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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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98/105

第98話ー福州出発ー

またまた日があきました 汗

読んでくださる方に感謝感謝です!


この回で福州編は終わります。

次は台湾編なので、お楽しみに!

二日酔いの回復に一日中あてた、その翌日。

縁たちは朝イチの、台湾行きの魔導フェリーの乗り場にいた。


そこには、ギルドマスターである沈宇軒チェン・ウーシエンと、マフィアに家族を人質に取られていたSランク冒険者である雷厳ライ・イェン。"玄天の一陣ゲンテンノイチヂン"リーダーの墨 蓮陰ボク・レイイン。スラムから救出された子供、ナミが見送りに来ていた。


アネさん達、もう行っちゃうの?」

不安そうな顔でナミは縁に尋ねる。縁は、

「ナミ、心配するな。お前たちの身柄は、ちゃんとした孤児院が引き受けてくれる。」

と、初めて会った時は汚れていた髪に、手を載せる。スラムの子供たちをまとめてきたとはいえ、まだまだ子供。綺麗になった髪は柔らかく、それは心のやわらかさを表しているかのようだった。

「ナミ、お前は一丁前にスラムの子供たちをまとめてたじゃないか。この先、何を恐れることがある?大人を頼れ。誰でも頼っていいんだ。お前たちはひとりじゃない。」

縁は優しく、やさしく語りかけた。

「うっ。うっ…。」

ナミは溢れ出る涙を必死でこらえる。

「泣かないで、ナミ君。」

ユエが優しく声をかける。

「お前が泣くと、俺たちも悲しい。」

ヤオがナミの肩に手をかける。

「ナミ君、君は強い子だよ。これから先、楽しい未来が待ってる。」

ヤンガが目線を合わせて微笑む。


ナミは、

「お、俺!姐さんみたいな、冒険者になる。"蓮花のレンカノコトワリ"みたいな、すごいパーティーを作るよ。助けてくれたこと、忘れないから!」

と涙を堪えながら言った。4人は微笑み、縁は、

「そうか。お前が私たちを夢とするならば、その夢に応えるよう努めよう。ナミ、お前は聡い子だ。努力を忘れず、出自を嘆かず、頑張るんだよ。」

ナミをそっと抱きしめた。



「縁様、私たち家族を助けてくださり、ありがとうございます。」

おずおずと声をかけてきたのは雷厳ライ・イェンである。

「ご家族は、ゆっくりと休まれていますか?」

ヤオが尋ねる。雷厳ライ・イェンは、

「お陰様で、怪我もなく、我が家に帰ることができました。これも全て、縁様とお弟子様達のご尽力あっての事。このご恩、決して忘れません。」

と、4人に深々と頭を下げた。縁は、

「気にするな。お前はいちばん大切なものを守っていただけだ。例えそれが、福州に害を及ぼしていたとて、誰がお前を責められようか。悪は悪。私達が滅ぼした。次はお前がSランクの力を持って、この福州を守っていけばいい。」

縁は右手を差し出す。雷厳ライ・イェンは、瞳を潤ませながら、縁の手を両手で握りしめ、

「本当に、ありがとうございます。」

と、声を震わせて言った。


蓮陰レンインも手を伸ばす。

「縁様、Sランクとは嘘であろう?私は知っておりましたよ。強欲の名を関するSSSランカーのことをね。その力を間近で見られたこと、生涯忘れはせんぞい。」

とニヤリと笑った。縁は、

蓮陰レンイン殿はわかっていると思っていたよ。それだけの強さがある。ギルドマスター、蓮陰レンイン殿は、私から見ればAランク止まりの冒険者ではない。是非Sランクにランクアップさせてやって欲しい。」

蓮陰レンインと握手を交わしながら、ギルドマスターに言った。

ギルドマスターが、縁に歩み寄った。その手には書類が握られている。

「縁様、此度のこと本当に感謝いたします。貴方がたまたまここに来なければ、福州はやがてマフィアの言いなりになっていたでしょう。蓮陰レンイン殿のランクアップの件、しかと承りました。」

ギルドマスターは続けて、

「そしてこの書類は、お弟子さんたちのランクアップ申請の書類になります。お弟子さんは難なくAランカーを倒した。使役獣がいたとて、4人で白澤堂バイセードンを壊滅させた力はBランク、Cランクでは収まりません。」

チェンは書類を差し出して言った。縁は、

「いいのか?まだ弟子たちは冒険者になって日も浅い。冒険者としての知識はまだまだひよっこだ。」

と戸惑いながら尋ねる。チェンは、

「冒険者には知識や経験も必要です。しかし最後に仲間と民を守るのは力。その力を、お弟子さん達は十分に示しました。冒険者の知識は、縁様からご教授なされば充分間に合います。どうぞ台湾でランクアップさせてやってください。」

と、微笑んだ。縁は、

「そうか、ならばそのようにしよう。」

と書類を受け取り、チェンと握手を交わした。


「お客さーん!もう出ますよー!」

魔導フェリーの船員が、港につけたステップの上から大声で呼んでいる。

「今行く!!」

縁は答えると、

「じゃあ、私達は行くよ。蓮陰レンイン昨日飲み交わした奴らにも、礼を言っておいてくれ。みんな元気でな!」

と踵を返した。


ヤオは、

「ナミ、まずは好き嫌いなくしっかり食べて、身体を大きくするんだぞ!」

とナミの頭をわしゃわしゃと撫でた。

ユエは、

雷厳ライ・イェンさん、マフィアに囚われてたことは、きっとトラウマになっちゃうから、家族をよーく見てあげてね。」

と手を握って言った。

ヤンガは、

「ギルドマスター、お世話になりました。ランクアップの書類、ありがとうございました。」

とぺこりと頭を下げた。

そして3人とも、

「「「またいつか!」」」

と笑顔を見せて、師匠の後を追っていった。


チェンもナミも、雷厳ライ・イェンも、蓮陰レンインも、その姿に深く頭を下げた。



4人はフェリーのステップを、軽やかに上がる。台湾海峡、いにしえには黒水溝と呼ばれる海を渡るのだ。その先にはどんなものが待ち受けているか、4人は知る由もない。

ただ夜明けの光が、海からさしているのであった。


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