4 皆の装備揃え
俺たちは喫茶店を出て、ギルドに出向く。
ギルドは銀行業務も兼ねていて、俺たちは『ミントベリーズ』に俺が加入したことと、『ミントベリーズ』名義の口座をつくる手続きを済ませた。
できる女、受付嬢のヴァネッサは、テキパキと判りやすい説明で俺たちの依頼をこなしてくれた。
「ライトさんもお仲間に入ったんですね。それじゃあ、これからの活躍を期待します」
ヴァネッサの笑顔に、俺は思わずほっこりした。
「――さて、一人50万ワルドはとりあえず持ったな?」
「「「はい!」」」
三人が元気よく返事する。
「それじゃあ、それぞれの装備を買いにいくんだけど……その前に、俺に一つ提案させてくれ」
「なんだ? 改まって」
フィリアが首を傾げる。
「実は、『パーティー資金』から、買いたいものがあるんだ」
エリスがちょっと不穏な顔つきになる。
「な、なんですか?」
「うん。実は――モンスターカプセルだ」
モンスターカプセル。それは生きているままモンスターを携帯できる魔道具で、中に入ってるモンスターは、仮死状態で生命維持を続けるアイテムだ。
俺の言葉を聴いて、チェルシーが不思議そうに声をあげた。
「え? それはわたしが買うものなんじゃ~?」
チェルシーがそう言った声に、俺は答えた
「チェルシーが個人として活用するモンスターに関しては、チェルシーの稼ぎ分で買うのが当然だ。が、飛竜は今後、パーティー全体を運ぶ運搬役として働いてもらおうと思っている。だから、飛竜のカプセルは、パーティー資金で買うべきだと思ってるんだ」
「なるほど……我々は飛竜に乗って移動する――ということなのか?」
フィリアの問いに俺は答えた。
「そのイメージだ。そして、あのサイズのモンスターの入るカプセルというのは、結構、高額だ。これはパーティー資金で出した方がいいと思う」
「どのくらいなんですか?」
エリスが眼鏡の奥の眼で訊いてくる。
「今の正確な相場は判らないけど……多分、200万前後だと思う」
「200万ぅんんっ!」
フィリアが驚きの声をあげた。
「いや……確かにそれなら、パーティー資金で出した方がいいだろうな」
「そうですね」
エリスも納得したようだ。俺はそこで言った。
「とりあえず、まず最初に魔道具屋に行こう。そこでカプセルの値段を見てみようと思う」
「そうですねぇ」
チェルシーが相変わらず、のんびりとした笑顔をみせた。
魔道具屋に行った俺たちは、モンスターカプセルの値段を見る。
「本当だ……10m以上サイズ用で200万ワルドだ――」
フィリアが声を洩らす。この辺の価格設定は、かなりゲームの中と近かった。
まあ、飛竜ほど大型のモンスターをテイムする機会なんて滅多にないから、あまり詳しくはなかったんだが。
「じゃあ、この大型サイズのカプセルは、銀行からの振り込みで買おう」
「ライトさん、わたしはそれとは別にカプセルを買った方がいいですよねぇ?」
チェルシーが訊いてきたので、俺は答える。
「チェルシーは人間サイズモンスターのカプセルを2,3個買っといた方がいいな。チェルシーには、何種類かのモンスターをテイムしてもらうつもりだ」
「そうなんですかぁ、楽しみ!」
チェルシーは嬉しそうに笑い、一個10万ワルドの人間サイズ用カプセルを二個買った。
「ライトさん、私はここで何か買った方がいいものありますか?」
エリスが訊いてきたので、俺はここぞとばかりに力を入れた。
「それはもちろん、いい魔法杖だ!」
「魔法杖――今、一応持ってますけど……」
俺は笑った。
「新調したらどうだ? いいものを使うと、魔力の引き出しがよくなる。自分の成長にもつながるし、なかなかお金が溜まる時もないかもしれないからな」
「判りました! 購入します!」
エリスは張り切って、魔法杖のコーナーに物色にいった。
「何か……いい魔法杖をみるコツってありますか?」
「値段が高いものがいい――と、考えるのは早計だ」
俺はまずそう言った。エリスが真剣な面持ちで聴いている。
「まず重要なのは、自分がメインで使う魔法との相性だ。魔法杖は、魔晶石と杖の二つの部分で作られている。その杖は、基本的には木製と金属製の二種類がメインだ。たまにグラス製や石材製なんて変わりダネもあるが、よっぽどのレアアイテムでない限り、強度の問題が出る」
「ほぇ~……」
エリスが感心したように、ため息をつく。
「で、魔法の五属性のうち、木・水・土魔法は木製杖が相性がいい。火・金魔法は金属製の方が相性がいいと言われている」
「そうなんですか! じゃあ、金属魔法をメインにする私は、金属製の魔法杖がいいってことですね?」
俺は頷いて、さらに話をする。
「そこにはめ込まれている魔晶石の色も、属性魔法との相性があるそうだ。属性色の魔晶石が適していると言われていて、金属魔法は金色の魔晶石ということになる」
「なるほど~! じゃあ私、その条件を考えながら、自分の魔法杖を探してみます!」
俺は頷いた。
「うん。自分の命を賭ける道具だから、よく吟味することだな。それと……これはできたら、なんだが――」
エリスが小首を傾げる。
「いざという時、武器として使える方が便利だ。まあ、武器はまた別に持ってもいいんだが、ダンジョンに入って魔力切れの状態で敵に襲われることもある――かもしれない。そういう時、ただ諦めるんじゃなくて、少しでも反撃する。……そういう事が、必要な時もあるんだ」
俺がそう言うと、エリスは驚きの色を見せつつ俺の顔を凝視した。
「――ん? どうかしたか」
「……やっぱりライトさんって、凄いですね」
エリスはそう言って微笑んだ。
――なんというか、可愛い。眼鏡っこの新たな魅力に気付いたかもしれん。
「ま、まあ……金額より、ビビッと来たか――なんていう出会いの相性も大事だ。ゆっくり時間をかけて探すんだぞ」
「判りました!」
俺はエリスにそれだけ言うと、フィリアとチェルシーを振り返った。
「じゃあ、エリスが魔法杖を探してる間、俺たちは武具屋に行こう。エリス、この先の武具屋に行ってるからな」
俺はそれだけ言うと、フィリアとチェルシーを連れて武具屋に行った。
フィリアが俺に訊く。
「あたしもやっぱり、新しい剣を探すんだな」
「いや。フィリアは剣はいい」
「え? なんでだ?」
俺は不満げなフィリアに笑ってみせた。
「フィリアには後で魔剣を獲得してもらおうと思っている。だから、剣は今のままでいい」
「そ! そうなのか!」
フィリアが店内で大声をあげる。周囲の客である冒険者たちが、こっちを見ていた。
「お、おい。声が大きいぞ」
「す、すまん。しかし……そんなことまで考えてくれてるのか――」
フィリアが感動したように、俺を見つめた。
チェルシーもニコニコ微笑んでる。
「本当に、ライトさんに指導を頼んでよかったですねぇ」
「う、うん……」
「まあ――そういう事だから、フィリアは防具を買ってくれ」
俺の言葉に、フィリアは少し戸惑いをみせた。
「判った。けど……どういうものを選んだらいいんだ?」




