第104話ー剣潭山《ジエンタンシャン》①ー
不規則な更新、もうしわけないです!
もうかける時に描きます!!
どうぞお付き合い下さい。
剣潭山には、頂上に至る道に検問が敷かれていた。恐らく、モンスターの出てこない精一杯の安全圏を、州兵と一部の冒険者パーティーが守っている様子だった。
州兵が、検問のゲートで5人を呼び止める。
「ここから先は許可証が必要だ。」
きっちりと制服を着こなした中年の州兵が言った。背には大口径バトルライフルが、鈍い光を放っていた。相棒の若い州兵も、手にバトルライフルを持っている。
縁は空間術式から、許可証を取り出し、中年の州兵に見せた。潤風は、
「彼らは”蓮花の理”。恐らく今台湾にいるパーティーの中で、最も強い力を持ちうるパーティーだ。」
と言葉を繋いだ。州兵は許可証をじっくり見つめると、
「ふーっ。」
と深い息をつき、縁に手を差し出した。
「SSSランカー、滝野縁殿。よくここに来てくださった。あなたがいれば、我々州兵の被害者、冒険者の被害者も、報われる。お弟子さん達、もどうかよろしく頼む。」
縁は差し出された、その手を握る。
「台湾の人々の期待に答えるよう、尽力しよう。」
強い眼差しで縁は答えたのだった。弟子たちは、背負っている期待を改めて感じ、まだ見ぬモンスターを倒さんと意気込んでいた。
「縁様、私はここまでです。ご武運をお祈りします。」
潤風は、開かれた検問を進む縁達に声をかけた。縁は、
「道案内ありがとう。後は任せてくれ。」
と答えた。これから見たこともないモンスター、強力なモンスターと戦う。4人の背には台湾の未来がかかっていた。
剣潭山は元々霊山であり、通路が整っている。石畳が続く道は、若干荒れているが獣道程ではない。縁は、
「先頭は私と白曜、中衛はユエとヤンガ、後衛はヤオと黒曜で行く。戦闘行動開始!」
と声を張る。影からしゅるりと白曜と黒曜が現れ、それぞれの位置に着く。弟子たちも瞬時に順番を入れ替えた。
弟子たちは縁の声を聞いた瞬間、無駄な力が体から抜けていく感じを覚えた。
ーちょっと力んでたのね…。ー
ユエは思う。他の2人も同様なことを思っていた。縁は、
ー言葉に少し魔力を載せて脳に作用させたが、上手くいったようだ。みんなまだ若いからな…。ー
と、さりげなくフォローすることを忘れてはいなかった。
途中から石畳から、石の階段になる。周りに深い茂みが広がっている。4人は気づいていた。茂みの奥、四方八方から視線が注がれている。だが、4人は抜刀したり、暗器に手を伸ばすこともない。自然体で、その視線に答える。縁は、
ーここら辺にいるのは、まだそれほど強くない奴らだ。龍穴に近づくにつれ、強くなっていくと考えるのが妥当。雑魚は龍脈の狂いに当てられていても、圧倒的強者には手は出してこないようだな。ー
と思考を巡らせる。もっと凶暴化していると予想していたが、まだ襲撃はない。恐らくだが、龍穴を鎮めようとした魔術師、風水師達の術がある程度機能した結果だろう。縁はそう結論づけた。
階段を少し進む。
すると右側から突如として殺気が膨れ上がった。白曜が、
「グルルルルルルル。」
と低く唸る。縁はいつもの肥前忠広ではなく、青い鞘の清廉な気配のする刀携えていた。縁は刀を抜き放ち、ユエは暗器を両手に構え、ヤンガは杖を構える。ヤオは背後に気を配りながら、戦闘態勢をとった。黒曜は、奇襲されないように左側で、唸りをあげる。
「ガァァァ!!!」
と叫び声をあげて出てきたのは、5mを超える白い猿だ。手首足首に赤い炎がまとわりついている。
「白熱の爆炎獣、(以降白猿と呼称)か。なかなかの大きさだな。」
縁は冷静に分析する。厄介なのは、子分を引き連れている事だった。わらわらと、2mに届かないぐらいの個体の群れを、引き連れている。
「師匠、僕が先制攻撃で個体を減らします。」
真っ先に声を上げたのは、驚くことにヤンガだった。縁は、
「分かった。一発目だ。しっかりやれ。」
と前を見据えたまま言う。
ヤンガは頷くと唱えはじめた。
「我ここに命ずる。天と地に散らばる水よ、我の意に従い、我の敵を滅さん!」
杖を高く構え、大規模魔術の魔法陣が青く光る。すると、白猿と、取り巻きの頭上に何かが現れた。キラキラと、日差しに反射する何かが大量に浮かんでいる。
「敵を貫き、地に縫止めよ!空気よ凍てつき地に落ちよ!氷雨!」
ヤンガは菩提樹の杖をそのまま振り下ろした。
「ギャギャギャギャ!!!!!」
白い猿達は身体中から血しぶきをあげている。ヤンガが行使したのは、空気中のH2Oを雨粒より小さい針状の氷にし、音速より早く降らせた氷雨。取り巻き達は、ほぼこれで致命傷を負った。
「ギャオーー!!!」
ボスである白猿は、さすがにこれで死ぬようなやつではなかったようだ。体に炎を舞い上がらせ、大声を上げながら、激高している。
「さすがに、1発では死にませんでしたね。」
ヤンガは残念そうに杖を下げた。
「雑魚は結構死んだわよ!さすがね!」
ユエは笑顔を浮かべて言った。縁は、
ー大規模魔術をしかけ、混乱させる。よく考えている。ー
と笑みを浮かべた。そして、
「おい、白髪のクソザル。私が相手をしてやるよ。」
と走り出した。
5mの巨躯から、炎を纏った剛腕が繰り出される。縁は脇構えのまま、その腕を掻い潜り、したから切り上げる。
「ギャアッ!!!」
白猿は悲鳴をあげる。しかし、バックステップで、縁の刃から逃げ出す。それを追うように縁は横薙ぎに首を狙ったが、白猿は身近にいた子分を掴み、盾にして刃を逃れた。
「チッ。無駄に頭がいいな。」
縁は頬に着いた返り血を拭いながら、白猿を見据えた。
白煙は両手に火の塊を作り出し、縁に投げつける。縁はその火を切り捨てた。刀身には水が滴っている。白猿が攻撃に転じた隙を、ユエは逃さなかった。影にから暗器で、白猿の頸動脈を掻き切る。
「ガ、ガガガガァ!!!」
首から血を噴き出しながら、白猿は狼狽える。そこに目にも止まらぬ早さで突っ込んできたのは、ヤオだ。
「寸勁!穿内崩!!」
白猿の鳩尾に叩き込む。本来、寸勁はワンインチ・パンチと言われるものだが、ヤオはそこに全身のバネと腕力を全力で込めたものだ。白猿の内臓は体内で爆裂し、
「ア、アギィ…。」
と断末魔を上げて崩れ落ちた。白曜と黒曜は、ボスを失って右往左往する猿を追撃して行った。
まずは報告にある1頭目のモンスターを始末したことになる。
ー今回の連携は見事だったな。ー
縁は思った。弟子たちは自分が少し強くなったことを自覚し、縁は弟子の成長を嬉しく感じた。
まだまだモンスターがいる。そして大元の龍穴は、行ってみないと分からない。まずは1歩目。それは多くのパーティーが出来なかった、大いなる1歩目だった。




