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なぜか無双の盗賊は、婚活パーティーに入れこむ!?  ~お人好し転生者の盗賊ライフ~  作者: さとうはるか


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2 妖精宮殿へ


 俺はアガサの、俺を心配してくれてた顔を想い出して、ちょっとほっこりした。


 よかった、この世界で唯一、親切にしてくれたアガサが俺をハメようとしてたとかだったら、本当にこの世界に絶望するところだったよ。


「おい、あんた」


 俺は電撃のショックと脚の重りで、地面に座り込んでいる男に呼びかけた。

 男は黙って俺を睨みつける。


「今から言うことを、一言一句間違えずに、あんたの依頼主に伝えてくれ」

「……何を言ってるんだ、お前?」


 男は意外そうな顔をする。当然、俺が自分を殺すと思ってたんだろう。


「いいか、文句はこうだ。『俺は盗賊だが、お前たちと違って一切、犯罪行為はしない。しかし今後、俺にまだちょっかいをかけるなら、お前たちが人を雇って殺人をしようとする犯罪者だと、あちこちで吹聴してまわるぞ』――だ」


 男は俺の言葉を聴いて、目を丸くする。

 俺は少し付け加えた。


「そうだ、『お前たちと違って』ってところを、ばっちり強調してくれ。どうだ、覚えたか?」


 男は不審な顔で俺を見ていたが、頷いた。


「本当か? 復唱してみてくれ」

「『俺は盗賊だが、お前たちと違って一切、犯罪行為はしない。しかし今後、俺にまだちょっかいをかけるなら、お前たちが人を雇って殺人をしようとする犯罪者だと、あちこちで吹聴してまわるぞ』」


 男は意外にすんなり、復唱した。俺は思わず笑った。


「やるじゃん! 凄いな、あんた! じゃあ、言付けはよろしく頼んだぜ。じゃあ――罠解除」


 俺はそう言って、足の罠を解除してやる。ついでに、足元に剣も放ってやった。

男の眼が驚きに見開かれる。


「いったい……どういうつもりだ?」

「どうもこうもない。俺は殺人も盗みもしない、善良な冒険者だってだけの話だ。そこんところ、あんたからもよく言っといてくれ」


 男は目を丸くする。と、俺は男の足元に剣を放ると、踵を返した。


「じゃあ、後はよろしく!」


 俺は片手を上げると、駆け出した。

 途中で陰に隠れて隠密を使うが――まあ、警戒しすぎだった。

 その後、察知を使ったら誰もついてきてなかったからね。


 俺は安心して、宿に泊まった。


*  *   *   *   *


 一晩寝たら気分が晴れた。宿でとった朝食も美味い!

 一度、部屋に戻って、俺はステイタス画面を見る。


「さて、次にとるべき行動は――」


 スキルポイントは残り15P。さあて、こっからが『盗賊』の本領発揮だ。

 

「まずは――『逃げ足』! そして『煙幕』!」


 この二つはセットで使うことが多い。煙幕を張って、逃げ足でダッシュ!

 逃げ足ってのは、戦場から離脱する時にのみ、敏捷性を2倍にするスキルだ。


 そして盗賊と言えばこれ!


「『解鍵』!」


 そう、鍵を開ける。これが大事なんだよね。そして――思いきっていくぞ!


「『罠技』×4!」


 俺は一気に『罠技』レベル5まで上げる。ちなみにこれでポイントで取得できる最上レベルで、カンストだ。


「ま……罠のレベルは、そのまま罠の威力に直結するからな。これは必要、と」


 7ポイントのスキルポイントを使って、残り8ポイント。

 む~、減ってしまったが、今のところほぼイメージ通りだ。


 大丈夫。このまま俺は、強くなる!

 ……で、これで準備完了。俺は地図を広げた。


「うん、やっぱりあるぞ――『妖精宮殿』!」


 これはこの国タイラニアの首都メラボレンの郊外の森にある廃宮殿だ。

 その昔、妖精が住んでいたという伝承があるだけで、詳しいことは判ってない。


「よし、出発するか!」


 俺は宿を出て、妖精宮殿を目指した。

 妖精宮殿までの道のりは、街中と安全な森なので、モンスターなどにも途中、遭遇しない。これが重要だ。準備が整うまで、なるべく戦闘は避けたい。


 森の中の妖精宮殿は、白い大理石の柱が立ち並ぶ宮殿だが、天井や壁は壊れていて、完全な廃宮殿の状態である。


 けど、ここには、そんな誰もいない宮殿を守ってる番人がいるのだ。

 『察知』を使いながら宮殿に入ると、廊下が続く。と、『察知』に反応がある。


「罠か――」


 判ってはいたが、やはりあった。俺は『罠技』の技『罠解除』を使い、通った者の横から槍を打ち出す装置を停止させる。


 しばらくそんな調子で罠解除を進めながら歩くと、やがて広間に出る。

そこに――その番人はいた。


「ピピピ……」


 石造りの人型像。背丈が3mくらいはある巨躯で、その頭は顔の真ん中に丸くて青い結晶が嵌まっている。


 と、背後でギィという音とともに、入ってきた大きな扉が閉まる。

 実はあれには鍵がかかっていて、もう後戻りはできない。


 そして俺の気配に気づいて、その石像は動き出した。

 こいつはフェアリー・ゴーレム。妖精たちが自分たちの護衛のために、作りだ出した石像モンスターだと言われている。


「ピピピ――」


 なんか電子音っぽい音を鳴らしながら、ゴーレムは近づいてきた。

 さあ、ここから戦闘の始まりだ!


「が――俺は戦っちゃダメなんだよな」


 フェアリー・ゴーレムは手に、巨大な石のこん棒を持っている。

 あれを喰らうと、大体、ダメージが100Pを軽く超える。俺のHPは現在80P。つまり――


 ――一撃くらうと即死。


「……ゲームじゃないから――リセットはきかないぞ、俺」


 俺は自分に言い聞かせる。ともすれば俺の知ってるゲーム『アザルド・ファンタジー』に似てるこの世界で、俺はゲーム感覚で動く可能性がある。


 けど、今の俺にとってはこの世界が現実。やり直しもリセットもセーブもできない、一回きりの人生。これを俺は――


「……転生によって得た知識で、うまく生き延びなければいけない!」


 そのためにまずすること、それは――


「『煙幕』!」


 俺は『煙幕』スキルを使って、この広間中を煙幕で埋め尽くした。

 灰色の煙が部屋中に立ち込め、視界は完全に遮られる。


「ピピピピ――」


 ゴーレムの電子音が、心なし戸惑ってる気がする。

 あいつもやはり、あの青い結晶で『見てる』んだろう。


 俺を見失ったゴーレムをよそに、俺はさらに打つべき手をうつ。


「『隠密』――そして『察知』!」


 俺の姿を煙幕の中で完全に悟らせないように隠密を使う。と同時に、煙幕の中にいるゴーレムの動向は、俺の方は把握できるように『察知』を使ったのだ。


「部屋をウロウロして、俺を探してるな」


 俺がそう呟いた瞬間、突然、凄まじい衝撃音を、床を震わせる振動が伝わってきた。


「な――なんだ!?」


 察知でゴーレムのいる方に感覚を研ぎ澄ませ、気配を探ってみる。

 と、フェアリー・ゴーレムは手にしたこん棒を、辺り構わず振り回していた。


「バカな! ゲームの中では、混乱して攻撃なんかしなかったのに――」


 この煙幕作戦を使うと、フェアリー・ゴーレムは混乱して、動きがストップするのがゲームの仕様だった。


 ……しかし現実は違う。ゴーレムは床と言わず壁といわず、やたらめったらこん棒を振り回し、宮殿を破壊する勢いだ。


「ゲームと似ていても――イコールじゃないって、ことか」


 俺はそう理解して、腹を決めた。そして俺は煙幕の中を駆け出す。

 ……いいじゃないか。まるきり同じじゃあ、つまらない!


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