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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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88/95

第88話ーそれぞれの努力ー

更新が滞り申し訳ありません。

忙しいのと体調の変動もあり、なかなか書くことができませんでした。今後も変則的になるかと思いますが、どうかお付き合い下さい。

朝の霧の中、ヤオは1人早起きして瞑想をしていた。

ー俺も空間術式を早く会得して、ユエに追いつきたい…。俺の運命に出会う前に…。ー

その一念だった。心にある水溜まりに、波を立てないように、ざわめかないように。心を無にする。瞑想すること2時間を越えようかという頃。

ーーその時、目の前に空間が開ける感じがした。

ヤオは、

ー空間術式…掴んだ。これが空間を支配する感覚、不思議な感じだ…ー

と思った。手を空間に突っ込み、今回作った空間の広さを自分の定義通りできているか確かめる。

ーよし、ほぼ1mの正方形になってる。完璧だ。ー

ヤオは満面の笑みを浮かべた。


「おはよう、ヤオ。今朝はえらく早いな。朝に弱いのにどうしたんだ?」

縁が起き出してきて問いかける。それに答えたのは、夜間に見張りを担当している縁の使役獣、ウスハとアオイだった。

「ヤオ殿は朝早くから起き出して、空間術式の鍛錬をなさっていましたよ。」

とウスハ。アオイは、

「ユエ殿に先を越されたのがよほど悔しかったのでしょうね。」

と、ホホホホホと口元を隠す。

「アオイ様!ウスハ様!別にユエに張り合っていた訳ではありません!」

ヤオがムキになって返事をする。

「でも、努力のかいあって、無事会得したようですね。」

とアオイが微笑む。

縁は、

「おお!ヤオももう出来たのか!昨夜はヤンガが夜更かししていた気配がしたし、みんな努力家で偉いな。」

と喜んだ。

「それで、ヤオはどんな定義づけで空間術式を組んだんだ?」

と縁は尋ねる。

「1メートル四方の正方形ですね。今の感じだと、ユエと同じように2、3個展開できる感じです。時間経過はしません。」

とヤオは空間に腕を突っ込んで見せた。縁は、

「いやー、長い間生きてきたが、今回の弟子たちはずば抜けて学習能力が高いな。教えがいがある。」

と焚き火を起こしながら言った。


「ふぁぁあー。おはようございます。師匠。あれ?朝が弱いヤオがこんなにピンピンしてるって、あんた何時に起きたの??」

ユエがテントから出てきて目を見張る。

続けて、

「おはようございます、師匠。ヤオもユエもおはよう。」

ヤンガが目を擦りながら出てきた。縁は、

「ヤオが空間術式を会得したぞ。ほんと、大した速度だ。」

と言い、ニヤっと笑う。

「ほうほうほうほう…。私に張り合ったのねヤオ。」

ユエがにんまりと笑う。ヤンガは、

「とうとう僕だけできないのか…杖を空間術式に格納しておきたいのに。頑張らないと!!」

とちょっとしょげた様子である。

縁は、

「まぁとにかく、今は朝ごはんだ。おにぎりと豚汁と、ゆで卵だよ。」

大根を始めとした根菜。白菜、こんにゃく、油揚げ。ちょっと厚めにスライスされた豚バラ肉。豚の油が味噌汁の表面に浮いて、青ネギとのバランスが食欲を唆る。

おにぎりはシンプルな塩むすびに味付け海苔だ。

「「「「いただきまーす!」」」」

全員で焚き火を囲んで食事を共にする。全員が満足そうな表情を浮かべている。


「今日は昼休みを取らずに飛び続けるぞ。天気予報が変わって夕方から雷雨になりそうだ。白曜と黒曜は風魔法で雨粒を凌げるが、正直雷を防ぐのは面倒臭い。今着ているマントは撥水加工されているが、さっさと福州に着いてしまいたいからな。」

縁は左手のデバイスを確認しながら、皆に伝えた。ヤンガは、

「今までなんだかんだ天気は良かったですからね。空を飛んで雷に当たったらたまりませんから…まぁ師匠は余裕で防ぎそうですが。」

と笑いながら言った。

「「わかる〜。」」

とヤオとユエが同意する。縁は首を竦めて曖昧に微笑んだ。


朝食や後片付けが終わると、一行はすぐにそこを旅立った。白曜と黒曜は並んでかなりの速さで空を駆ける。

「相変わらず早いわね〜。」

ユエが黒曜のふわふわな毛並みを触りながら呟く。

「ああ。実際にスピードはあげているからな。悠淵の里に行くまでは、お前たちが慣れないと思ってスピードを落としていたんだ。今回もヤンガがいるからトップスピードとは言えないが、それなりの速さで飛んでいるな。」

縁はユエに答える。ヤオが、

「まだこれより早くなるのですか?ほんとに風魔法ですか?これ?」

と驚きながら言う。縁は、

「鋭い指摘だ。実は私が浮遊するのも、使役獣たちが飛べるのも、反重力魔法(アンチ・グラビティ・ウィザードリィ)だ。まぁ風魔法でも空は飛べるが、反重力魔法の方が燃費がいい。」

と下の街道を確認しながら言った。

すると、ヤンガが、

「え?!そんな超高度な魔法だったんですか?てっきり風魔法だと…僕たちも習得できますかね?」

と好奇心丸出しで聞く。

「お前たちは今までとってきた弟子の中でも突出した才能を持っている。できるようになるのもすぐだろうよ。」

縁は後ろに乗っているヤンガをちらりと見て言った。


その言葉を聞きながら、ユエは、

ー4000年近く生きる師匠は、いったい何人の弟子をとり、何人を見送ってきたのだろう…。ー

と1人思案していた。


昼食は熱々の状態で保存しておいたカルツォーネをハフハフしながら食べる。黒曜は、

「美味しそうに食べるのはよろしいですけれど、毛並みを汚さないでくださいよ。」

とボヤいた。それを見た縁は、

「まぁまぁ、お前はこのリザードマンの脚の焼いたヤツあげるから。」

と機嫌を取る。

「主殿、私の分もお忘れなく。」

白曜もお腹が減ったようだ。縁は2匹の使役獣の口元にそれぞれリザードマンの脚を咥えさせてやる。


午後3時を過ぎた頃、空を見上げると、薄暗く厚い雲がかかり始めている。心なしか風も冷たくなってきたように感じる。灰色の空を白曜と黒曜が切り裂くように駆けていく。


ノンストップで飛び続けた先。瑠璃鎮よりも大きな城壁が見えてきた。

ーー福州。

縁はデバイスの時間を確認する。午後4時半。


ーーポツーポツポツ。

大粒の雨粒が右腕に落ちてきた。

福州の城門に滑り込む。

この激しい雷雨は、まるで福州で何かが始まろうとしている事を暗示しているようだった。



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