2 対飛竜戦――決着!
俺は呆然として、自分の眼を疑った。
何故、ほとんど戦闘力のないチェルシーが、俺の前に出る?
驚く俺の前で、チェルシーは声をあげた。
「テイム!」
――は?
まさか、このレベル50モンスター飛竜を、レベル5のチェルシーが……テイム? まさかそんな――
チェルシーの手から光の輪が飛び、飛竜の頭から身体辺りで回転する。
明滅しながら回転している光の輪の中で、飛竜はじっとしている。
――と、ポン、と☆が二つ飛び出した。
「やったぁ! テイムできましたわ!!」
「……はぁ?」
俺はあまりのことに、呆然となった。
が、次の瞬間、腹の底から笑いがこみあげてきた。
「ハッハッハッハッハ! やったな、チェルシー! こいつは大物だぞ!」
「はい! 嬉しいです!」
チェルシーは腕を立てて、巨乳を左右から抱き寄せる。おい、このダメージで脳に血がまわると――
「あ、ライトさん!」
ぐらりと倒れる俺を、フィリアが支えた。
俺は地面に寝かされる。と、チェルシーが俺に治癒魔法を施してくれた。
「ありがとう、チェルシー……けど、ある程度治ったら、あいつのこと治してやれな」
俺は目線で飛竜を促した。チェルシーが驚いた顔をした後に、笑顔で首を傾けた。
「うん。判りましたわ、ライトさん!」
……そんな可愛い顔されたら、惚れるだろ! そうでなくたって、巨乳なのに!
とか思ってると、あっさりと俺を捨てて、飛竜を治しにいった。
「飛竜! 今、ご主人様が治してあげますよ~!」
チェルシーがご機嫌で治癒魔法を飛竜にかける。
最初は戸惑っていた飛竜だが――なんか、チェルシーにデレてないか?
というか、顎の下撫でられて、ゴロゴロいってないか!?
――そんなこんなで、飛竜騒ぎは片付いた。
その日は疲労困憊してすぐに宿をとり、翌日、三人組とギルドで集合する。
できる女感満載の、ギルド受付嬢ヴァネッサがやってきて俺たちに言った。
「今回の飛竜暴走の一件、収拾してくれたこと真に感謝してます」
「あ、いや、なんでもありません。あははは」
「ついてはギルドからも、市の依頼を受けていたので、そのクエスト報酬を皆さんにお支払いしたいと思います」
「ああ、そうですか」
クエスト報酬ね。幾らだろ?
「クエスト報酬の500万ワルドは、どういう形でお支払いするのがよろしいですか?」
……ご、五百――
「「「ごひゃくまんワルドおぉぉぉっ!?」」」
三人が一斉に声をあげる。無理もない、俺も驚いた。
「ご、500万ワルドって……そんなに貰えるんですか?」
「はい。どういたしますか?」
「どうって……」
俺は三人を見た。三人も驚いていて、何も考えが浮かばないらしい。
「い、いったん保留で――ギルドで預かってもらえますか? 決まり次第、引き取りにいきます」
「判りました。では後は、チェルシーさんがテイムした飛竜ですが――登録モンスターとして記録します」
「よろしくお願いしま~す!」
チェルシーがにっこりと微笑む。ヴァネッサの負けないくらい優雅な笑みを見てから、俺たちはギルドを出た。
「……とは言うものの、飛竜ちゃんは何処かに行っちゃったんですけど?」
人差し指を唇にあてて訝しむチェルシーに、俺は答えた。
「テイムしたモンスターは、いつでも呼び出せる。森に隠れてるのなら、命令して好きな時に呼び出せばいい」
「呼び出す時は、どうしたら?」
「心の中で呼び出せば、応えてくれるはずだよ」
チェルシーは両手を組んで、目を閉じる。
と、しばらくすると何かが飛んでくる。――飛竜だ。大きい!
――が、すぐに飛び去っていく。
「「え!?」」
エリスとフィリアが驚いている。
「え――? 呼んだんじゃないの?」
「森で待機してるように言いましたわ。凄くイイコですわぁ」
チェルシーがにっこり笑った。なるほど、すぐに帰したわけか。
俺は一息ついて、三人を見回した。
「じゃあ……とりあえず、落ち着いて話――するか」
俺がそう言うと、三人が頷く。
あちこち破壊されて喧噪してる街を抜けて、俺たちは大丈夫な喫茶店に入った。
「まあ……色々あったが――とりあえず、みんな、ありがとう」
席について、俺は三人に頭を下げた。
と、エリスが声をあげる。
「そ、そんな! 助けてもらったのは私たちの方ですし!」
「そうですわ。それに……凄かったですわ」
チェルシーがそう言って、にっこりと微笑む。
それに続いて、フィリアが言った。
「うん……ほぼ単独であの飛竜を追い詰めた――。やはりライトの実力は凄いと、改めて思った」
フィリアが俺を見る。と、エリスが口を開く。
「私も……改めて――尊敬の念を抱きました。レベル20で、レベル50のモンスターを狩るなんて……普通できることじゃありません」
「わたしも、ライトさんのおかげで飛竜ちゃんをテイムできましたわ! もう、感謝しかありませんの!」
チェルシーが微笑む。
フィリアがそれに続けて、真剣な眼で俺を見る。
「やっぱり……あたしたちの指導を頼むのは、無理な話なのか? その――婚活対象ではないが」
ないのかよ!
「私も――もっと色々、ライトさんに教わりたいです。婚活? 対象ではありませんけど……」
やっぱり、ないのかよ!
「わたしもテイマーとして、色々教わることがありそうですぅ。わたしは……ライトさんが、沢山お金を稼いでくれたら、婚活もありですけど?」
あるのかよ!
――俺は息をついた。
「……判った――やってみよう」
俺の言葉に、三人の眼に驚きと喜びが輝く。
……そんなに頼まれたら――断れないだろ。
「お前たちが立派な婚活相手を見つけられるように、強くする。――そうだな、Bランク冒険者になるまで……は、お前たちに協力するよ」
「「「やったーっ!」」」
三人がハイタッチをかわす。そこに俺は言った。
「ただし! 条件がある!」
「条件――? それはまさか……あたしたちを、毎晩、日替わりでベッドに呼ぶ……とか?」
「ちがーうっ!」
「じゃあ……毎回、三人一緒に…ですの?」
「違うっつってんだろ!」
俺はフィリアとチェルシーに怒鳴った。エリスが苦笑して、声を洩らす。
「もう……二人とも、悪ふざけがすぎますわよ」
「わるいわるい」「うふふふ」
フィリアが笑ってる。妙に上機嫌だな、こいつ。
「――で、条件ってなんだ?」
「俺を、お前たちのパーティーに入れることだ」
三人は俺の言葉に、目を丸くした。フィリアが口を開く。
「別にいいが……そんなこと?」
「ああ。この前みたいに、お前たちの後ろにいて何もしないんじゃ、俺の経験値が稼げない。だから同じパーティーとして冒険をする」
「けど……ライトさんとはレベルがかなり違いますが――」
エリスの言葉に頷いて、俺はにやりと笑った上でもう一つの条件を出した。




