第98話ー福州出発ー
またまた日があきました 汗
読んでくださる方に感謝感謝です!
この回で福州編は終わります。
次は台湾編なので、お楽しみに!
二日酔いの回復に一日中あてた、その翌日。
縁たちは朝イチの、台湾行きの魔導フェリーの乗り場にいた。
そこには、ギルドマスターである沈宇軒と、マフィアに家族を人質に取られていたSランク冒険者である雷厳。"玄天の一陣"リーダーの墨 蓮陰。スラムから救出された子供、ナミが見送りに来ていた。
「姐さん達、もう行っちゃうの?」
不安そうな顔でナミは縁に尋ねる。縁は、
「ナミ、心配するな。お前たちの身柄は、ちゃんとした孤児院が引き受けてくれる。」
と、初めて会った時は汚れていた髪に、手を載せる。スラムの子供たちをまとめてきたとはいえ、まだまだ子供。綺麗になった髪は柔らかく、それは心のやわらかさを表しているかのようだった。
「ナミ、お前は一丁前にスラムの子供たちをまとめてたじゃないか。この先、何を恐れることがある?大人を頼れ。誰でも頼っていいんだ。お前たちはひとりじゃない。」
縁は優しく、やさしく語りかけた。
「うっ。うっ…。」
ナミは溢れ出る涙を必死でこらえる。
「泣かないで、ナミ君。」
ユエが優しく声をかける。
「お前が泣くと、俺たちも悲しい。」
ヤオがナミの肩に手をかける。
「ナミ君、君は強い子だよ。これから先、楽しい未来が待ってる。」
ヤンガが目線を合わせて微笑む。
ナミは、
「お、俺!姐さんみたいな、冒険者になる。"蓮花の理"みたいな、すごいパーティーを作るよ。助けてくれたこと、忘れないから!」
と涙を堪えながら言った。4人は微笑み、縁は、
「そうか。お前が私たちを夢とするならば、その夢に応えるよう努めよう。ナミ、お前は聡い子だ。努力を忘れず、出自を嘆かず、頑張るんだよ。」
ナミをそっと抱きしめた。
「縁様、私たち家族を助けてくださり、ありがとうございます。」
おずおずと声をかけてきたのは雷厳である。
「ご家族は、ゆっくりと休まれていますか?」
ヤオが尋ねる。雷厳は、
「お陰様で、怪我もなく、我が家に帰ることができました。これも全て、縁様とお弟子様達のご尽力あっての事。このご恩、決して忘れません。」
と、4人に深々と頭を下げた。縁は、
「気にするな。お前はいちばん大切なものを守っていただけだ。例えそれが、福州に害を及ぼしていたとて、誰がお前を責められようか。悪は悪。私達が滅ぼした。次はお前がSランクの力を持って、この福州を守っていけばいい。」
縁は右手を差し出す。雷厳は、瞳を潤ませながら、縁の手を両手で握りしめ、
「本当に、ありがとうございます。」
と、声を震わせて言った。
蓮陰も手を伸ばす。
「縁様、Sランクとは嘘であろう?私は知っておりましたよ。強欲の名を関するSSSランカーのことをね。その力を間近で見られたこと、生涯忘れはせんぞい。」
とニヤリと笑った。縁は、
「蓮陰殿はわかっていると思っていたよ。それだけの強さがある。ギルドマスター、蓮陰殿は、私から見ればAランク止まりの冒険者ではない。是非Sランクにランクアップさせてやって欲しい。」
と蓮陰と握手を交わしながら、ギルドマスターに言った。
ギルドマスターが、縁に歩み寄った。その手には書類が握られている。
「縁様、此度のこと本当に感謝いたします。貴方がたまたまここに来なければ、福州はやがてマフィアの言いなりになっていたでしょう。蓮陰殿のランクアップの件、しかと承りました。」
ギルドマスターは続けて、
「そしてこの書類は、お弟子さんたちのランクアップ申請の書類になります。お弟子さんは難なくAランカーを倒した。使役獣がいたとて、4人で白澤堂を壊滅させた力はBランク、Cランクでは収まりません。」
沈は書類を差し出して言った。縁は、
「いいのか?まだ弟子たちは冒険者になって日も浅い。冒険者としての知識はまだまだひよっこだ。」
と戸惑いながら尋ねる。沈は、
「冒険者には知識や経験も必要です。しかし最後に仲間と民を守るのは力。その力を、お弟子さん達は十分に示しました。冒険者の知識は、縁様からご教授なされば充分間に合います。どうぞ台湾でランクアップさせてやってください。」
と、微笑んだ。縁は、
「そうか、ならばそのようにしよう。」
と書類を受け取り、沈と握手を交わした。
「お客さーん!もう出ますよー!」
魔導フェリーの船員が、港につけたステップの上から大声で呼んでいる。
「今行く!!」
縁は答えると、
「じゃあ、私達は行くよ。蓮陰昨日飲み交わした奴らにも、礼を言っておいてくれ。みんな元気でな!」
と踵を返した。
ヤオは、
「ナミ、まずは好き嫌いなくしっかり食べて、身体を大きくするんだぞ!」
とナミの頭をわしゃわしゃと撫でた。
ユエは、
「雷厳さん、マフィアに囚われてたことは、きっとトラウマになっちゃうから、家族をよーく見てあげてね。」
と手を握って言った。
ヤンガは、
「ギルドマスター、お世話になりました。ランクアップの書類、ありがとうございました。」
とぺこりと頭を下げた。
そして3人とも、
「「「またいつか!」」」
と笑顔を見せて、師匠の後を追っていった。
沈もナミも、雷厳も、蓮陰も、その姿に深く頭を下げた。
4人はフェリーのステップを、軽やかに上がる。台湾海峡、いにしえには黒水溝と呼ばれる海を渡るのだ。その先にはどんなものが待ち受けているか、4人は知る由もない。
ただ夜明けの光が、海からさしているのであった。




