第95話ーマフィア掃討作戦 中ー
真面目に書いたんですけど、ちょっとギャグっぽくなっちゃったかも 汗
縁たちは最下層に通じる階段をおりていく。さすがマフィアのアジトだけあって、見かけほど中身は古くはない。むしろ、見た目をわざとボロボロにしているようだった。
4人は最下層の扉を開いた。
"ギギギギギ"
と嫌な音を立てる。
すると、モワァ〜っと生臭い匂いと、辺りが白くなるほど濃い"落涙のケシ"の煙が、縁たちを出迎えた。
縁たちは既に抜刀し、何時でも戦える状態にある。縁は生命反応が2つ、"異世界"の生命反応を1つ、確認することができた。
「白澤堂のボスと、護衛と、小物が1匹いるな。」
縁は言い放った。すると、
「小物だと?!我は大悪魔マルバス様の配下であるぞ。人間!」
と、ケシの煙が揺らいで、中肉中背の、黒いコウモリの羽を持つ男の姿が見えるようになった。視界が晴れていき、白澤堂のボス、Sランク冒険者の姿がある。
白澤堂のボスは意外に若かった。ただ、インテリというより、インテリ風なやつだった。いささか俗めいたストライプのスーツを身にまとい、オールバックにフレームレスのメガネで、頭が良さそうな雰囲気をかもし出している。
「おい、お前ら、白澤堂に楯突いてただで済むと思っているのか?」
偉そうな口調で縁たちを蔑む。
「あんたって形から入るタイプなの?いかにも俺勉強できますって感じのそのメガネと、俺組織回してる優秀なボスですって感じのスーツ。カタカナ言葉並べてUGLY?とか言ってそう。」
ダルそうな表情をして、ユエが指摘する。そこに縁が、
「ダメだそ、ユエ。美意識は個人個人で違うんだ。それを言ったらナンセンスだ。推測で物を言ってはいけない。」
クックックと笑いながら続けて言った。思わずヤオとヤンガも、口を抑える。
「ははは」
「ふっふふふ」
声を隠す気がまるでない。
すると顔を真っ赤にしたボスが、
「"白面書生"の異名を持つ、この沈 永華をバカにするとはいい度胸だ!」
と怒鳴る。すると悪魔が、
「雷厳お前こいつらを殺せ。Sランクに相応しい働きを見せろ!」
と声を張り上げた。
雷厳は長身の優男だった。長剣を握っているが、その表情は欠落している。縁はひたりと、清らかな気配のする切っ先を、相手の喉元に構える。
「ゾワリ」
ボスと悪魔に鳥肌がたつ。
縁の殺気と雷厳の殺気が空間でぶつかり合い、空間がチリチリしている。
縁は、
ーこいつ、自我を失ってやがる。妻子を人質に取られ、そこの三下悪魔に挑生をかけられてるな。ケシとの相乗効果で、どの患者よりも状態が悪い…。これは斬り合うより先に悪魔をどうにかするのか先だ!ー
※挑生とは…生霊や魂を操る
文字通り「生を挑(かき立てる・操る)」という意味合いがあり、対象の生気を吸い取ったり、魂を別の依り代(人形など)に移して使役したりします。
縁は唐突に殺気と刀を納めた。
「斬り合いはやめだやめだ。」
雷厳の瞳を見据え、牽制する。背後の3人も臨戦態勢を崩さない。
縁は唐突に空間術式から、コルクで栓をされた試験管をとりだす。入っている銀色の液体は、たぷんたぷんと重たげに揺れる。それを目の前に振りまく。水銀だ。
それはスルスルと勝手に魔法陣を形作っていく。
縁は朗々と唱える。
「汝、魔に属する者よ。古に偉大なるソロモン王に使えし者よ。我が名において命ずる。我が招請に応じ、今ここに馳せ参じよ。人の形をなし、とく現れよ。序列5位は総督マルバス!」
「はぁーーー??!!!!」
中肉中背の悪魔が叫ぶ。
「マルバス様がお前ごときの招請に応じることなどない!雷厳!早く攻撃しろ!!」
悪魔が唾を散らして、雷厳に叱咤する。
そこに動いたのは、意外にもヤンガだった。
「我が聖なる杖よ。菩提樹の杖よ。清き御心を持って、魔のものを縛りたまえ。菩提五葉の陣!」
トン!と地面に杖を着くと、悪魔とボスと雷厳の周りに清らかな薄緑に光る結界が貼られた。雷厳が長剣で叩き切ろうとするが、ビクともしない。
それに怒ったのはボスである。
「悪魔様、この結界を今すぐ破って、奴らの魂を"落涙のケシ"に使ってしまいましょう!」
と悪魔をけしかける。
しかしその間に、序列5位マルバスは現れようとしていた。
が、その時。
縁の空間術式から、金色の円盤が飛び出し、金色の光を放ち出した。
縁は、
「はぁ?!またあいつ便乗しやがって!悪魔界暇なのかよ!」
とため息を着いた。
「縁様の御招請に応じ、馳せ参じました。マルバスでございます。このマルバス、縁様の願い、我が力の限り尽くさせていただきます。」
ギリシャ彫刻のような美しい男が、縁にひざまずく。上品な深緑のスーツにコウモリのような黒い翼を生やし、ライオンのしっぽがゆらゆらと揺れている。
そして金色の円盤からは、
「え〜に〜し〜さ〜ま!悪魔を呼ぶのに、この俺を呼んでくれないなんて、なんて酷いことをなさるんだよ。俺がいれば大体のことは解決するのにさ〜。酷いよ。僕泣いちゃう。」
漆黒の三対の翼をもった男が現れた。漆黒の髪に深紅の瞳。その容姿は、まるで神が作ったかのように美しかった。漆黒のスーツに紅いシャツを胸まではだけさせ、妖艶さを振りまいている。
「おい、ベリアル。なんでお前は呼んでもないのにいっつも来るんだ?お前はあのルシファーの兄にあたる堕天使で、爵位は王なんだぞ?見ろよ、総督のマルバスが申し訳なさいっぱいの顔してるじゃないか!」
縁はプリプリと怒る。
その様子を、呆気にとられた顔で見ているものが4人いた。ヤオ、ユエ、ヤンガは師匠が、ソロモン王の72柱の悪魔を使役できることに驚き、名も無き悪魔は突如現れた最強の悪魔たちに震えが止まらなくなった。
「んで?なんで呼んでくれたの?まさか、告白とか?!」
ベリアルがニヤニヤしながら縁をからかう。
縁は、
「アホか!まぁ、お前は私の顔の好みドストライクだから許すけど、呼んでないからね?」
とベリアルの顔をしげしげと眺めて、ため息をついた。
そして、
「なぁ、マルバス君。そこにいる結界も破れないぐらいの悪魔なんだが、君の配下だと言ったいてね。ほんとかなー?って思って呼んだんだ。あと、こいつら、悪魔の力を使って"落涙のケシ"とかいうしょうもない薬を作っててさ。中毒者の解毒とか、精神干渉魔法とかで治せないかなって思って。」
とマルバスに尋ねる。マルバスは、
「こんな中位になったばかりの悪魔、ネームドでもありませんし、配下でもないですね。ただの雑魚悪魔です。雑魚悪魔の作った麻薬なんて、たかがしれてますよ。人間にはキツイでしょうがね。」
とやれやれといった様子で言った。縁は、
「ふーーーーーん。お前、、嘘ついてたんだ。」
とにっこり笑いながら、雑魚悪魔に語りかけた。
「ちち、違うのです。マルバス様!私は中華に"落涙のケシ"を蔓延させ、それで魂を回収し、上位悪魔となってマルバス様にお仕えしたかったのです。だ、だって悪魔とはそのようなものでしょう??この女を罰してください!!」
雑魚悪魔は必死で弁明する。
縁はだるそうに、耳を小指でほじりながら、
「そういうことらしいけど、マルバス君的にはどう?」
とかったるそうに尋ねた。
「悪魔とは本来そのようなもの。」
マルバスは答える。
「それでしたら…!」
雑魚悪魔が目を輝かせる。
が、マルバスは、
「しかし、これは縁様の目につかぬところですることだ。それに薬物中毒者からとった魂は絶望の味が薄い。雑味があって宜しくない。ベリアル様は、いかがですかな?」
とベリアルに語りかける。
「くっくっくっく。マルバスの言う通り。俺は薬物中毒の魂なんて不味くて食えないね。もっと純粋な、漆黒の絶望が好みなんだ。ビンテージのワインみたいにね。」
とベリアルは言った。
ーそう、縁ちゃんが味わってきた絶望は、ピカイチの美味さだったよ。ふふふふふ。ー
と、当時の味わいを思い出しながら。
「それで?どうするんだこの雑魚悪魔。」
ベリアルがゴキブリを見るかのごとく、雑魚悪魔に目をやる。そこに、
「もし縁様さえよろしければ、実験のためにこの悪魔を連れて帰ってもよろしいですかな?悪魔を、生かしたまま使ってできる実験には、限りがございますゆえ。コイツでしたら死んでも構いませんし。」
とマルバスは言った。縁は、
「そうだな。それがいい。こいつは勝手にマルバスの配下の名を名乗り、マルバスの顔に泥を塗ったからな。好きなようにしたらいいさ。」
とマルバスに笑いかけた。
「あ、じゃあ〜、この"落涙のケシ"の対処は俺がするから、マルバス君は悪魔界にそいつ連れて帰ってなよ!実験楽しみでしょ?」
とベリアルがマルバスを見て言った。その顔には"俺と縁の時間とるな"と書いてあった。
マルバスは空気をしっかり読んで、
「では、そちらの冒険者に雑魚悪魔がかけた挑生は取り除いておきますゆえ、ベリアル様はごゆっくりと人間界をお楽しみくださいませ。」
と言って、手のひらに出現させた鎖で、雑魚悪魔を拘束すると、水銀の陣の中に消えていった。
水銀は縁の手に持つ試験管に、勝手に流れ戻る。そして栓がキュッと音を立てて閉まった。
挑生のとかれた雷厳は一瞬だけ口を開いた。
「妻と子供たちは…?」
悪魔に操られていたことを、唇が裂けて血が出るほど恨む雷厳。
縁は早速、黒龍会で雷厳の妻子を救出に向かった"雁行"に思考共有を行った。
…こちら縁。"雁行"は人質の保護は完了したか?…
…こちら"雁行"任務完了。母子供痩せてはいるが、無事だ。黒龍会も殲滅完了。…
…了解…
縁は雷厳に、
「お前の妻子は無事だ。今は安心して休め。」
と言った。雷厳は、
「恩に…きる…。」
と言って失神したのだった。
今残っているのは、悪魔の支配をとかれて昏倒している雷厳と、壁の隅で股間にシミを作ってガタガタと震える白澤堂のボス。満面の笑みで縁に絡みつくベリアルと、あまりの情報量に頭がついて行かなくなった弟子3人だった。




