第86話ー霧の朝ー
体調が安定しなくて、なかなか書けません。
不甲斐ないです。
早朝、縁達は目を覚ました。野営の日は宿屋に泊まっている時と違って、早く目覚める。体が自然とそうなっているのだ。
熾火に、薪を足して焚き火にする。
朝食はホットサンドにする。縁は熱々のまま空間術式に入れて置いたバスケットを出す。それからコーンポタージュの子鍋を出して火にかける。
「今朝は霧が深いな。」
縁が一言呟く。
「空に上がれば視界はひらけるんじゃないですか?」
とヤオがホットサンドをかじりながら意見する。
「確かに。私たちかなりの高度で飛んでますもんね。」
とコーンポタージュを啜ったヤンガが答える。
「あまり低いと、昨日みたいにモンスターに間違えられるから仕方ないわよ。」
とユエがいい添える。縁は、
「今日は昼を除いてずっと飛ぶぞ。さっさと福州に行きたいからな。」
と空を見上げて言った。そして左手のデバイスを確認する。
ー明後日から雨予報か…さっさとしないとびしょ濡れになっちまう。ー
縁はちょっと憂鬱になっていた。
縁は商隊の護衛の震凱に声をかけに行った。
「おはよう。震凱さん。私たちはもうここを発つ。あと私たちのパーティ名が決まった。”蓮花の理”(レンカノコトワリ)だ。」
と縁は微笑む。震凱は、
「いやぁ、綺麗な名前だな。俺たちは初めてSランク冒険者のパーティ名を聞いたのか。光栄だよ。」
とにっこり笑った。縁は、
「ありがとう。では、旅の安全を祈る。」
と微笑み、踵を返した。
縁達は白曜と黒曜に飛び乗り、天高く舞い上がった。
ーぱぁぁと朝日が目に飛び込んできて眩しい。
朝日と霧の境目を鷺が数羽飛んでいく。それは幻想的な朝であった。
縁達はそれから日が中天に登るまで空をかけた。その間弟子たちは各自空間術式の試行錯誤をしていた。彼らは様々な角度からアプローチを試み、それはもう確信に迫りつつあった。
ーーお昼。縁達は川沿いの大樹の元に降りた。縁は空間術式からたくさんの点心を出した。
「うわぁ!点心がいっぱい!小籠包もありますよね?」
とヤンガがはしゃいだ声をだした。
「うわ!これ焼売だ!大ぶりで美味しそう〜」
とユエが早速箸を伸ばす。
「俺はこの蒸し餃子食べるぞ!この皮の透明感!美味しさがもう透けて見える!」
とヤオが蒸し餃子の蒸籠を囲った。縁は、
「仲良く食べろよ!沢山あるから!」
と微笑んだ。かく言う縁は、ちまきの包み紙を解いている。
穏やかな昼下がり、一行はしばし休憩するのであった。
「よし!行くぞ!」
縁は全員に声をかけ、空に駆けていった。
縁のデバイスが15:00を指す頃…。
「師匠!私空間術式できました!」
黒曜に乗っているユエが突然大きな声を上げた。
「本当か?ユエ!」
縁は驚いて尋ねる。
「ほら!見てください!」
ユエは何もない空間に腕を突っ込んでいる。
「どのくらい入りそうなんだ?」
ヤオが尋ねる。
「多分、1メートル四方はあると思います。」
とユエは空間を探って言うようである。縁は、
ーそうか、卵のためにずっと練習していたのか…。ー
と自分が今預かっている卵を思い出していた。
「よし、じゃあ今夜預かっている卵が渡せるか試してみよう。」
と縁はユエに伝える。
「ほんとに?!よかった〜。」
ユエは胸を撫で下ろした。
ーよっぽど気になっていたんだな。何しろ陰に関係する卵…私が感じた竜種の気配。早くユエに渡したいと思っていたが、好都合だ。ー
縁も若干ホッとしたのだった。
この夜、ユエはかつて感じたことのない”感覚”を覚えることとなる。それは卵とユエの強い結び付きを示すもの。生と生の道の出会いが、この夜待っている。




