第131話 崇められる生贄と、森に溶ける水の魔法
ローゼルは目の前の白いガウンを羽織る男たちに不気味さを覚えていた。
ガウンの男たちが馬車に共に乗って来た貴族の彼の遺体をどこかに持ち去り、客車の中も隅々まで掃除する。
ローゼルは馬車の端に寄って、おっかないものを見る目つきで、ちらちらと掃除をする彼らを見た。
バチッと目が合えば、彼らはニッと口角を持ち上げて不気味に笑う。
背筋がゾッとした。
さっと目を逸らした。
そのうち何事もなかったかのように客車はキレイになっていく。
「生贄様。
何かお飲み物でもご用意いたしましょうか?」
御者が腰を低くして、ローゼルに伺う。
「い、いえ、大丈夫です」
ローゼルは首を振って断った。
馬車の外では雨の中、泥まみれになりながらも、膝まづいてローゼルに手を合わせて崇め祀っている人たちがいる。
しかも、こうして改めて見ると、想像以上に大勢の人間がいる。
(こんな中で、悠長に飲み物なんて飲んでいられるわけないでしょ!)
「様」を付けているけれど、生贄はしょせん生贄だ。
今だって不気味に笑いながら、鋭い刃を向けてきそうな空恐ろしさがある。
もし、これで飲み物まで用意されたとしても、何が入っているか分からないから口なんてつけれない。
彼らはこうやって淡々と、そう、私の遺体も生贄として処理するんだろう——。
そう思ったら、すうっと全身から血が引いていく。
その狂信的な信仰心。
薄気味悪さを感じた。
生贄様。
意味が全く分からない。
生贄様と呼ばれ、器だのなんだの崇め奉るように祈られて……。
今頃になって頭の中が真っ白になって、奇妙な震えを背中に感じていた。
間違いなく、このまま彼らに連れ去られてもいい結末を迎えるわけがない。
逃げろ。逃げるんだ。この場から一刻も早く。
本能的にもこれはまずい状況だと警告している。
それなのに、足が動かない。
まるであの時みたいだ。
新種の不気味な魔物の群れに襲われたときのような――
あの時はタイミングよくルシアンが助けてくれた。
でも、今回はそういうわけにはいかない。
ふいにルシアンの優しい笑顔が思い浮かんだ。
そうだよね、こういうときこそ、冷静さを失ってはいけないよね。
ローゼルはきゅっと唇を噛み締め、拳を握った。
(まずは落ち着こう、とにかく落ち着かないとね。ローゼル。
そうしないと、ルシ様にもう会えなくなっちゃうよ。
だから、頑張れ)
どくどくと心臓が鳴っているのを必死で宥め、ローゼルは狼狽しながらも、目の前に広がる光景を観察する。
崇めてくる白い装束の男たち。
ニヤニヤ嗤う御者の男。
一瞬で惨殺された元騎士の彼。
深い森に今にでも泣き出しそうなどんよりとした空。
(大丈夫。私にはまだチャンスがある。
だって、こうして生贄様なんて呼ばれていても、私は五体満足だし、拘束もされていない。
変なクスリを飲まされてもいない。
それどころか、以前の魔物に襲われた頃より体調だって抜群にいいじゃないの。
これもルシ様のお陰!)
考えろ、絶対に何か手立てはあるはず。
なんとしても切り抜けて逃げるのよ!
その時、ローゼルは雷に打たれたようにびくっと身体を震わせた。
暗雲が立ち込める空を見上げた。
巨大な魔力を感じた。
なんだろう。
奇妙な魔力にローゼルは神経を尖らせた。
森には雨が静かに降り注ぐ。
その中、熱心にローゼルを崇める謎の白い集団。
遠くの方で、さやさやと緑のトンネルを通り抜ける風の音が聞こえた。
こっちに向かってくる。
森からバサバサと鳥たちが飛び立っていく。
ローゼルは立ち上がった。
かすかな震動を感じたのだ。最初はかろうじて感じる程度だったのに、徐々に大きくなり、やがて何かが掠める音が聞こえてきた。
この魔力——人間じゃない。
魔物だ。
一つ一つは小さい魔力だけど、数が半端じゃない。
塊で見れば、それもかなり強力な――
まさに無数。
やってくる。
向かってくる。
ここに一斉に集まっている。
ローゼルはハッとして、赤黒く血塗れた地面に視線を落とした。
人の血を好む魔物も多い。
その匂いが少しでも漂えば、魔物たちが集まってくる。
ただでさえ、この森は「魔力漂う地」が点在していて魔物が発生しやすい。
当然、魔物が出没しやすい地域でもある。
ローゼルは白装束の人々をちらっと盗み見た。
(この人たち、悠長に跪いて私を拝んでるけど、その辺気づいていないよね)
魔力感知に優れているローゼルは勘づいていても、彼らは誰一人としてこの緊急事態を察知していないようだ。
違う意味でローゼルは心配になってきた。
やがて羽音が聞こえた。
血を求める魔虫だ。
首筋や手首の太い血管の近くを刺されたら、運が悪いと死に至る場合もあり得る。
「……て」
ローゼルから小さな声が漏れた。白装束の人々は戸惑ったように顔を見合わせた。
「だから、逃げて、早く逃げて! 魔虫にやられるわよ!」
ブーンという羽音が雨音と同時に降り注いだ。
虫の大群だ。
数人の男たちがすっと立ち上がり、魔法詠唱を口ずさむ。
彼らは次々と虫に向かって、手を翳す。
迸る緋色の光が渦を巻き、焼き殺す。
パチパチと火花が爆ぜ、じめっとした湿った土や腐葉土の匂いの中に、焦げ臭さが漂う。
紅蓮の炎と薄暗い曇り空。
炎のその鮮やかさが、やけに不吉な色に見える。
「さすが生贄様。虫を予兆し、我らにご教示されるとは」
くっくっと御者の男が、燃え上がる虫たちを見ながら肩を震わせて笑う。
「これはますます楽しみですよ」
男はローゼルを見下ろした。
面白がる目つき。
まるで新しい玩具を見つけたかのような、それでいて人を小馬鹿にした嘲笑。
なんだろう、癪に障る男だ。
ムカムカしてくる。
「勝手に連れてきておいて『何が楽しみ』よ。
あなたたち、何者?」
ぎろっとローゼルが睨みつけた。
だが、男は怯むどころか、ますます愉快だといわんばかりに笑い続ける。
「さぁね。
ご一緒に来ていただければ、そこで種明かしをしますよ」
虫が燃える業火を背景に、男は鷹揚に手を広げた。
虫が焦げる臭い。
「信用できない」
ローゼルは一蹴する。
「あなたが殺害した彼だって、私をあなたたちに引き渡せば、それと引き換えに国外逃亡できると意気揚々と話していたわよ。
それなのに、あなたはいとも簡単に約束を反故にし、首を刎ねた。
あれは、風の刃の魔法よね」
「ご名答」
男は目を細め、ますます興味を持ったように身を乗り出してローゼルを見た。
「お噂どおり、なかなか鋭いご令嬢だ。
アイツが『もう少し様子を見よう』と言った意味がよく分かった」
「アイツ?」
ローゼルは眉をひそめた。
燃え上がる炎の向こう、森からさらに巨大な気配を感じた。
ヒヒィィン
馬たちが嘶いて暴れ出した。
白いガウンの男たちが必死で宥めている。
だけど、馬は余計混乱した様子で引きちぎって逃げようとする。
虫にでも刺されたのだろうか?
それにしては、鼻を大きく広げ、耳を後ろにピタッと伏せている。
違う、何かに怯えているんだ。
そう思った次の瞬間、ローゼルはさらに迫りくる巨大な魔力を感じた。
そして、その方向に視線を投げた。
御者もつられてローゼルの視線を辿る。
暗い木々の間から覗く赤い不気味に光る無数の眼。
ハッと息を呑んだ。
近づいてくる枯葉を踏みしめる重い足音。
低い唸り声がそこに幾重にも聞こえ、その姿を現す。
「森狼……!」
漆黒の毛並み、狼の数倍はある巨体の魔物だ。
森狼は、血や死臭に群がる習性がある。
必ず複数匹で現れ、連携して獲物を追い詰める。
人間の天敵だ。
ぞろぞろと現れる森狼の群れ。
これには、さすがの御者もたじろいだ。
なにせ、森狼はかなりの手練れの剣士でなければ、なかなか討伐することはできない。
ましてや群れとあっては、いくら複数の魔法使いがいたとしても困難を極めるからだ。
白装束たちからも動揺が広がる。
「残念でしたね。
遺体をすぐに処分したのはよかったんですが、血の匂いまで消すのを忘れていたのが致命的だったようですよ」
ため息交じりでローゼルは言った。
御者は小さく舌打ちをした。
魔力を持つ人間の血は、人間の血を好む魔物にとって、大変美味なんだそうだ。
殺された彼は魔法騎士団に所属していたぐらいだ。
いくらクスリで魔力量を増強していたとしても、通常の人間よりは魔力を多く持っている。
(彼らの敏感な鼻が反応するのは当然だよ)
「ガルルルル……」
不気味に響く森狼の唸り声。
ローゼルは険しい顔で身構えた。
森狼から視線を逸らすことなく、頭をフル回転させる。
きっと、森狼は白装束の人たちを何の躊躇いもなく襲うだろう。
そうなると、生贄の私を「あの方」のところまで送り届けたい彼らは私を殺せないし、殺させない。なんとしても、私を狼たちから死守しようとするはず——。
(あれ、これってひょっとすると、これは逃げ出すチャンスなのじゃないのかな)
混乱に乗じてとんずらするには、うってつけ。
ローゼルは明るい気持ちになって、さらにこの後、どう動こうか素早く考える。
まず、この魔法が使えない客車から脱出しなくてはいけない。
それが終わったら人間の匂いを消すために、水の膜で身体を覆って気配を消そう。
以前、亡き母が森に入る時に使っていたあの魔法が使える——
その瞬間、群れの先頭に立っていた森狼の一匹が地を蹴って白いガウンの集団に襲いかかった。
それを皮切りに連鎖するかのように、次々と狼たちが地を蹴る。黒い放流となって襲う。
「来た……っ!」
場は一気に騒然とした。
最悪なことに、そこに羽虫も混ざるようにして飛んでくる。
白装束の集団は、それぞれ自分の武器や魔法で闘う。
剣と牙の交わる音。
虫の不快な羽音。
交わされる攻撃魔法の数々。それを避け、攻撃する狼たち。
「くそっ」
そして、想像以上に森狼の数は多かった。
「うわっ!」
「助けてくれ」
やがて苦痛に歪む悲鳴が響き渡る。
ローゼルは耳を塞いで、目を背けた。
見てはいけない。
見たら同情して助けたくなってしまう。
この人たちは私を拉致して「生贄様」なんて呼んでいた。
もともと私を殺す気なんだから、同情は禁物!
私は何があっても、五体満足で逃げ切る!
決意を新たにしてローゼルはそっと客車を出ようと試みる。
だが、御者が客車付近でローゼルが逃亡しないように立ち塞がっていた。
「動くな!」
御者に怒鳴られ、ローゼルは一瞬びくっとする。
しまった、見つかった。
だが、次の瞬間、馬に狼が牙を突き立てて噛みついた。
ヒヒヒィィン!
馬が恐怖とその激痛で突然走り出した。
馬は、森の中へ駆け込む。
「ひゃん!」
自ずと馬が動いた拍子に客車が動いて、それに乗っていたローゼルは尻もちをついた。
「イタタタ……」
ローゼルがぶつけた尻を撫でている間に馬は混乱し、客車を引いたまま森の奥へと駆け巡った。
「うわぁ!」
突然動いたので、ローゼルは振り落とされないように客車に必死に捕まった。
「くそがっ!」
舌打ちする御者が手を伸ばすも、馬はさらに加速した。
ガタガタと骨が鳴るほどの激しい揺れ。
どれだけ走り続けたのだろうか。
背後から二つ、森狼の気配がする。
白装束の彼らの魔力は感じないが、森狼はまだしぶとく追いかけてくる。
(しつこいなぁ)
そう思った時、開きっぱなしになっていた客車の扉が大樹にぶつかった。
その衝撃でローゼルの身体は大きく傾き、床に頭を打つ。
打ち付けた頭を押さえながら、目を開くと、目の前に小さな星が飛んでいた。
バキッ
大きな音がしたと思ったら、扉がぶつけた衝撃で大きく歪んで、しまいには外れた。
外れた扉は、後ろに大きく投げつけられる。
「キャイン!」
犬の悲鳴に似た鳴き声。
「え?」
ローゼルは揺れる客車の至る所に捕まりながら、なんとかして外を覗いた。
外れた扉が追いかけてきた数匹の森狼たちに正面から衝突したようだ。
地面に気を失った森狼たちが数匹いた。
しかも、白装束の男たちからはどんどん遠ざかって、今では点に見えるくらい小さい。
どうやら、彼ら自身も苦戦しているためか、こちらを追いかけてくるほど余裕がないようだ。
狼も瞬く間に小さくなっていく。
(ラッキー)
そう思ったら、とてつもない衝撃がローゼルを襲った。
客車が木に猛烈な勢いで衝突したからだ。
内臓がひっくり返るような遠心力。
激しい揺れでローゼルは客車から振り落とされ、地面に転がった。
「痛ったぁ……」
大きい衝撃だった。
打ち付けた腰と肘を押さえながら、ローゼルは顔を上げた。
暴走する馬は壊れた客車を引きずって、どんどん森の奥へと消えていく。
「あぁ、置いていかないでよ……」
ローゼルは情けない声を出しながら、手を伸ばして、よろよろと立ち上がった。
腕に痛みを覚え、見ると肘から血が滲んでいた。
だが、骨は折れていないし、頭を打ちつけたといっても、これといって何か支障をきたしているわけでもない。
(痛い。とにかく痛い。
だけど、私、運がいい……。
だって、あの白装束の集団から逃げるという第一目的は達成したんだもの)
ローゼルは切れた傷口をハンカチで結んで応急処置をし、スカートについた泥を軽く払う。
といっても、これだけ泥だらけだと気休めにもならないが。
(すごいぞ、私。
あの危機的状況から一発逆転したんだから)
あの場から逃げれたことを素直に喜ぶべきだ。
そう自分を鼓舞しつつ、ローゼルは周囲を見回す。
雨は小雨とはいえ、いよいよ身体にまとわりつき、内臓までがじっとりと冷たく濡れる感覚に陥る。
上も横も鬱蒼と茂る森。
梢は高く、葉はさらに高いところで折り重なって空を覆っていた。
ローゼルは深呼吸をしてみた。
「森の匂いがする……」
魔力を探ると、森狼たちの気配はかなり遠くにある。
それから、白装束の集団の魔力はもはや感じない。
思ったよりも引き離すことができたようだ。
はあ、と安堵のため息をつく。
ローゼルは少しでも彼らから離れたくて、気づけば馬の走った足跡を頼りにさらに奥へ歩き始めていた。
絶え間なく雨は降り続く。
木々も花々もぼんやりとした灰色に滲み、たちまち方向感覚もなくなってしまいそうになる。
陰鬱な深い緑色。
この森は、こんなにも広かったのか。
闇の奥。
ふとそんな言葉が浮かんだ。
森の奥へ、奥へ。そこに何がある?
何かの冒険小説に登場した言葉だ。
まさにそんな感じ。
森の濃密な空気。
「さて、ここからどう帰ればいいかなぁ」
ふと、そう思い立って呟いた途端、急に息苦しさを覚えた。
鉛のように重たい不安がじわじわと這い上がってくる。
まるで、この世に一人残されたような心細さに囚われていく。
足を進めるたび、泥が重く絡みつく。
ついには馬の足跡、通った痕跡を見失った。
たちまち、ローゼルは絶望感に襲われた。
すぐに周囲をキョロキョロ見廻し、少しでも馬の通った跡がないか、何か手掛かりはないかと目を凝らした。
遠くからサァサァという柔らかい音が響き始めた。
雨脚が強くなったようだ。
ローゼルは上を見上げた。
頬に降り注ぐ雨。
不意にローゼルは涙ぐみたくなった。
「ルシ様ぁ……」
ルシアンを思い出して、名前を呼んでみる。
もちろん返事は返って来ない。
虚しく消えていくだけだ。
頬に流れる水が涙なのか、雨雫なのかもはや分からない。
その時、木陰から小さな影が現れ、びくっとした。
濡れた草をかき分けるように、野ウサギの親子が駆けている。
雨に打たれながら、小ウサギは親の後を必死に追い、親は何度も振り返りながら寄り添うように走る。
遠くなっていく親子ウサギの姿にローゼルは微かな温かなものを感じた。
(そうだよね、諦めず歩いていれば、なんとかなるよね)
今頃、ルシアンは心配してくれているはずだ。
だからこそ、ちゃんと帰れたら、ルシ様に褒めてもらおう。
それから、う〜んと甘やかしてもらって、大好きなホットワインも用意してもらって——
(そうだよ、帰るよ。ローゼル)
雨に打たれ、身体は冷え冷えとするけれど、だんだんと頭は冴え渡ってきた。
すっかり忘れていたが、ここは魔物の多い森。
(自分の身は自分で守らなくっちゃ。
そうだね、まず帰るにしても、人間の気配は消しておくのがいいよね)
あ、そうだった。
亡き母が森に入る時に必ず施していた魔法——。
ローゼルは記憶を呼び起こして詠唱をする。
「――水の精霊よ、静けさを授けよ。
我が気配を森に溶かし、ただ透明となり、風と雨の一部となれ
――霧隠流水」
たちまちローゼルの周囲を、幾重もの光を孕んだ繊細な水の膜が薄く覆う。
きっとこの雨の相乗効果もあるだろう。
快晴の時よりも水がローゼルの助け水となって上手に森と気配を融合させ、湿った空気を吸い込んでいく。
まるで蜃気楼のようにローゼルの存在を景色に同化させていく。
心地の良いほんのり温かい感触。
体温を内側に優しく閉じ込めているかのようだ。
これで、派手に魔法を使ったり、大騒ぎしなければ魔物や白集団たちに見つかる可能性は低くなる。
母の魔法は、生家にあった魔術本のどこにも書かれていなかった。
けれど、先日王都で偶然会ったクロフォード・ノーエランドが勧めてくれた水魔法の魔術本。
あそこには記載されていた。
ちょうど昨晩、ルシアンが帰宅する直前までその本を読んでいたのが思わぬところで役に立った。
なんと運がいい。
(今度出城したら、ノーエランド卿にお礼を言わなくっちゃ。
いい本を紹介してくれてありがとうございましたって)
「よし」
ローゼルはスカートをまくり上げ、石を探す。ちょうどいいサイズの石を見つけた。
「ごめんね、ちょっと印をつけさせてね」
石で木の幹に「×」印をつけた。
森を闇雲に歩くのは危険だ。とりあえず、この印をつけておけば一度通ったことが分かる。
雨の滴がローゼルの頬を伝う。
ローゼルはそれを手の甲で拭い、一目散に森の奥へ進んでいった。




