第九話 急速レベルアップ 1 魔法薬店のメルリン
フィリアの問いに、俺は答える。
「フィリアは速剣タイプじゃないから、『とにかく軽さ』というよりは、防御力をちゃんと重視した方がいい。とは言っても、あまり重装備だと、そもそも脚が遅いのに、さらに機動力がなくなる」
「ぐぅ……痛いところを――」
フィリアが、ぐぬぬ…の顔になる。
俺はちょっと笑って、構わずに話を続けた。
「俺のオススメは鎧ではなくて、上着の上から装着する防具。できたら軽量で頑丈なミスリル製がいい」
「な、なるほど――よし! それで探してみる」
「うん」
俺は笑って頷いた。フィリアはそそくさと防具のコーナーに駆けていく。
と、俺の傍にいたチェルシーが、声をあげる。
「エリスもフィリアも嬉しそう……。ライトさん、飛竜のことも含めて、本当にありがとうございますぅ」
チェルシーはにこやかに笑った後に、頭を下げる。
いや、ちょっと! そのポーズすると胸の谷間が凄いから!
「い、いや! 別にそんな大したことしてないから! あはは」
「わたしは治癒士でテイマーだから……やっぱり、防具を買った方がいいですかぁ?」
チェルシーが唇に人差し指をあてて首を傾げる。う~む……セクシーなのにキュート。ま、それはいいとして――
「それでもいいんだけど、実はチェルシーは棍棒を入手してほしいんだ」
俺の言葉に、チェルシーはさらに首を傾げた。う~ん――キュート!
チェルシーが俺の言葉に首を傾げる。
「あのぉ……メイス?」
「ああ、棍棒だ。チェルシーは今後、戦闘中はテイムしたモンシターに指示を出すにしても、最低限、自分の身を守れる装備があった方がいい。それと――この後に行く先で、必要になるんだ」
「そうなんですかぁ。じゃあ、いいのを選びますぅ」
チェルシーはそう言うと、棍棒のコーナーに行った。
やがて戻ってきたチェルシーは、先が少し太くなった白いメイスを持ってきた。
「これでいいですかぁ?」
「充分だ。うん……フィリアは遅いな。ちょっと、見にいってみるか」
防具のコーナーに行くと、フィリアが鏡の前で自分の姿を見ている。
「どうした? いいのはあったか?」
フィリアは青いブレザーの上に、白銀のミスリル製防具を装備していた。
「これはどうだろう? 軽くて、動きやすいんだが」
「いいぞ。凄く似合ってる」
「ホ……ホントか――」
なんかフィリアが赤くなってる。フフ、可愛らしいところもあるじゃないか。
青髪ロングストレートで、クール系の美人だから一見キツそうに見えるが、ほんとは割と素直なお嬢さんだ。
「けど……少し高いんだ――」
「どれ――60万ワルドか。じゃあ、俺が10万ワルド出すから買って来いよ」
俺がそう言うと、フィリアが驚いた顔をした。
「い! いいのか!?」
「ああ。俺は前に稼いだ金がまだあるし、フィリアの戦闘力アップはパーティーの戦力上昇に欠かせない。必要経費だよ」
俺はそう言って、10万ワルドを渡した。
フィリアはそれを受け取ると、俺の方を見て嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう……じゃあ、買ってくる!」
「ああ」
フィリアは小走りになって会計にいった。う~む、ギャップ萌え……? なんか、ああいうところが可愛いんだよな。
「――で、俺も新しい武器を手に入れないと」
俺はナイフのコーナーに行った。
目指すのは、軽いミスリル製のナイフ。
今までのは刃渡り30cmだったが、こいつもだいぶ刃こぼれしてきた。
次に求めるのは刃渡り35cm。軽く丈夫なミスリル製ナイフの一本を、俺は手にした。
「それを買うのか? ――32万ワルド!?」
フィリアが驚きの声をあげる。
「ナイフ一本が、そんな値段がするのか?」
「いいものはね。よし、これにしよう」
俺はそのナイフを購入して、皆で武具屋を出る。
「エリスはどうしたかな」
そう言いながら、俺たちは魔導具屋に入っていった。
魔法杖のコーナーで、エリスが杖を二本持って迷っている。
「エリス、いいのはあったのか?」
「あ、はい! この二本のうちどっちにしようか迷ってて……」
一本は純ミスリル製で細くて長い杖。先が二つに割れて避雷針みたいな形状だ。
もう一本はミスリル合金で、長さは50cmほどの短杖。どちらも先端ではなく中ほどに魔晶石が嵌まっていて、武器としても使用できるタイプだ。
「どっちもいいチョイスだ。で、エリスがビビッときたのは?」
「どっちもいいな……って。それで迷っちゃって――」
エリスは眼鏡の奥で、本当に困った顔をした。
俺はエリスに言った。
「じゃあ、自分がそれを持って戦うのをイメージして、よりカッコいいなって思うのは、どっち?」
「それは……」
エリスは少し考えた挙句、長い方をとった。
「こっちです!」
「よし、決まりだな」
エリスはその長い魔法杖を買う。
俺はそこから、メルリンの魔法薬店へ行く。
「いらっしゃいませぇ。あらぁ~……」
水色の髪をぐるぐるに巻いた魔法調剤士のメルリンが、カウンターにいた。
「新人冒険家のぉ――」
「ライト。今日はパーティーで来てみたんだ。みんな、こちらは魔法調剤士のメルリン。こう見えて、子供じゃない」
「「「え~っ!?」」」
いや、露骨に驚きすぎだろ。けど、驚かせようと思って連れて来たんだけどさ。
「メルリンですぅ。こう見えて、魔法薬とか作ってますぅ」
メルリンが笑顔で挨拶する。と、フィリアがちょっと恐い顔で言った。
「まさかライト……この人――『500歳ですぅ』とか言い出さないだろうな?」
「まさかあ――」
と、言いながら、俺はそっとメルリンを見た。
そう言えば、こいつの正確な年齢を聴いてない。……本当に何歳なんだ?
「……そんなこと、言わないよね?」
「言いませんよぉ、そんな。ほんの250歳ですぅ」
「「「「げ!」」」」
俺たちは一斉に声をあげた。と、メルリンがコロコロと笑い出す。
「冗談ですよぉ。女の子に歳を聴いちゃダメですぅ」
メルリンはそう言って笑ったが、正確な年齢は言おうとはしない。結局、何歳なんだ?
……いや、深くは追及しないでおこう。
「まあ、とにかく俺もパーティーに入ったので、今後はパーティーで利用させてもらおうと思ってる。というわけで、パーティー資金から薬品の類は購入する。そうすれば、個人の負担は少なくて済むからな」
「なるほど。それで必要な時に、必要な人に使えばいいってことですね」
エリスが納得したように笑った。
そう。パーティーになると、こういう便利な点もある。
ソロの時は、必要ポーションも装備も何もかもが自分持ちで、自分で準備しなきゃいけない。けどパーティーになれば、その負担を軽減できるのだ。
「それじゃあメルリン、ポーションを必要分貰おうかな」
俺はそうして魔法薬のストックを買い、買い物を終えた。
――そうして皆の買い物が終わり、俺たちは街の外れまで歩いた。
「それでライト――これからどうするんだ? ダンジョンへ行くのか?」
「いや、ダンジョン攻略は、準備が揃ってからだ。それに、予想外の飛竜が仲間に加わったことで、行動範囲がグンと広がった。――それで、後に廻ろうと考えていたポイントを、先に攻略してより早く強くなる方法を選択する」
俺がそう言うと、三人はほぉ~、とため息をついた。
「というわけで、チェルシー、飛竜を呼んでくれ」
「判りましたわ。バンちゃ~ん!」




