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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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96/97

第96話ーマフィア掃討作戦 後ー

1週間あまりもお待たせして申し訳ないです。

マフィア掃討作戦も終盤です。


あと、昨日のViewが初めて3桁越えたんですけど、な、何があったの?!!

「さてさて、まずは地下から出ますか!ね、縁ちゃん!」

ベリアルが笑顔で言う。縁は、

「勝手に仕切るな!バカ悪魔!」

と言った。


悲しそうな表情を上っ面だけしながら、ベリアルは弟子たちに目を向ける。

ーほうほう。3人とも蛟か。銀髪は陽の気で溢れてるし、黒髪の子は陰の気が溢れてる。茶髪の子は、特別なにかある訳では無いが、持っている杖は特別なものだ…。これは気になるなぁ…。ー

とニヤニヤする。


そんな様子を見て縁は、

「おい、ベリアル。」

氷のような声をかける。弟子たちは思わずゾクッとする。

「弟子たちに何かちょっかいをかけてみろ。お前、殺すぞ。」

縁は黒い瞳を爛々と光らせて殺気を放つ。

弟子たちは「ゴクッ」っと唾を飲んだ。


ベリアルはなんでもないように、

「俺と縁ちゃんが戦ったら、この街、地図から消えちゃうね!そんな野暮なこと、俺はしないよ〜。」

と、おどけて見せた。縁は、

「はぁ〜。全くお前は…本当に悪魔らしい悪魔だよ。」

とこめかみをグリグリしながら言った。


その言葉に、弟子たちは緊張を解く。正直今日1番肝が冷えた瞬間だった。


「おい、”白面書生”だっけ?ありがたぁく殺さずに置いてやるから、ちゃんと歩けよ?」

縁は冷たい目で、白澤堂バイセードンのボスに話しかける。

「ひゃ、ひゃい!!」

あんなに威張っていたのに見る影もない。縁は、

「ヤンガ、魔法を使って連行しろ。万が一にでも逃がしたらまずい。」

とヤンガに指示を出す。ヤンガは、

「は、はい!」

と答えると、早速、菩提樹の杖から淡く光るツルを伸ばして、ボスを拘束した。そのまま立たせると、おもらしが汚いので”浄めの炎”をかけて衣服を綺麗にした。


縁たちは階段を昇り、そのまま地上に出た。

「ベリアル。上がってくる途中で見ただろうが、あれが、"落涙のケシ"の中毒者たちだ。お前ならどう対処する?」

縁は淡々と尋ねた。ベリアルは、

「そうだなぁ。"落涙のケシ"とやらの悪魔が干渉した部分を取り除くか、記憶ごとごっそりいってもいいかもな。ただどちらにせよリスクはあるんだよな。健康体になっても、また麻薬に触れたら、悪魔的干渉が無くとも、二度と抜け出せないだろうねぇ。」

と優雅に顎に手を当てて答えた。縁は、

「そうだな。じゃあ記憶ごと、ごっそりいくか。ベリアル、やれるな。」

とベリアルの目を見た。


ベリアルはにんまりと笑い、

「悪魔を使役するのには何が必要だと思う?弟子3人組さん?」

と唐突にヤオ達に話を振った。とつぜん、実力も計り知れない"悪魔"という存在に、話を振られた3人は混乱した。だが、ユエは少し考えると、

「えーっと、タダでは無いだろうから、代償が必要ってこと?」

と答えた。ベリアルは、

「陰の気の満ちるお嬢さん、正解さ。我々を使役するためには代償が必要だ。例えば哀れな子羊を捧げるとか。な、縁ちゃん。中毒者共の記憶なんて俺には何の得もないからね。」

とウインクした。

縁は、

「はいはい、いつものね。払ってあげますのでー。さっさとキングたる力を見せてくれる?まだ、窮奇幣チウチーバンが残ってるんだよ。」

とかったるそうに答えた。

「はいはい。主の仰せのままに。」

ベリアルは優雅に礼をすると、その漆黒の翼をもって上空に舞い上がった。



朝日の中に浮かぶ、何にも染まらぬ漆黒の影。ベリアルは一言、

「ドレイン!」

と発すると、スラム中から幽霊のようなもやが、ベリアルの元へ集まっていった。それは、

"記憶"。"落涙のケシ"に関わる記憶と、身体症状をまとめて吸収する荒業。悪魔のキングたるベリアルには、容易い所業。


ーーしばらくして。

「終わったよー。俺が記憶とか取ったやつは、全員昏倒してるから気をつけてね。」

ベリアルが何事も無かったかのように降りてきた。縁は、

「さすがは悪魔だな。記憶操作はお手の物か。私がするとなると、相手に負担が生じてしまうからな。助かったよ。」

とベリアルを褒めた。


弟子3人はベリアルに集まっていく、"心の記憶"と"体の記憶"を見て、背中にじっとりと冷たい汗をかいていた。

ーこれが最古の悪魔、悪魔のキングの力…。ー

ー今の自分たちでは、手も足も出ない…。ー

誰ともなく思った。



縁は自分たちの仕事が済んだので、窮奇幣チウチーバンの対処にあたっている、”玄天の一陣”のリーダー、墨 蓮陰ボク・レンイン思考共有リンクを行った。

蓮陰レンイン殿、窮奇幣チウチーバンはどうなっている?…

縁が尋ねる。

…縁殿、まずいことになっておる。スラムの子供を1人、ボスが人質に取っておるぞ。窮奇幣チウチーバンは人質と引替えに、福州からの脱出を要求しておる。早くこちらに来れぬか?…

蓮陰の少し焦った声が答えた。

…今行く。…

縁の脳裏に、昨日の子供たちの顔が浮かぶ。そして、

「みんな!ついてこい!厄介なことになった!!!」

全員に声をかけて全速力で走り出した。

突然のことに全員呆気にとられる中、

「はいはい!弟子ちゃん達、走るよ!」

と声を上げたのはベリアルだった。その声に、3人も全速力で走り出す。

「速い!!!」

縁の後を追いながら、ヤオは思わず言った。それを見たベリアルは、

「仕方がないなぁ、”アクセル!”」

と支援魔法をかけてやった。すると弟子たちの体が軽くなる。それでも必死に走った先には、仁王立ちしている師匠の姿があった。


縁の目の前には、冒険者たちにぐるっと包囲されている、1人の男と子供の姿があった。

縁は、

ーくそっ。ナミ、すまない。昨日の出来事を見られていたか。私のミスだ。ー

と奥歯を噛み締める。


そこに蓮陰レンインが小さく声をかける。

「縁殿、あやつがボスですじゃ。ワシがいながら申し訳ない。あの刃、獣人が言うには毒の匂いがすると。どうなさいます?」

蓮陰レンインは後手に回った自分を責めつつ、縁に尋ねる。


縁の中では、既に助けるプランが完成しつつあった。

蓮陰レンイン殿、煙幕ははれるか?私がやろう。私が合図したらアイツの至近距離で目に沁みるような煙幕をはってくれ。」

縁は唐突にそう言った。

「煙幕?はれますが、どうするのです?逆に相手が逃げるやもしれませぬぞ。」

蓮陰レンインは驚いて言った。縁は、

「私に任せてくれ。」

蓮陰レンインの瞳を見つめて言った。

「わかりました。いつでも構いません。ご用意を!」

蓮陰レンインは言った。


縁は、冒険者たちが包囲する最前列に立った。窮奇幣チウチーバンのボスらしき男は、黒ずくめで口にも布を巻いており、目しか見えていない。縁は刀に手をかけると、

…今だ!…

思考共有リンク蓮陰レンインに呼びかけた。

「バフン!!!!」

大きな音を立てて、人質をとるボスの左右で煙幕が音を立てた。黒い煙幕は絡まりつくようにボスにふりかかる。

縁は音と共に、目をつぶったまま突っ込み、

「”ナミ”失神せよ!!」

と魔力を載せた大声をあげた。

ナミは声が耳に入った瞬間、わけも分からず失神した。ボスは目に沁みる煙幕に目を瞬かせながら、急に人質が重くなったことに驚く。その一瞬を縁は見逃さなかった。

「キィン!!!」

男の手元に残った最後の武器が、宙に舞う。

「くそっ!!」

と声を上げる窮奇幣チウチーバンのボス。

「黙れ。」

と縁は告げて、峰打ちで男の意識を刈り取った。そして、失神しているナミを小脇に抱え、煙幕の外に出たのであった。


「ナミくん!!」

ヤオは縁からナミの体を受け取った。そこにユエが、

「さっき、ナミくんに"失神せよ"って叫んでましたけど、まさか、それで気を失っているんですか?」

と尋ねる。縁は、

「そうだ。お前たちは真の名を隠しているが、真の名を隠していない者は、私は"縛る"ことができる。もちろん格下ではないと無理だが。ナミが私に名を告げておいてくれて助かった。」

と縁はため息を着いた。

あまりの技に、弟子も蓮陰レンインも絶句する。

そして、他の冒険者たちによって窮奇幣チウチーバンのボスは捕らえられた。



朝日がのぼり、スラム街を照らす。

それは悪夢から覚めた街そのものだった。


道端では、今まで虚ろな目をしていた男が、何が起きたのかわからぬまま朝日に目を細めている。

幼子を抱いていた女も、呆然としながら空を見上げていた。

スラム街から消えたものは”落涙のケシ”だけ。

貧困は消えてはいない。

それでも。

昨日までそこにあった絶望だけは、確かに薄れていた。


縁は朝日に照らされる街を見つめ、

「さて。」

と小さく呟く。

「後始末の方が面倒だな。」

と言った。



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