は難しいだろう。
ふいに水でも浴びせられたような悪寒に打たれた。
(あぁ、まずい。本格的に気分が悪くなってきた)
立ち込める白い煙。
漂うお香の甘ったるい匂い。
凶暴な香りが一斉にルシアンに向かって押し寄せてきている、そんな気がする。
ルシアンはこめかみを揉む。
頭痛と眩暈。
むっとするような霧が頭の中に直接流れて来る。
身体の奥から突き上げて来るような破壊力のある吐き気。
冷たい汗が背中に流れた。
「失礼します!」
突然、廊下から野太い毅然とした声が聞こえた。
「緊急案件によりノックは割愛させていただきます」
声の主が扉を突き破る勢いで入って来た。
熊のような大きながっしりした男。
「おう、どうした。レイノルド」
ルシアンはその姿を目にし、安堵した。
磊落に声を掛けるものの、ルシアンの体調は限界を迎えようとしていた。
レイノルドはルシアンの顔色を見て、さっと顔を強張らせた。
それからこのお香の匂いにも咎めたのか、思わず鼻を何度も摘まむ。
「まあ、なに?
ノックもなしだなんて。
礼儀知らずな書記官ね」
ナディアが汚らわしいものでも見るかのような目つきで、怒りを露わにした。
だが、レイノルドはそんなナディアを尻目に、ツカツカとルシアンの前まで歩いて、真っすぐ向き合う。
「クレインバール軍師閣下、どうかお人払いをお願い致します。
緊急でお耳にいれなければならないことがあります!」
いつもボソボソ低音でしゃべるレイノルドだが、今は違った。
まるでオークレーとナディアを威嚇するような威勢のいい声を上げていた。
その声にオークレーは肩を震わせた。
どうやら、彼はすでにレイノルド登場からその迫力と気迫に気圧され、絶句していたみたいだ。
「ねえ、あなた。
この状態が分からないの?」
不愉快そうにナディアが横柄に言って、どんっと音を立てて立ち上がった。
「この状態とは……?
何のことでしょう?」
ケロッとした表情でレイノルドは、臆することなくナディアの顔を覗き込んだ。
あまりにも躊躇いのないレイノルドに、ナディアは驚いて身を引く。
「分からぬのか」
なんとか持ち直したオークレーが唸るような声を出す。
「今クレインバール卿は公爵令嬢とのお茶をお楽しみだったのだぞ。
それを邪魔しおって。
だから、貴殿には婚約者がおらんのだ」
オークレーは勢いよく叱りつける。
だが、ぎろっとレイノルドがひと睨みするとたちまち縮み込んだ。
「次官殿。
ここでレイノルドの婚約者の有無は関係ないことでしょう」
ルシアンは首に手を当て、パキパキと鳴らした。
身体を動かすと少し気が紛れる。
「だがな……」
「失礼いたしました。次官殿」
レイノルドは丁寧にオークレーに頭を下げた。
途端にオークレーの態度が軟化する。
「少々気が立っておりました」
身分問わず誰にでも礼儀正しく振舞うのが、レイノルドのいいところだ。
「いやいや、分かればいいんだ」
「寛大なお心、ありがとうございます。
ですが、こちらは国家的危機です。
公爵令嬢ごときのお茶会と同等にされては困ります」
「公爵令嬢ごときですって!」
再びナディアがキーっと憤慨を滲ませた。
たちまち、彼女の顔が屈辱で真っ赤になる。
「あなた、あたしが誰だか知っての口のきき方?」
「ええ。存じておりますよ、グロウディーナ公爵令嬢。
では、逆にお伺いいたします。
あなたは俺のことをご存知ないのか?」
「ええ、知らないわ。
どうせあなたは、伯爵、よくても侯爵家の令息でしょ?」
「え、あ、ナディア嬢……」
思わずオークレーが驚愕しながら割り入った。
「ナディア嬢、本当に知らないのかい? 彼のことを」
「ええ。知らないわ、叔父様。
何か問題でも?」
ナディアの顔がますます不快そうに歪んだ。
「いやぁ……。
さすがに彼のことは知っておいた方がいいぞ」
「え? なぜです?」
レイノルドは滅多に社交界に顔を出さない男だ。
だが、彼が入省して四年。
彼の出自くらいは上流貴族なら押さえておくべきだろう。
ルシアンは鼻で笑う。
「では、ナディア嬢。
今後のためにも覚えておいてください。
彼は我が軍部最高地位にいる総帥の息子、レイノルド・ハウルデュース公爵令息です。
あなたと同じこの国の四大公爵家のお子さんですよ」
「え?」
ナディアは目を何度も瞬いた。
その間にルシアンは胸元のポケットから懐中時計を出しながら、席を立ちあがった。
「それでは、少々お時間は早いですが、これにてお茶会はお開きにしましょう。
国家的危機に軍部の軍師が優雅に上流貴族令嬢とお茶していたとあっては、世間の笑い者です」
「そ、そんな、まだ一時間も経ってませんわ」
「ええ。ですが、これが私のお仕事です。
こういうことはしょっちゅうございます。
その辺りを臨機応変に対応いただけなければ、私は決して、あなたを妻として迎えることはできませんね。
貴女には、もっと貴女のためだけに時間を割ける殿方が相応しいでしょう」
だから、さっさと俺のことは諦めてくれ。
ルシアンはそう言ってやりたかったが、ぐっと堪えた。
「いやいや、ここでその国家的危機を報告させればいいじゃないか」
開き直ったようにオークレーが提案した。
「はい?
どういう意図でですか?」
不可解だとレイノルドが眉根を寄せた。
「クレインバール卿はああ言っているが、いずれ彼女はクレインバール卿の妻となる女性と決まっている。
多少の機密は彼女が知っても問題なかろう。
ほら、名案だろ。」
オークレーの発言に、たちまちナディアから笑顔が零れた。
彼自身も自分がとてもいいことを言ったと思ったのか、ご機嫌に手を叩く。
よっぽどナディアの意に沿わないことをしたくないらしい。
だが、ルシアンは辟易とする。
体調が万全であれば、一言二言嫌味を言ってやるのだが、今はそれも正直辛い。
「あり得ませんね」
代わりにレイノルドが、無表情に一蹴した。
その場の空気が凍った。
「なぜ彼女がクレインバール家の奥様になれるんですか?
双方の条件の不一致により、お二人の縁談は破談になっていると、ルシアン様の御父上サリッド・クレインバール卿から我が父に連絡ありました。
それなのに、彼女がルシアン様の奥様……。
詭弁も甚だしいですよ、
次官閣下。お戯れも大概になさった方がよろしいかと存じます」
「な、何だと……!?」
「なので、彼女は明らかに部外者です。
正帝国公務員でもありませんしね。
ささっ。早々にお引き取りください」
レイノルドが手を振って追い払う仕草をすると、ドレイクや騎士たちがバラバラと部屋には入って来た。
ナディアはもちろん、オークレーも部屋から問答無用で追い出し始めた。
「なぜだ、私は聞くべき立場だぞ」
オークレーは抵抗して、断固部屋から出ていきたくないと言わんばかりに粘る。
「いいえ。次官というお立場だからこそ、まだお耳に入れられない情報なのです。
追って、正式にご報告申し上げます」
ぴしゃりとレイノルドが言い放つ。
そして、そのまま留まる力尽くでオークレーを押し出し、扉をぱたんと容赦なく閉めた。
廊下ではまだ二人がギャーギャー騒いでいるが、この際、無視しておこう。
全員、一斉に深いため息をついた。
「はあ、参った参った……」
ルシアンは、この匂いに我慢ができず、すかさず窓を開けた。
爽やかな風が入り込む。
ようやく呼吸ができる。
その間にもマルスクが鼻をつまみながらお香を消し、レイノルドや騎士もこの香りを不快に思ったのか部屋にこもっている匂いを風魔法で霧散させる。
「レイノルド、助かった。
お前たちもありがとうな」
安堵したルシアンは、協力してくれた彼らに礼を述べた。
「いえいえ、なんのその」
「ひどい匂いですね、これ」
「窒息してしまいそうですよ。
よく堪えましたね」
騎士たちは口々に言った。
「お疲れ様でした。
大惨事でしたね、ルシアン様」
レイノルドが水の入ったグラスをルシアンに手渡した。
「ああ。まったくだ。
でも、本当いいタイミングだったぞ、レイノルド」
一気に水を飲み干した。
マルスクがすっと近寄ってきた。
「体調は大丈夫ですか?
僕、治癒魔法を施しますね」
「ああ」
マルスクが手を翳すと、淡い金色の柔らかな光がルシアンを包み込んだ。
「助かる。だが、マルスク。
お前は大丈夫だったか?
あのむせ返るような甘ったるい匂い。
気分、悪くならなかったのか?」
「あの匂い、僕も嫌いですね。
鼻がひん曲がりそうでした。
でも、まあ、僕は特別製ですから全然へっちゃらですけど」
にこっと小型犬のような笑顔をマルスクは浮かべた。
「服にも香の匂いが付着しています。
あとで宿直詰所でシャワーを浴びて着替えた方がいいですよ」
若い騎士の一人がそう助言した。
「そうだな。
付着どころか服に染みついた感じだ」
ルシアンは顔を歪ませた。
「ルシアン様」
ドレイクがそっと近寄る。
「ヴァレンティス刑部省大臣にもご報告は済ませました」
「ああ、ご苦労」
「ただちにあの二人の業務妨害行為について処理してくださるそうです。
オークレー次官は権限縮小および減俸処分を、ナディア・グロウディーナ嬢は彼女の父親に、ヴァレンティス卿自ら抗議文を送ってくださるそうです」
「助かった」
刑部省大臣アウグスト・ヴァレンティス卿――皇弟であり、大公。
つまり、皇族でありながら官僚の頂点に立つ存在だ。
これで身分至上主義のオークレーも文句一つも言えまい。
「毎回毎回、総帥が外部に出張するたびに何かやらかしますね、彼ら」
レイノルドから深いため息が漏れた。
「そのとおりだ。
本当に困る」
ルシアンはそう呟きながら、集まった面子をぐるりと見廻した。
全員信頼のおける中堅騎士たちだ。
彼らなら、打ち明けても問題ないだろう。
「なあ、君らに調べてもらいたいことがあるんだが、いいか?」
その場にいる全員の顔つきがぐっと引き締まる。
「もちろんです」
「はい、なんなりとお申し付けください」
「助かるよ。じゃあ――」
ルシアンは今感じた違和感を彼らに話す。
鈍い頭痛はまだうっすらと残っていた。
爽やかな風が吹き込む中、ルシアンの胸には消えぬ不安が巣食っていた。




