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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第87話ー卵とユエー

やっと書けました 泣

体調が良くなった日はぼちぼちやっていこうかと思います!

楽しんでいただければ幸いです。

夕方、西の方には薄く雲が霞んでいる。

「今夜はあの大きな木の下で野営しよう!」

縁は前方を指して言った。

「「「了解!」」」

弟子たちは元気よく返事をした。


焚き火を起こし、中に小粒の火炎鉱石を放り込み火力を安定させる。待ちに待った晩御飯はポトフである。厚切りのベーコンとあらびきウインナー、ホクホクのじゃがいもと、くたっとなったキャベツ。甘くなった玉ねぎと人参。パンはカンパーニュを温めてチーズを載せている。

「あちっ、あちちち!」

ヤオが口を火傷しそうになっている。

「ヤオ、焦せるとパンからチーズが落ちちゃうよ。」

とヤンガがじゃがいもを食べながら言った。

「わかってるけど!この溶けたところが食べたいんだ!!」

とヤオが反論した。そんな男子を尻目に、

「あー、相変わらず野営とは思えないクオリティだわ〜。」

ユエがフォークでベーコンを突き刺しながら言った。それに対して縁が、

「ユエももう少し容量を増やせたら運べるものも増えるぞ。」

と笑って言った。ユエは、

「今のところ1メートル四方の空間をいくつか作れるみたい。まだ何も入れたことないからなんとも言えないけど。」

と照れたように言った。


夕食後のゆったりタイムは、今夜はホットミルクティーをマグカップで飲んでいる。

「さて、ユエ。早速空間術式にものを入れてみよう。まずユエの空間術式の定義を教えてくれるか?」

と縁は言った。ユエは、

「まず、時間の経過はしない。空間は把握できる限りで1メートル四方。って感じで作ったわ。」

と縁に伝えた。

「なるほど。じゃあその飲んでいるミルクティーを入れてみろ。時間経過で温度変化、マグカップそのものの変化を見る。卵はそれからだ。」

縁は顎に手を当てて答えた。

「わかった。じゃあ、いくわよ??」

ユエは慎重にマグカップを何もない空間に入れていく。その姿はマグカップが何もない空間に吸い込まれていくようであった。

「ドキドキしますね…。」

とヤンガ。

「俺たちももう少しって感じなんだけどな。」

とヤオ。その実、ユエに先を越されて悔しいのである。


ーー待つこといくばくか。

「ユエ、マグカップを取り出してみろ。」

縁がデバイスできっちり30分測って言った。

「わかった。」

ユエは空間に手を突っ込んでゆっくりマグカップを取り出す。

「おお!暖かいし何も変化なし!」

ユエは喜んで言った。縁はマグカップをじーっと見つめ、そしてマグカップが格納されていた空間を暫し見つめた。

「よし。上出来だ。これなら卵を返しても問題ないだろう。」

縁は笑顔で言った。


縁は自分の空間術式に格納されていた卵を取り出す。

「ユエ、これは言わずもがな特別な卵だ。何が起こっても不思議ではない。実際私も少々驚いたぐらいだ。心を静かに保ち、全てを受け入れろ。」

縁はそう言ってユエの方にさしだす。


ユエが卵に触れたその瞬間、

ーードクン。

卵が拍動した。咄嗟にユエの手が引っ込む。ユエは縁の瞳をもう一度見つめると、意を決して卵を受け取った。

ーードクン。ドクン。

ユエの両手の中で脈打つ卵。ユエはおでこを卵に当てる。

ー大丈夫だよ。これからは一緒だよ。ね、心配しなくても大丈夫だよ。

と念じた。卵は返事をするように、

ートクン。

と軽く脈動した。


ユエは慎重に空間術式に格納する。

ーその瞬間。

ユエの意識は卵の空間の中に飛ばされていた。暗黒の空間の中で自分を見つめている眼差し。自分を測るような、そんな視線。そしてどこか懐かしい雰囲気。そして甘えるような蠕動。

ユエはまたあの直感を思い出した。

ーこの子は私のものだ…。ー

それは間違っていなかったのだと確信する。

ーキャキャキャキャ!ー

そんな声が卵から聞こえてくるような気がする。まだ生まれてもいないのに。

ポタリ。ポタリ。

ユエの頬を伝って涙が服を濡らす。

ーあぁ。愛おしいってこんな感じなんだ…。ー


思わず声をかけそうになるヤオとヤンガを、縁は制する。


縁はリザードマンの集落を殲滅した夜のことを思い出す。この卵は明確に相手を測っている。そして満ちる陰の気配。縁はじっとユエを観察する。陰の気配がいつもより高まっている。だが、暴走するほどでは無い。


ーありがとう。私を選んでくれて。産まれるまでゆっくりおやすみ。私が必ず守るから…。ー

ユエは優しく声をかけた。すると空間から引き出されるように、現実世界に戻っていた。


「ユエ…”わかった”か?」

縁は静かに尋ねる。

「ええ。”わかった”わ。確かにあれは竜の系譜。そして私のものだわ。」

ユエは目尻を拭いながら、確信を持って言った。

ヤオは、

「竜の系譜?あの卵が?」

と驚く。

「ヤオ、あなたにもきっと訪れる。”俺のもの”とはっきりわかる何かが。いつかは分からない。けど、私にあるのだから、ヤオにも必ずある。」

とユエはキッパリと言った。縁は、

「ヤオとユエは陰陽の化身。陰の卵があるのならば、陽の卵もあるはず。心しておけ。これが新たなる巡りの始まりだ。」

とヤオに伝えた。


「…俺のもの。いつか巡り会うのか。」

ヤオは半ば呆然として空を見上げる。夜空には星が一筋流れた。


その頃。東の果て、火の息吹が奥底を流れ、激しい地脈が巡る場所。

「ーカラリン。」

地の割れ目から真紅の模様の卵が現れる。そこに呼ばれるように1羽の真紅のワイバーンが現れた。そして口をきいた。

「アナタサマガ、ワレヲヨンダモノカ。」

「…」

卵は何もかえさない。

「ワガスニテ、ウンメイヲマタレルガヨロシカロウ。」

そして口にくわえて、何処にか去っていった。


運命は巡りゆく。それは当事者も分からない。運命の糸は、カラカラと繰り(くりびと)の意のままに早まっていく。繰り糸の先の命は、揺れるままにーー。

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