第81話ーのどかな午後ー
昨日は諸事情により更新できず
申し訳ありませんでした。
次回は火曜に更新する予定です!
昼食を終えると4人は暇になってしまった。屋台の人に景色の良い場所を教えてもらった。階段を全て上がり、午後の柔らかい風に身をゆだねる。
「ふぅ〜。」
と誰ともなしに声があげる。
「綺麗〜。」
展望台の石組みに手をかけて声をあげるユエ。瑠璃鎮の街並みが綺麗に見える。瑠璃と言うだけあって、瑠璃色の瓦屋根が美しい。
縁は髪をかきあげながら遠くを見やる。
「私が初めて人の手で作られたものを食べたのは、731部隊が解散して、あてもなくさまよっている時だった。」
と唐突に縁は話し出した。
「木の下でぼーっとしていた私を見かねて、1人の老婆がおにぎりを分けてくれたんだ。ただの塩むすび。…それはそれは美味しくてな。」
弟子3人は聞きいる。
「それが料理に興味を持つきっかけになったと言ってもいい。最終的に吉野町という場所に腰を据えた私は、周りからたくさんのことを学んだ。ひとりで何でも解決することではなく、みんなで協力すること。羽釜で炊くご飯の火加減。四季折々の野良仕事、手仕事…。」
縁は懐かしげに、そしてどこか寂しそうに語る。そこにヤオが、
「その行為が、師匠を兵器ではなく、"人間"にしていったんですね。」
と口を挟んだ。縁は、
「そうだ。私はそこで"人間性"を身につけたと言っていい。そして恩人に、"食べることは生きること"と教わった。私は人間兵器として、食事も最小限で済むようになっている。だが今や、食べることは私の中で欠かせない、"人間"としての証になっているのさ。」
と微笑んだ。弟子3人は顔を見合せ、
「だから師匠の料理はいつも暖かくて美味しいんですね。優しい味がします。」
とヤンガが笑顔で言った。
「師匠の料理が"行き当たりばったり"なのも、なんか納得だわ。家庭料理なんだもの。それは目分量になるわよね。」
とユエが笑った。
縁は、
「そうなんだ。だいたい目分量で作るから、今回レーション作る時もどう伝えようか困ったんだよ。蜂蜜なんかも普段は何回か回し入れる、みたいな感じだからさ!」
の可笑しそうに笑った。ヤオは、
「俺、粉塵爆発起こしそうになったし、料理に向いてないかと思ったけど、完成したら楽しかったし、面白いなって思ったんですよね。」
と言った。
「3人とも、料理のセンスはあると思うぞ?前も言ったように料理は科学だ。そして戦闘も科学だ。ちゃんと料理の基礎を学べば、すぐにできるようになる。」
と縁はヤオの肩を叩いた。ユエもヤンガもくすぐったそうな、そんな顔をしている。
そして縁は1呼吸おき、
「ーーさて、話は変わるが、瑠璃鎮でやるべきことは済んだ。明後日の朝ここをたつ。目的地は福州。そこから船便で台湾に渡る。瑠璃鎮のようにのんびりはしない。タイトな日程になる。明日は各自、自由に過ごしていい。英気を養ってくれ。」
と伝えた。ヤオ、ユエ、ヤンガは真剣な顔をして頷いた。
「ここから福州の都市までは、白曜、黒曜の足で3日程だろう。前みたいにトラブルがなければ、だがな。」
縁は懸念を示しながら言った。
「福州へは大規模な商隊が多いから、冒険者も護衛につく。さすがにそんな前みたいなことは無いのでは…?」
とヤンガが意見する。
「だといいだがな。」
とヤオが呟く。ユエはと言うと…
ーめっちゃフラグだぁ〜。ー
と頭を抱えていた。
「ところで、今晩はどこでご飯にする?」
と縁が聞く。
「師匠、さっき昼ごはん食べたの忘れました?」
とヤオが突っ込む。
「いや、次の目的が決まってた方がいいし。」
と縁が言い返す。
「ポプラの並木亭がいいかなぁ。」
とヤンガが提案する。
「その前に甘いもの食べたーい!」
とユエが声を上げた。
「じゃあ屋台街の甘味屋巡りでもするか!!」
と縁。
「さっすが師匠、よくわかってる!」
とユエ。ヤオは、
「あれだけ食ったのにまだ食べるのか?」
と目を白黒させている。女子二人組は、
「「甘いものは別腹!」」
と男子2人に言った。そして女子二人に率いられて屋台街に逆戻りする。
それは、穏やかな午後三時過ぎの、ささやかで幸せな時間だった。




