3 婚活パーティー加入の条件!
俺は少し戸惑っている女子組に、俺の条件を出した。
「そう! 俺は現在レベル20。そしてお前たちはレベル6――いや、飛竜をテイムしたんだ。レベルアップしてるんじゃないか? ちょっと見てみろ」
俺がそう言うと、三人はそそくさと自分のステイタスを確認し始めた。
と、フィリアが声をあげる。
「あ! レベル8になってる! あのちょっとの戦闘で、一気に2レベルもアップした!」
「私もですわ。やっぱり……レベル50のモンスターを攻略したって、凄いことなんですね」
エリスも感心した声を出す。チェルシーが、にこにこ顔で言った。
「うふふ……実はわたしはぁ――レベル9になってます!」
「なにぃっ!?」
フィリアが真顔でチェルシーに眼を向ける。
「やっぱり、バンちゃんをテイムしたのが大きかったんでしょうかねぇ?」
「なんだ、バンちゃんて?」
「ワイバーンのバンちゃんですわ」
チェルシーはご機嫌だが、フィリアは悔しいらしい。
「くそぉ……ズルいぞ、チェルシーだけ――」
「まあまあ。とにかく、そういう大物を倒すとレベルは一気に上がる。レベルが低い方が、上昇率は高い。つまり俺より、お前たちの方が早くレベルアップするんだ。だから――」
俺はここで、三人をぐるりと見据えた。
「――お前たちには急速レベルアップをしてもらう」
「急速レベルアップ?」
「な……なんですか、それ――」
フィリアの訝し気な顔と、エリスの不安な表情が面白い。
「まあ、簡単に言うと、俺をパーティーメンバーに加えて大物の討伐をすれば、その経験値がパーティーに均等に割り振られる。そうすると、お前たちのレベルは急速に上がって、俺に近くなる――ってワケさ」
「今回のワイバーン戦も、あたしたちはダメージを与えてないけど、2レベルも上がった。こういう事を、やるんだな?」
フィリアが察しよく、そう言葉を継いだ。
「そういうこと。その過程で――お前たちにも、俺のパーティーメンバーとして不足のないように、充分に強くなってもらう。……そういう事でいいか?」
「「「もちろんです!」」」
三人が威勢のよさに、俺は思わず笑った。
「じゃあ、俺をパーティーメンバーに登録してくれ。ところで――お前たちのパーティーは、なんて名前なんだ?」
「『ミントベリーズ』だ」
フィリアが、ちょっと自慢げに言う。……いや、何が自慢する要素なのか、よく判らんが。
「『ミントベリーズ』って――なんだ?」
「あのですねぇ。わたしたち、みんなチョコレートが好きなんですよ」
チェルシーが楽しそうに、そう口を開いた。
と、フィリアが誇らしげに言う。
「あたしが一番好きなのは、ブルーベリーチョコ!」
「私が一番好きなのは、ミントチョコなんです」
エリスがその後に続けた。と、俺は疑問に思った。
「で、チェルシーは?」
「わたしは、普通のミルクチョコが好きなんですぅ」
う~ん、その笑顔と抱きしめた胸のラインで、こっちがトロけそうだ!
……じゃない。
「チェルシーの要素、入ってないじゃん」
「そうなんですよぉ~……けど、まあいいかなって。ミルクチョコって普通だし」
おおらかだな、チェルシー。
「――で、二人の好みをとって『ミントベリーズ』?」
「どうだ! チャーミングで、いい名前だろう!」
フィリアがそう胸を張って言った。うん、フィリアもチェルシーほどじゃないが、なかなかだ。
は、いいが。俺は――最重要な条件をここで提示した。
「けどいいか! 俺がパーティーに入る上で、最も重要な条件がもう一つある!」
「え~、まだあるのか?」
フィリアがげんなりした顔をするが、俺は無視して声をあげた。
「それは……お前たちも婚活中かもしれないが、俺だって婚活――いや、恋人募集中だ! もし俺に彼女ができたら……俺は恋人を不安な気持ちにさせないため、他の女性とのつきあいをなるべくなくす。だから俺に恋人ができたら、俺はパーティーを抜ける。それでいいか!?」
俺が強い覚悟をもってそう言うと、フィリアは拍子抜けした顔で声をあげた。
「なんだ、そんなことか。まあ、別にいいが」
「なんだ、お前、その態度は! いかにも『盗賊なんかに恋人なんかできっこないから、全然、平気』みたいな態度じゃないか!」
「いや、だってそりゃそうだろう」
フィリアは、『何を当たり前の事を言ってるんだ?』と言わんばかりの顔をする。
するとエリスが、とりなすように口を開いた。
「フィリア! そんな露骨な態度とっちゃダメだよ」
おい! そりゃ、露骨じゃないけど、エリスもそう思ってるってことだよな?
「そうよぉ。『恋人が盗賊でもいいわ』っていう、奇特な人もいるかもしれないでしょう」
「チェルシー、それは慰めてんじゃなくて、抉ってるんだよな?」
くそ~、こいつら。揃いも揃って、俺に恋人ができる可能性がゼロだと思ってやがる。
「いいか、見てろよ! 俺だって盗賊ってものに深い理解を示してくれる、やさし~い彼女を見つけるからな! その時に、『ああ、ライトさん、わたしたちを見捨てないで!』って泣くなよ!」
「まあ……万が一、そんな時が来たら、ちゃんと祝福はしてやるさ。……まず、ないだろうけど」
おい、フィリア、最後の一言は余計だぞ。
苦笑しながら、エリスが話を先に進めようとする。
「それじゃあ、ライトさんをパーティーに勧誘しますね」
エリスがそう言うと、俺にステイタスから信号を送って来る。
俺のステイタスの方に、『パーティー加入の勧誘があります』と表示がある。
俺はそれを開けると、『OK』と押した。
「あ、加入されました! これで、ライトさんも『ミントベリーズ』の一員です!」
エリスが眼鏡の奥で笑顔を見せる。素直にしてれば、この子も可愛いんだが。
で、俺は話を進めた。
「それで俺がパーティーに加入したことで、今回の飛竜制圧はパーティーの成果、ということになったわけだ。その上で、飛竜制圧の報酬だが――みんなで均等割りするのもいいと思うが、俺は『パーティー資金』として貯蓄するのがいいんじゃないかと思うんだが……どうだろう?」
俺の提案に、フィリアが反応した。
「あたしたちは構わないが……ライトはそれでいいのか? 実質、ライトが制圧したも同然なのに」
「俺一人じゃやられてたさ。フィリアとエリスに守られて、最後にチェルシーがテイムしてくれたから、今、命がある。どうだろう、『パーティー資金』は?」
俺がそう問うと、エリスがすぐに声をあげた。
「いいと思います! 『パーティー資金』っていいですね。共同で稼いで、そこから必要な資金を出す仕組みですよね。皆でクエストやダンジョン探索をするようになったら、共同の必要経費って出てくると思うんですけど、それを見越してのことですよね!?」
「そういうこと。呑みこみが早いな――まあ、500万ワルドだから、一人、50万ワルドぐらいは、とりあえず分配してもいいと思うけどな」
俺がそう言うと、フィリアとチェルシーも同意を示すように頷いた。
全員の同意を得たので安心して、俺はさらに話しを続ける。
「それで――会計がいた方がいいと思うんだが、俺はチェルシーなんかいいんじゃないかと思うんだが、お前たちはどう思う?」
「あたしもそれでいいと思う」「私もです」
俺の提案にフィリアとエリスが同意して、チェルシーが声をあげた。
「え~、わたしがやるんですかあ?」
「多分、君が一番、金勘定がしっかりしてそうだと思ってさ」
俺が冗談めかしてそう言うと、チェルシーも笑った。
「そういうことなら――おまかせください!」
そういって首を傾げるポーズが、妙に可愛い。うむ、よろしい。
「よし。じゃあ早速だが、ギルドにいって50万ずつ卸した後に、これから必要な装備を買いに行こう」
「「「判りました!」」」
そんなこんなで――
俺は女子三人組だった婚活パーティー『ミントベリーズ』に加入した。
面倒事は避けて便利くんを卒業するはずだった異世界ライフに……また面剛事をしょいこんだ、と気付くのはそれほど先じゃあなかった。




