第30話 新たな行き先
「ここは......どこでしょうか?」
周囲を見渡すと、私の住んでいた村とは何だったのかと思わされるほど整地された道に、何かを撃退するように配置された砦の数々。
その砦には昔、本で読んだ砲台?のような筒が大量に配置されているようです。
そして、その奥には少し遠い場所に居る私でも首を上げなければ頂上が見えないほど高い壁と豪華な門。それを守るように配置された鎧を着た門番が両脇に立っているのが見えていて、入るために並んでいる人々もいます。
「どうやらただの村人だった私には知らないことがありすぎるようですね」
私は腕を組みながら、これからについて考えていました。
選択肢としては身分を証明するものが何もない現状で正直に門番に話しかけるか、夜を待ってから入り込むか。
どちらも相応のリスクはあるが、あの壁の内側に入るには許容するべきですね。
「ここが今の私に必要な場所なのですね、シャーマ様」
――どうして私がこんな場所にいるのか。思い出してみましょうか。
◇◆◇◆
「シャーマ様は行ってしまったか」
試練を終えたという達成感と少しばかりの寂しさを感じながら、私は胸の前で拳を握り感傷に浸っていた。
先程まではシャーマ様に会えたという嬉しさに気分が舞い上がっていたが、少し冷静さを取り戻した今。動き出す前に手に入れた力について把握しておく必要があるだろう。
「ステータス」
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【神導武器】
聖典審判の大鎌
・大鎌で空間を切り裂くことで異界から聖典を召喚する。
・聖典に記された内容を踏まえて対象者に審判を下す。
・大鎌の効果は審判の判決により変化する
【外器】
狂魂の魔鉱鎧++〈進化可能〉
〈進化先〉
【激情の純魔鉱鎧】
・感情が高ぶれば高ぶるほど内に魔力熱を蓄積していく
・魔力熱を魔蒸気に変換し身体能力を大幅に強化する
【夢月の鉱魔法衣】
・外器に内包されている能力に信仰補正を付与する
・暗影の信徒としての能力が全て上昇する
【称号】
暗影の信徒
・暗影の神シャーマを信仰し、身も心も捧げる者
・厳しい条件はあるが、聖典の内容を基に対象に試練を与えることができる
・シャーマに願うことで信徒としての力を行使できる
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これが約二年の歳月をかけた試練で得た褒美か。
「試練の大鎌が変わっている......それに外器にも新しい進化先が生まれているな。どちらも暗影の信徒に関わるものか」
この前までは単純強化の激情の純魔鉱鎧しか選択肢になかったが、今選ぶとしたらこっちだろう。
「進化先を夢月の鉱魔法衣に決定する」
そう口にしたその時、私の内側から汚い感情が溢れ出した。
『他人を道具と思う者を、弱者を切り捨て悦に浸る者を、自らの得だけを考える者を、殺すことに感情を抱かない者を、背を向けて逃げ出す者を――殺せ』
それは私がシャーマ様への信仰を絶やさないために想い続けた感情の根源。
害された者を救う神がシャーマ様であるのなら、状況を作り出した畜生以下の存在を滅さなければならないという真理。
ただ――。
「その対象は私が審判する。お前らが勝手に引きずり出し、操るものではない」
私が引き剝がすように、右手を横なぎすると全身から黒い蒸気が発生し、全身を包み込んでいく。
脳内に響くのは鉱魔獣たちの殺人本能とシャーマ様への信仰心。
更に激しく、願いは強く。
「夢月の鉱魔法衣『顕現』」
纏わりついた黒い蒸気が俺の身体から離れ、形作っていく。
黒い蒸気が消えた後には、これまでの鎧とは違う。金の刺繍が入った漆黒のローブが私の身体に装備されていた。
この法衣を着ていても人外には見えないだろうが、人の状態とは違って異質な魔力の流れや吸収してきた鉱魔獣の力を明確に感じとれるようになっているな。
「見た目は違えど狂魂の魔鉱鎧を着けてたときと同じだ。吸収した魂は騒いでいるし、無理矢理感情を引き出される感覚もある」
今の俺には全くもって問題は無い。逆に今の状態の方が心地よさまで覚えている。
例え、今すぐに戦闘しても問題無いだろう。
「ただ、どこに行くかなんだよな。今の段階で村に戻るつもりは無いし、かといって周囲の土地の知識も無い」
行き当たりばったりで歩いてもいいが、どうせならある程度の目標を持って行動したい。
すると、頭を悩ませて考えている俺の目の前に一枚の紙が空中に現れた。
「これは......?」
普通であれば明らかに怪しいが、この紙からは微かにシャーマ様の力を感じる。ならば、特に疑う意味もないな。
俺は紙を手に取り、書かれている内容を読むことにした。
「――『ゼノヴェルが次の目的地を迷っているようなので、今のゼノヴェルに必要な場所に転移する魔法を用意したのじゃ。紙を持ち、願うだけで効果を発揮するのじゃ。......それと、私に一人称を変えるなら敬語にした方が良いと思うぞ』......か」
なるほど、シャーマ様は何処までも私のことを考えてくれる御方だ。頼りきりになって申し訳ないが、力と知識を付けた先で恩返しさせて貰おう。
「それに、敬語か。信徒となったからには粗暴な言葉は控えた方がいいだろうと思って決意を込めて私にしたが言葉遣いも正した方がいいんだな」
私は一度咳払いをしてから改めて意識した言葉遣いに変えていく。
「んーこんな感じでしょうか。これだけで雰囲気が出るなら万々歳ですね」
今はまだ慣れないでしょうが、時間が解決してくれるでしょう。
「さて、ではもう森に用は無いですし早速シャーマ様からの力を使わせて貰いましょう」
私は目を瞑り、紙に願う。
今の私に足りないものを補ってくれるような出会いがある場所に居かけて欲しいと。
すると、一瞬の浮遊感のあとに森から私の身体が消えました。




