航海(1)
今回は夢の世界の話です。
「かなり霧が濃くなりましたね。もしかしたら噂のあれが出て来るかもしれないですね」
サンロクが不吉な事を言い出した。
「噂のあれって何ですか」
「お約束の幽霊船です」
「止めて下さい」
カスミが止めてくれと叫んだ。
「もしかして怖いのですか」
「違います」
「カスミは昔から幽霊や妖怪が苦手よね」
「トワ、後で覚えていなさいよ」
カスミの黒歴史をバラしたら、睨まれてしまった。
「変な船が接近して来ました」
「まるで沈没船みたい」
「本物の幽霊船かもね」
「面白そう」
本当に不気味な船が接近して来る。
「・・・・」
カスミの顔色が真っ青になった。
「人の気配はしないわね」
「カスミ、一緒に調査しよう」
カスミに調査しようと誘った。
「嫌よ、断る、調査なんて絶対にしないから」
カスミは猛烈に拒否した。
「取り敢えず私が調査して来ます」
トワは不審船に乗り込んだ。
甲板には何の異常も無い。
船内に移動した。
船内にも異常は無かった。
突然身体が麻痺したように動けなくなった。
「船が急に反転したわよ」
「凄い速度で離れていく」
「船が消えていく」
船が霧の中に消えてしまった。
『申し訳ありません』
突然念話が入った。
どうやら女性らしい。
『貴女は誰なの。名乗りなさい』
『私はレム。夢の精霊です』
『その夢の精霊が何の用なの』
『怪物幼女の貴女にお願いがあります。私達を助けて下さい』
『ずいぶん図々しいのね。人の体の自由を奪っておいて。それと怪物幼女と呼ばないでよ』
『強引だったのは認めます。それだけ切羽詰まっているのです』
『取り敢えず身体を自由にしてくれない』
『分かりました』
身体が自由になった。
『それでお願い事の内容を説明してくれる』
『お願いを引き受けてくれるのですか』
『慌てないでよ。内容次第よ』
『実は一匹の獏が異常進化してしまい、自ら食糧の悪夢を造り出したのです。このままでは夢の世界の秩序が保てません。どうか獏を退治して下さい』
レムが事情を説明してくれた。
『内容は理解したけど。自分達で解決して欲しいわね』
『私達では獏を退治できないのです』
『分かったわ。引き受けるわよ。獏の居場所に案内してくれる』
『はい』
トワは夢の世界に転移した。
「あれが獏です」
巨大な獏が悪夢を喰らっていた。
「弱点を教えてくれる」
「弱点はありません」
「弱点は無しか」
飛行魔法で近付いて、獏を殴ってみたが、平然と悪夢を喰らい続けやがった。
魔法も効果が無い。
どうやら外部からの攻撃は効かないようだ。
獏の体内で魔法を発動させたら、獏はあっさりと絶命した。
「ありがとうございます。これで夢の世界は救われました。お礼に夢渡りの靴を差し上げます。この靴を装着すれば夢の世界と現世を転移出来ます。それと夢属性の魔法を授けます」
「またお願いごとをするつもりじゃないでしょうね」
「違います。純粋にお礼のつもりです」
レムは慌てて否定した。
「視線を合わせようとしないという事は図星みたいね」
「本当です。信じて下さい」
「分かったわよ」
トワは靴を受け取り、足に装着して、現世に転移した。
希望丸に戻ったら、皆から心配をしたと怒られ、泣かれ、説教された。
次回は海賊の話の予定です。




