会議室に到着
お久しぶりです。なのに、進展なくてごめんなさい。
道々、帰ってきたクグラに声を掛けてくる人達をあしらいながら、やっと会議室に着いた。
クグラを先頭に入室する。
結構広い部屋だが、人がいるのは主に奥の方だ。
会議室の机の配置は、最奥に長机が二台、それは指令を出す側の席。お祖父様の姿は今そこにある。
その前に長机を向かい合わせにして島が幾つか作られている。それがウチの第一会議室の基本の机配置。
会議室って、教室みたいに教壇に向かって全部が前に向いて配置されるのが基本みたいだけど、お祖父様がこの配置好きみたいなんだよね。各島での意見交換が盛んになるからって。
各島の机の間を通り、奥へ向かう。
部屋奥の机の背後から壁沿いにかけて、可動式の大きな黒板が数枚並べられている。
その黒板の前に、お父さんとお義母様はいた。エッカ商会の事務方の数名と何か話しあっている。
「あの黒板に受入れ業務の最新情報とか、伝達事項や指示なんかが書かれてるの。急ぎでない指示は適宜各部署が見に来て従うようになってるのよ」
黒板を指してイェゼ君に小さな声で説明する。実際、端の黒板の前では広場からの連絡係が伝達事項を書き写している。そうやって、会議室は多くはないが絶えず人が出入りしている。
部屋の中ほどまで来て見回してみたが、大番頭のサパセンさんは、…居ない。もう来てるとしたら広場の表受付で陣頭指揮かな?イェゼ君と顔合わせして貰いたかったのに、残念。
横を通りながら見た島側の机には、書類作成をしている人がチラホラいるだけだけど、クグラが戻った直後には、ここに各部署の責任者とリーダー格が座してお祖父様の指示を聞いたことだろう。
前に行われた打ち合わせ時、私もこそっと同席させて貰ったが、皆が一丸となった、さぁやるぞ!っていう一体感と高揚感、各人が負う役割へのプレッシャーも心地好くて、あの雰囲気がすごく好きだった。
今回、会議に紛れ込めなくて残念…。将来的には私もエッカ商会に勤めて、戦力と見込まれて打合せから参加したいなぁ。
絵で身をたてる根性はないから、将来はエッカ商会にコネで入る予定。計算は苦手だから経理とかは無理だけど、絵が描けるのを生かせる仕事は、今から足掛かりを作ってるしね。ふっふっふ…。
ちなみに、この部屋が次に賑わうのは商隊の荷ほどきが終わった後で、表の受付を通過した品のリストが揃った頃から、各島は少し配置を変えて個別商談の場になる。
「おや。どうしたね?」
お祖父様が、近付く私達に気付き、手元の書類から顔をあげて尋ねてくれた。
壁側のお父さんもこちらに気付き『どうした?』って顔で私達を見てる。そんな中、お義母様だけは私とイェゼ君を認めた直後から、繋がれた手をじっと見て…ギクッ、なんだか面白いことを見つけた顔になってません…?大事な息子さんのシスコン暴走をたしなめてくださりますよね…?
「大旦那様。イェゼ様から隊の現状について重大なご指摘を受けまして…」
クグラの声に、お祖父様へ視線を戻す。
そうだ、そっちの大事な話をせねば。
お祖父様の正面に立ったクグラは来訪の意図を伝えると、イェゼ君に続きを振るべく横へ避けた。
イェゼ君がチラッとクグラを見る。この部屋、何気に人がいるから、人払いせず話してもいいか、イェゼ君は気にしたのだろう。クグラが小さく頷いてゴーサインを出した。
イェゼ君がすいっと前に出る。手を離してくれないので自然と私も横に並ぶ。お祖父様は私達を見たが、スミマセン、私はただの付き添いです。
いや、怪異を撃退出来る付加効果が付いた私は、歩くお守りみたいなもんか。
「離れにいるようにとのお言いつけを守らず申し訳ありません」
イェゼ君は始めにそう断ってから、「此度の商隊の持ち帰った品について、注進に参りました」と続けた。
「ほう?」
それからイェゼ君は、クグラから文物が発する“触り”を感じた事、隊に体調不良者が出ているのはそれが原因だと話して、自分になら簡単に祓えると言い切った。
話の途中からお父さん達もこちらへ寄ってきて、イェゼ君が淡々と告げていくのを、皆で黙って聞いた。
話の進む中で、その文物がレグリウナに所縁の品だろうとイェゼ君が話した時、視界の端でお義母様が僅かに身動ぎされた。そっとそちらを見てみると、美しい眉をひそめて考え込んでおられる様子。イェゼ君が嫌そうな顔をしたのと同じマイナス寄りの反応みたい。
レグリウナってたしか、この国の現皇家とは別の竜種一族だよね。
彼等の一族は大変に顔形がよく、輝く銀の髪は河の神のようだと言われている。霊力も高く、珍しい予知見の力に優れた人が出やすくて…それらを理由に、選民意識に凝り固まった排他的な一族だ、と世間では言われている。
ずっと昔は東の地に国を持ってたけど、一族の素晴らしい力を愚かな民の為に使うのが気に入らなくて、国を棄てたらしい。で、今は自らの一族だけで、特に決まった定住地を持たず、その予知見の力を求める各国の有力者の招聘に応じて暮らしてるとか。
全部、噂話でしかないけど、本宅の井戸端で仕入れる話は信憑性がとても高い。
その話を聞いた時には、なんじゃその人達…と思った。勝手というか、ワガママというか。ともかく友達にはなりたくないタイプの高貴な方達だ。まぁ、私みたいな一般人はあちらがお断りだろうけど。
只人の私はともかく、イェゼ君やお義母様の反応も、レグリウナにあまりいい感情は持ってないみたいだった。
もしかして、彼らに会ったことあるのかな?
い、いいなぁー。河の神と称えられる容姿なんて、一目でいいから見てみたい。難癖つけられない遠くからでいいから…。
弟:姉上、質問です!一体、いつになったら姉上はエッチさせてくれるんですか!?
姉:え!?ムーンじゃないからそんなのないよ!ていうか!お子ちゃまが何いってんの!姉は大切な弟を清く正しく可愛がるだけだよ。
弟:…こんなにウダウダしてきたあげく、まさかのチュウ止まり!?
とらりん:ごめんなさい、そういう事です。
弟:なんか今、聞きたくない声聞こえたー!?




