カミングアウト始まる
なんとなく無言のまま、台所へ向かう。
イェゼ君が私の様子を気にしている気配を感じる。微妙に気まずい。
ちょっとビビったけど、彼は荷車を、問答無用で異界に放り込んだりせずに、ちゃんと警告しました!だったら無問題じゃない?
と、とりあえず、何か話そう…。
「姉上、すみませんでした…」
こちらの発言より先に、いきなりイェゼ君が謝ってきた。
「え?どしたの?」
今、謝られる理由が解らない。今日色々やられてはいるけど。
「いきなり異界の話をしたから、驚かれたでしょう…?」
「え?!あ、うん、まぁ…」
ビビらした自覚あるんかぃ…。
「ごめんなさい。異界なんて馴染みがないから、気味が悪いですよね?」
「う…ん。異界って聞いても、よく知らないから、ちょっと怖い」
異界よりも、そこに荷車をうっちゃる誰かさんが怖い。
「怖がらせてしまい、申し訳ありません。異界といっても、階層がいくつもあって、簡単にいける上層は平和なものです。さっき、荷車を移そうと考えたのもそこなんです」
彼は口早に、大したことないよ?と必死にアピールしてくる。問題はそこじゃない気もするが…。それよりも、
「イェゼ君、前向いて歩いてね?危ないよ?」
彼は歩きながらの会話なのに、ずっと私を見上げてる。
「あ、大丈夫です。周囲との間隔は掴んでいるので」
なにそれ?!それってまるで、暗闇でも飛べる、あの…
「蝙蝠みたいだってよく言われます」
やっぱり…。
「俺は、変らしいんです」
へ?変??
思わず立ち止まってしまった私に引き止められる形で、イェゼ君は私の一歩前に立ち止まった。
彼は振り返ると、ちょっと苦笑いを見せた。
「自分自身にも、なぜ意識せずに空間を把握出来るのか、よく判らないんです。自分では、それが当たり前だったから、大半の人が、目と耳から得る情報でしか周囲を捉えられないと知った時は、驚きました」
「空間を把握…?」
とんでもないカミングアウトをされたのは解る。けど、意味が判るような、判らないような…。
「例えるなら、真後ろから矢が飛んできても判るとか。背後に落とし穴があっても、そこがそうなってるって感じるというか…。それでも、蹴躓く時はあるので、気をつけますね」
そう言って「えへ」と笑うけど。
君は絶対に躓かないでしょう。
ドジっ子の振りしても、全然和めないよ。
そして、この話。すでに私の理解の範疇を越えてるので、もうそのくらいにしとこう。
それより。私が注意を挟んだせいで、少し脱線しちゃってるよね?ここで話戻すよ?
「…異界も、イェゼ君には、見えてる空間の延長みたいな場所なの?近しいトコなの…?」
この際、色々聞いときます。
異界なんて大したことないって、本当なんでしょうね?違ったら泣くよ!?
誤字訂正しました。




