3 ドロップ・ポイント
喫茶店でコーヒーを飲んだ俺は、1万ワルド金貨を出した。
店員は怪訝そうな顔をしたが、9500ワルドのお釣りをくれた。
「さて……スキルを取得したから、次は武器だな」
地図を見て、武器屋を探す。が、ほぼ俺の記憶にある武器屋の位置と同じだった。
店に入って武器を物色する。
盗賊は基本的に、どんな武器でも使える。けど、武器スキルをとってない俺が何を買うのか?
それはまず、ナイフだ。
ナイフはとにかく、色々必要だ。草刈りや枝払いの鎌、料理の際には包丁、薪を割る鉈としても使うし、もちろん戦闘の時には武器として使う。盗賊は、罠解除にも使ったりする重要なアイテムだ。
メイン武器は破損したりして交換することが多いが、ナイフというのは意外に長く、そして多岐にわたって使う。――ので、良さそうなものを、じっくり探す。
「これなんか、よさげか?」
俺は一本のナイフに眼が止まり、それを触らせてもらった。
刃渡りが30cm。俺の使い方は乱暴なので、切れ味よりも頑丈さが重要。だから刃の厚みがある程度、厚い方がいい。
そして握ったり、持ち替えたりする時の、手の内でのしっくり感。
そんな条件で色々見た挙句、その一本が気に入ったのだ。
「値段は……」
5万5000ワルド! 俺の現在の所持金からすると、かなりの高額だが――いや……しかしここは出し惜しみできない!
「このナイフを貰えないか」
「お、いいものに目を付けたな。そいつぁ、なかなかのもんだぜ」
武器屋の店主のそんな言葉を聴いて、俺は自分の選別眼に満足した。
俺はそのナイフを買って、ちょっといい気分になって武器屋を出る。
――というわけで俺は、ナノパの森に来た。
ここは剣ウサギというFランクモンスター――つまり最低ランクモンスターの巣窟で、こいつらならLv1の俺でも、多少は安全に狩れる。
なにせゲームと違って、これは新しい人生だ。レベル序盤のHPが低い時に、Fランクでもモンスターの攻撃を喰らう事は死に直結する。
死んだら終わりで、リセットとか再転生とかありえない。だから俺は、最善の安全策を尽くさないと。
けどナノパ高原は広い上に、背の高い草が一面に広がってる草原で、剣ウサギが何処かに潜んでても、まず見えない。ので、比較的安全に狩れる場所でも、ここでモンスターを見つけようという奴はあまりいなかった。
けど、俺はまず敵を見つける。
「『探索』!」
緑が広がる高原のあちこちに、反応がある。剣ウサギだ。ある程度、固まっている場所が判った。
けど、武器術や魔法スキルを取らないで、どうやってモンスター狩りをするのか? って、思うでしょ。
ここで活躍するのが、『罠技』だよ。剣ウサギの沢山いる場所の傍に行って、俺はスキルを使う。
「『罠』!」
掌を向けると、針金を輪っかにした『くくり罠』が出てくる。
この罠の材質は、実は魔法で形成した『仮現質』だ。
実際の物資に見えるけど、実は魔法による仮素材で、基本的には時間が経つと消える。効果が長いものだと、7日間くらいもつらしいが。
つまりこの『罠技』は、実は魔法だ。『盗賊魔法』と呼ばれてる。
『罠技Lv1』の罠は、持続時間は2時間。これを剣ウサギのマークがある傍に、あちこち仕掛ける。
そして少し離れた処で、使うのが――
「『隠密』」
隠密スキルを使うと、視認できなければ気配を悟られることがなくなる。
まあつまり見えてちゃダメだけど、隠れてれば見つからない――ということだ。
罠にかかっても放っておいたら罠が消えてしまうし、かと言って近くにいすぎたら、剣ウサギが近づかない。
だから罠を仕掛けて隠密、というのは大事なセットなのだ。
そして待つこと、12分。最初に罠にかかった剣ウサギが出た。
罠を見ると、鉄の輪が足を捕らえて剣ウサギは動けなくなってる。
「ギギ……」
耳の先端が剣のように斬れ味が鋭く尖ってるので剣ウサギと呼ばれているが、こいつらは意外に凶暴性も高い。
罠にかかってると思って気を抜いて近づくと、手痛い攻撃をくらう。だから迂闊に近づいちゃいけない。
じゃあ、罠にかかった剣ウサギをどうやって仕留めるんだって話。
俺はナイフを取り出して、またスキルを使った。
「『罠技』!」
俺がナイフを使って作ったのは、長い棒にナイフをくくりつけたような罠で、これは棒の先端に攻撃をすると、途中にくくりつけてあるナイフが飛び出て相手を刺す――という仕組みの罠だ。
「ギギ……」
警戒する剣ウサギに、俺は近づいてナイフの罠を近づける。
「ギッ!」
足がくくりつけられてるくせに、剣ウサギは跳んで棒の先端に噛みついた。
と、その瞬間、途中のナイフが飛び出て剣ウサギの胸を刺す。
「ギ……」
それで剣ウサギは絶命だ。このナイフ罠なら、安全に剣ウサギにとどめをさせる。そしてこれで、モンスターを倒した経験値も得られるのだ。
と、剣ウサギの身体が光り、小さな紫の魔石に変わる。
「ふうむ、……モンスターが魔石に変わるのもゲームと同じ仕様か。という事は、この世界の動力は、やはりゲームと同じで魔石だろうな」
ちなみに魔石は売ることができるが、剣ウサギの魔石は小さくて最低ランクなので、売っても一つ30ワルドくらいだ。安い。
……というわけだから、なおいっそう、このナノパ高原で剣ウサギ狩りなんかする物好きはまずいない。
けど俺が次々と剣ウサギを狩り、四体目を狩った時だった。
ドロップしたのは紫の魔石ではなく、金色の魔石だったのだ。
「来た! レアドロップ!」
俺は金の魔石を拾う。
「この魔石は――」
俺は魔石を握りつぶした。と、魔石から金の粒子が拡散して、俺の体内に吸収される。
すると、俺の中のステイタス画面にお知らせが入る。
『スキルポイントを1獲得しました』
――そう、これなんだよ!!
実はこのナノパ高原の剣ウサギは、冒険者がLv1の時だけ、ごくたまに希少魔石をレアドロップするという、条件システムなのだ。
そしてそれはスキルポイントを付与する魔石なのである。
「ようし……この調子で、レアドロップを狙っていくぞ」
俺はその後も罠を仕掛けては、罠でとどめを刺し、魔石を収集した。
このサービスドロップは、スキルポイント10ポイントまでドロップする。
気づくと俺は84匹も剣ウサギを狩り、辺りも暗くなってきた。
「よし! 最後の10ポイント目、ゲット!」
俺は一人声をあげて、拳を振り上げた。
これは俺が決めた、俺のための自主的残業だから、全然、苦にならない。
どころか達成感でいっぱいだ。
「いやぁ~追放初日で、いきなり頑張っちゃったな、俺」
俺はそう言って自分を褒めてやった。
で、改めてステイタスを見る。何より、レベルが10までが上がってる!
ライト・ミクリヤ 盗賊 Lv10 スキルポイント 残り19
HP 80
MP 87
体力 29
気力 22
魔力 30
念力 27
敏捷性 41
技能性 44
……おお、よしよし。一番、死にやすい低レベル帯を安全に抜けた上、スキルポイントは手つかずのまま溜まってる。これだよ! この状態を作りたかった!
で、このスキルポイントで何を取得するか、という話だよ。
まずはレベル10になったら取得できる『強化系スキル』、これが重要だ。
まず取得の候補は、『敏捷性強化』と『技能性強化』だ。これは取得時点で能力値を+10Pすると同時に、成長時にプラス加算する、というスキルだ。
「――は、いいけど……予定にはなかった『察知』――が必要だな」




