第85話ー私たちの名前ー
更新が遅くなり申し訳ないです。
体調が悪く、今後更新が変則的になるかもしれません。でも必ず更新するのでお待ちください。
後ろからの西日を浴びて一行は進んでゆく。縁は、
ーさて、今日はどこで野営をするかな。出来れば商隊とブッキングしないところがいいなぁ。ー
と街道を見下ろしていた。
「主殿、前方に広場がございます。ただ、商隊が野営の準備をしているようです。」
と白曜が伝える。
「白曜ありがとう、助かった。商隊と一緒は避けたかったが、日没も近いし、そこにするか。」
と縁は白曜の首を撫でた。
「ヤオ、ユエ!少し先の広場で野営するぞ。先客がいるそうだから、注意しろよ。」
と黒曜に乗ったヤオとユエに伝えた。
「「了解です!」」
と返事がかえってくる。2匹は空を滑るように滑空していった。
ーー、一方地上では。
「あれ、モンスターじゃないか?」
警戒をしている冒険者の1人が空を見上げて言った。夕暮れを背に巨大なオオカミのようなシルエットが2体。即座に魔法使いと、弓術士が空に向かって構える。
「ストーップ!我々は冒険者だ!攻撃はしないでくれ!」
縁は大声で制止する。弓術士は急いで仲間に伝える。
「人が乗ってるぞー!」
その声に、冒険者たちの緊張が若干解かれる。
白曜と黒曜はふわっと地面に着地する。そしてその背から縁たちが地上に降り立った。
「驚かせてすまない。我々も冒険者だ。」
縁が軽く頭を下げる。冒険者の中から、剣を装備した壮年の男が出てくる。
「こちらこそすまない。まさかあんな大きなオオカミに乗り手がいるとは思ってなくてな。」
男は手を差し出す。縁はその手を握りながら、
「まぁ、そうだろうな。普通はモンスターが襲ってきたと思うだろうよ。」
縁は苦笑する。男は、
「俺は、震凱という。大樹の守りというCランクパーティのリーダーだ。そちらは?」
と自己紹介した。縁は、
「私は滝野縁、Sランク冒険者だ。後は弟子たち、白いのと黒いのはBランク、茶色いのはCランクだ。私たちはパーティ名はまだない。」
と伝える。
「そういえば瑠璃鎮にいた時にSランク冒険者がいると聞いたな。まさかこんな小柄な女性だったとは。それに弟子もこの若さでBランク、Cランクとは、すごいな。」
と震凱は顎髭を触りながら感嘆の声をあげる。そして、
「雇い主に大丈夫だと伝えてくる。」
と言い残し走っていった。
背後から、
「師匠、白いの黒いの茶色いのって言い方は雑すぎません?」
とムスッとしたユエがボヤく。縁は、
「いちいち名前を説明するのが面倒だったんだよ。にしても、パーティ名、考えとくべきだったか?」
と話をずらす。
「そうですね、これから先パーティ名ないと困りますよね。」
とヤンガが答える。
「よし!今夜はパーティ名を考えるぞ!」
とヤオがはしゃいだような声をだす。
「仕方がないな。晩御飯を食べながら考えよう。」
と縁はしょうがないなぁといった雰囲気で言った。ヤオとユエとヤンガは早速名前を考え始めた。
夕飯は平打ちの春雨が入ったトムヤムクンである。4人は辛酸っぱいスープを啜りながら、空間術式の話を少しだけした。
食後、小ぶりな桃のような果物を食べながら、いよいよパーティ名を決める談義となった。縁は、
「パーティランクは全員のランクを平均して決める。が、このパーティは私がいるから、瑠璃鎮のギルドマスターにはAランクということを言われている。」
と話した。続けて、
「で、お前達、名前は思いついたのか?」
と縁が3人に聞く。
ヤオは、
「俺たちは蛟だからそれに関わる名前がいいかなと。」
と具体的な候補はないようである。
ユエといえば、
「私は悠淵の里からとって、”鎮守の蓮”とかどうかなぁ?」
と中々良い案を出してきた。ヤンガは、
「僕は”4つの牙”とかどうかなって思ってる。シンプルだから被るかも…。」
と弱腰である。縁は、
「私はユエの案が好きだな。自分を鎮めると言った意味でも、問題を鎮圧するといった意味でもいいと思う。」
と伝えた。ヤオは、
「師匠は具体的なものはないんですか?」
と聞く。縁は、
「そうだなぁ。蓮花の理とかどうだ?蓮花とかいて、レンカと読ませる。私たちは世界の理の中で過ごしているからな。」
と腕を組みながら答える。
「僕は師匠の意見が好きだな。」
とヤンガが笑みを浮かべる。ヤオも、
「俺も師匠の案が好みだな。」
と応じる。ユエは、
「考えたら、鎮守の蓮ってなんか暗いイメージだから、師匠の案がいいと思うわ!」
と答えた。縁は、
「結局私の意見になるのか。構わないのか?3人とも。」
と苦笑しながら尋ねる。
「かまわない。」
「かまわないわ。」
「いいと思います!」
と3人は答えた。
10月も末のこの日、後に歴史に名を残すことになるAランクパーティ、”蓮花の理”が生まれることになった。4人は未だそれを知らない。華々しいだけではない、猛々しいだけではない。そんな伝説を残すこのパーティは、今は使役獣に見張りを任せ、安らかな眠りについているのだった。




