第102話ー夢渡り、そしてギルドへー
ご無沙汰です!
更新が亀でごめんなさい 汗
夜もどっぷりくれた頃。
みなが眠りについている時、ユエは真っ白な空間にただ立っていた。
「…ここは…どこ?いったい、なに?」
思わず呟く。
「陰の化身よ。ここは我と汝の夢の中だ。」
声をした方を見ると、15歳ぐらいの男子が白い服を着て立っていた。清々しい気を発しているのが、よくわかる。
「貴方は、誰?」
ユエは問いかける。
「我は倭国日本の当代の帝、公仁と申す。急ぎ伝えることがあったゆえ、そなたの夢に参じたのじゃ。」
と白い服の男子は言った。
ユエは、
ー日本国の帝?!師匠が夢渡りができると言っていた…。ー
と思いながら、サッと膝を着いて頭を垂れた。
「無礼をお許しください。私はユエと申します。」
と言う。
公仁は、
「頭をあげ楽にせよ。我は神の血を少しばかり引いているだけであり、そなたより遥かに若い。齢500を超える汝に、頭を垂れさせることはできぬよ。」
と言った。ユエは恐る恐る頭をあげ、立ち上がった。そして、
「帝、何故夢渡りを?」
と尋ねた。
公仁は苦笑しながら、
「先日、日本に台湾州から勅使が参った。島の龍脈の乱れを治して欲しいと。どうやら自分たちでどうにかしようとして、ことが悪化したらしいのじゃ。」
と言った。続けて、
「端的に申す。台湾の龍脈を、そなたらで鎮めよ。陰陽の化身たるそなたらと、縁がいれば事は足りよう。」
と言った。ユエは、
「実は昨日、黒水溝の主である龍神に、台湾の龍脈を鎮めるよう依頼がありました。明日、我らで龍脈に行こうとしておりました。」
と答えた。公仁は、
「なるほど。海神も助けを申したか。余程ことは悪いようじゃな。」
と呟いた。
そこにユエが、
「あの、帝はなぜ私の所へ?師匠は隣の部屋におりますよ?」
と尋ねる。公仁は苦笑しながら、
「縁には魔のものの残滓が残っていてな。それに印をいくつも付けられておる。魔を受けいれる、そういう所も縁らしいのじゃが…。我は魔のものとは相性が良くない。アレルギーのようなものじゃ。それゆえ、夢渡りの才があったそなたの所へ参ったのじゃ。」
と答えた。
ユエは、
ー魔のものの残滓?…もしかしてベリアル…え、あの首の痣は!!?ー
と顔を真っ赤にする。
公仁は、
「そなた、見掛けによらず、うぶよな。」
と笑って言った。ユエは、
「平気です!とにかく、台湾の龍脈をコントロールすればいいんですね?」
と若干ぶっきらぼうに尋ねた。公仁は、
「フフフ。そうじゃ。頼むぞ。」
と笑った。そして、
「うむ。いかんな、やはり陰陽の気の乱れておるところは、夢渡りも不安定じゃ。我は去る。龍脈のこと、頼んだぞ。」
と言った。見れば周りの白い空間がモヤとなってお互いの姿を見れなくしていく。その中で、ユエは、
「その命、確かに受け賜りました。」
と答えながら、黒い世界に落ちていった。
翌朝。がばり、とユエは飛び起きた。
「あれは、夢じゃないよね…。早くみんなに知らせなきゃ。」
と呟く。
朝食を食べながら、ユエは夢の内容をみんなに話した。もちろん、縁についたベリアルの残滓についてな話さなかった。
一行は急いで冒険者ギルドへむかうことになった。宿の玄関で、縁は、
「ユエ、ベリアルと私のこと、話さないでくれたんだろ。気を使わせて悪かったな。すまない。」
と耳打ちした。ユエは少し赤くなりながら、
「私も大人ですので!」
と答えた。縁は、
ー弟子に気遣われるとは、情けないな…。ー
と思っていた。
冒険者ギルドは早朝にもかかわらず、多くの人が出入りしていた。それだけ魔物の被害が多いということでもあった。入口の柱には龍の彫り物が施され、物々しい雰囲気を醸し出している。
クエストの用紙を持った冒険者が、5人いる受付嬢にそれぞれ並ぶ。縁達が並んだのは、褐色の肌に猫耳の可愛い獣人の受付嬢だった。彼女は手馴れた様子でテキパキと仕事をこなしていく。
縁達の番になった。受付嬢は思いの外冷たい声音で、
「クエストではないのですか?」
と尋ねた。縁は隠蔽を取り払った冒険者カードを提示すると、
「急ぎだ。ギルドマスターに会いたい。」
と単刀直入に言った。受付嬢は、尻尾をピンとさせて一瞬固まったものの、
「少々お待ちください。すぐに案内します。」
と言って場を離れた。
縁たちも適当に近くのテーブルで待つ。数分もかからない内に、綺麗な女性がやってきた。
「秘書の梅花です。こちらに。」
と縁たちを案内した。
三階の執務室兼応接室に、縁達は案内された。
部屋に入ると、妙齢の女性が、窓を開けて葉巻をふかしていた。
「来たね。」
そういうと、煙をふーっと吐き出し、ソファに座る。縁たちもそれに習ってソファに腰掛けた。
「私は台湾の冒険者ギルドのマスターをやってる、宋 美齢だよ。まさか生きている間にSSSランクに会うとは、喜んだらいいのか悪いのか分からないね。」
とハスキーな声で自己紹介した。
縁は、
「宋 美齢か。宋一族が脈々と血を繋いでいたのか。かの、ドラゴンレディの名を時代を超えて冠するとは、ギルドマスター、あんたは随分と凄腕のようだ。」
と笑みを浮かべた。美麗は、
「ご先祖さまを知ってるのかい。さすが、強欲の5《フィフス》、悠久の時を生きる人間兵器だけあるねぇ。」
と、灰皿に灰を落としながら言った。
「それで、なんのようむきだい?」
と鋭い目を縁に向けた。縁は、
「魔物の凶暴化は龍脈の乱れによるものだ。台湾の勅使が日本に行っているだろう。それの要請を受けて、龍脈の乱れを鎮めるのが私たちの使命だ。」
と飄々と答えた。美麗は葉巻を灰皿に押し付けると、
「確か台湾州が勅使を送ったのは最近なはずだ。なぜあんたがその依頼を知っている?」
と縁に尋ねた。
「こればかりは、私は答えられない。日本の秘事だからな。」
と縁は美麗を見返しながら言った。
「そーかい。それは私が口を出せることじゃないね。”蓮花の理”には、龍脈についての指名依頼を出すよ。ちょっと待ってくれ。その依頼書をもって台湾州に行っとくれ。龍脈は、州兵が守ってるからね。」
と美麗は観念したように言った。
梅花が、茶と菓子を出してくれた。それをつまみながら、美麗が指名依頼書を作るのを待った。しばし待ったあと、美麗は、
「はいよ。これでどうにかなるさね。台湾の未来がかかってる。頼むよ。」
と蜜蝋で封をされた書類を縁に渡した。縁は、
「急かしてすまない。ありがとう。あとのことは任せてくれ。場合によったら、人手が必要になるかもしれんが、その際は頼む。」
と書類を受け取りながら言った。
いよいよ、龍脈に向かう。その先には戦闘が待っているかもしれない。
ヤオとユエの背には、台湾の龍脈を整えるという重責が課せられている。
まだ、展望は見えない。
でも事態は動き出した。
龍脈で何が待っているのか。
それは誰も答えを持っていないのであった。




