表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/88

第80話ーお手製レーション、作りましたー

ご覧いただきありがとうございます。

また遅くなってすいません 汗

更新日を1日勘違いしておりましたm(_ _)m



縁たちは厨房で必要なもの、フライパンに小鍋、木べらなどを一通り集めた。


縁は、

「これから小麦を炒める者と、バターを溶かす者に別れる。」

と3人に指示した。縁は、

「バターは400g、これくらいだな。」

長方形の塊を切り出してユエに渡す。

「焦がしバターにするからこれを包丁で薄く切ってくれ。」

ユエはサクサクとバターを切っていく。

「私たち力があるものは気にしないでいいが、普通の人はバターをサクサク切れない。その時は包丁をコンロで温めておくんだ。」

「なるほどね!その方がやりやすいわ!」

ユエがコンロに手をかける。


ーーその時だった。ヤオが小麦粉の袋を思いっきり開けた。

「バフっ!!」

厨房中に小麦粉が舞い上がる。ユエは、

「うわっ!」

と咄嗟にコンロの取っ手に力が入る。

ーヤバいっ!ー

縁は咄嗟にコンロに氷魔法をかけた。そして風魔法を使って空に舞った小麦粉を集める。


ーー厨房に気まずい沈黙がみちた。


「ーーーお前たち、今危機的状況だったってわかるか?」

縁はこめかみをグリグリしながら言った。

「え?なんでですか?」

口に入った小麦を飲み込みながらヤンガが言う。ヤオとユエも小麦粉まみれで首を傾げる。

「まぁ知らなくても仕方ないか。むかーし昔、あるものの製造工場で従業員が100人近く死んだ事故があった。なんの製造工場だったと思う?」

縁は3人に苦笑いを浮かべながら問いかける。

「火薬とかですかね?」

ヤオは体に着いた小麦粉を叩きながら答える。

「石油とかガスの施設!」

とヤンガが割烹着を叩きながら答えた。

「違う。」

縁は、人差し指を立ててチッチッチとする。

「え、まさか…小麦粉?」

とユエが目を見開いて言う。

「そうだ。小麦粉工場で起こった。よく考えてみろ。極小サイズの有機物、まぁ小麦粉だな。それが宙に立ち込めた時に火なんて起こしてみろ。連鎖的に燃焼が起こって、大爆発に繋がるんだ。」

縁は真剣に言った。

「じゃあ俺たち…、この厨房を吹っ飛ばすところだったのか?!」

ヤオが驚愕の表情で呟く。


「そもそもヤオが馬鹿力で小麦粉開けるからいけないんじゃない!」

ユエはコンロから一歩下がって言う。

「僕たち初手からこんな感じで、レーションなんて作れるのかな…。」

まだ何もしていないヤンガがおののく。


縁は笑って、

「料理は科学だ。致命的なことが起こる前に止めるから、指示通りにやってみろ。できるようになったら楽しいぞ?」

と小麦を200gづつ、2つのフライパンに入れた。

「ヤンガ、この小麦をきつね色になるまで炒めるんだ。」

と指示を出す。

「わ、分かりました。きつね色ですね!」

ヤンガは緊張しながら、フライパンと木べらを持った。

「まず、小麦粉は基本生だから、小麦粉のまま食べることはできない。加熱が必要だ。今回はフライパンで炒める。その際に起こるのが"メイラード反応"だ。簡単に言うと、アミノ酸(タンパク質)」と「糖」が加熱によって結びつき、新しい香り成分と茶色の色素メラノイジンを生み出す反応のことだ。焼きたてのパンやクッキーのような香ばしさはこうして生まれる。」

縁は自分のフライパンで小麦粉を炒めながら言った。

「師匠!バター溶けました。どうやって焦がすの?」

とユエ。

「それもきつね色が理想だ。だが熱しすぎると酸化するから、少し手前で止めておけ。」

と縁は小鍋を覗き込んで言った。


「ヤオ、お前はナッツとドライフルーツを刻んでくれ。くれぐれも!木っ端微塵にしないように、普段食べているレーションを思い出してきざめよ?」

縁は顔をあげると、ヤオに指示を出した。

「は、はい!いざ尋常に!」

とヤオはクコの実や、くるみの袋を慎重に開けた。


全員が黙々と作業する。初めに済んだのはユエだ。


「バターが少し香ばしくなったわ。」

と無邪気に笑い、

「色がだんだん変わってきたわね。これがメイラード反応かぁ。」

とヤンガの鍋を覗き込む。縁の鍋でもどんどん小麦粉の色か変わっていく。

縁は焦がしバターが上手くいっているのを確認すると、フライパンに半分ずつ加えた。

「ここから焦げやすくなるから気をつけろよ。」

と縁はヤンガに声をかける。

「わかりました!」

ヤンガは腕まくりして、小麦粉を丁寧に炒めていく。

「バターを加えたことでよりきつね色になったな。あともう少し炒めるぞ。」

縁は慎重にいろを見極める。


「よし、もう切り上げていいぞ!」

とヤンガに声をかける。

「わかりました!」

見れば小麦粉はきつね色より少し深い茶色をしている。

「ヤオ、そちらはどうだ?」

縁はヤオの方を見た。そこには几帳面にサイズが揃ったドライフルーツやナッツが並んでいた。ドヤっとしたヤオ。だが、

「んー、渡したの全部切ってしまったか…。」

と縁は耳の裏をかいた。

「ヤオったら、そんなに使うわけないじゃない!」

とユエが笑った。ヤンガも笑って、

「たぶん、その半分でいいと思うよ。」

と言った。

「ザクザクした方が美味しいんじゃないかと思って…。」

としょぼんとするヤオ。


「ナッツやドライフルーツを沢山入れると、今度は成型に困るんだ。半分はまた袋に入れて今度使おう。カットはとても綺麗だし。次の手間が省けたよ。」

と縁はフォローした。


そして縁は大きなボールに炒めた小麦粉と、刻んだドライフルーツとナッツを加えた。そして丁寧に、均等になるように混ぜた。さらにそれを4等分し、弟子それぞれのボールに移し、成型に使う型とスプーンをそれぞれに渡した。さらにテーブルの真ん中に山椒の袋を空けて置いた。

「まだ粉が暑いうちに蜂蜜を大さじ3〜4を入れてよく混ぜるんだが、その前に山椒を入れる。三本指でたっぷり2つかみだ。二本指の1つかみじゃあ、腹の中の魔(菌)は殺せん。」

「山椒は、湿り気や腐れを遠ざける。それだけじゃない。邪気(悪い気)を寄せ付けないための、お守りでもあるんだ。」

「「「ほほぅ〜。」」」

と頷く3人。


縁はテキパキと山椒と蜂蜜を加えると、小さなスプーンで押し付けて空気を抜きながら、慣れた手つきで型にはめていく。それを見た弟子達は、見よう見まねでやっていく。

「「「で、できたぁ!!!」

3人は自分達が初めて完成させたレーションに目を輝かせた。縁も、

ー出だしでヒヤッとしたが、何とか完成したな…。ー

と満足気な笑みを浮かべた。


「後は冷蔵庫で冷やすんだが、ひとかじりしてみるか?」

と縁は提案する。

「山椒を入れたから、どんな味か気になりますね…。」

とヤンガ。

「俺は甘党だから、実は若干はちみつ多めなんだよな…大丈夫かな?」

とヤオ。

「私は師匠の言う通りにしたから間違いないはず!そうであって欲しい!」

とユエ。

三者三葉の感想を述べる弟子たちは、恐る恐る1口かじり、

「「「おおおー!!」」」

と声を上げた。

「いつも食べているのとは違いますが、これはこれで美味しいですね!」

とヤンガ。

「蜂蜜がちょっとベタついているが、甘さと爽やかさがマッチしていて美味い!」

とヤオ。

「うん!おいしい!ナイス私!」

とユエ。

そんな3人を見て縁は、

「行き当たりばったりのレシピだったが、何とかなったな…。良かった。」

と笑った。3人は、

ー行き当たりばったり???ー

と疑問に思う。代表してヤオが尋ねる。

「行き当たりばったりって、コレ決まったレシピじゃないんですか?」

縁は、

「当たり前だろ?粉とかバターは計量するが、後はフィーリングで作ってるんだから。味付けも初めは少なめにしといて、薄ければあとから足せばいいし!」

と、からりと笑った。3人は、

ーこれが4000年生きる人の知恵か…。ー

と妙に納得してしまった。実際のところ、料理人には感覚派の人間も存在するのだが、彼らはまだ知らなかった。


縁は3人の作ったレーションを型に入ったまま、温度を低く保った空間術式に格納する。

「さぁ、厨房を掃除するぞ。来た時より綺麗にがモットーだ。昼飯の時間は屋台街に行こう!」

縁は声をかける。そして3人の顔を見て、小さく笑った。

——やはり、料理は誰かと作る方が楽しいな。ー


3人は、元気よく、

「はーい!!」

と答え、楽しいレーション作りは終わりを告げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ